ホタル ホタルの概要

ホタル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/18 05:18 UTC 版)

ホタル科 Lampyridae
ゲンジボタル Nipponoluciola cruciata
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
: 昆虫綱 Insecta
: コウチュウ目(鞘翅目) Coleoptera
亜目 : カブトムシ亜目(多食亜目) Polyphaga
下目 : コメツキムシ下目 Elateriformia
上科 : ホタル上科 Elateroidea
: ホタル科 Lampyridae
Latreille1817
英名
Firefly
亜科
Photinus pyralis が飛ぶ
Luciola lusitanica のオスの正面
発光するホタル(日本)
日本の河川でのホタルの群舞
ホタルの発光部位は腹部の後方である
メスや幼虫も光る(画像は Lampyris noctiluca のメス)

概要

極地砂漠などの乾燥地を除いた全世界に分布していており、2000種以上が生息しているとされる[2]幼虫時代を水中で過ごす水生ホタルと、陸上の湿地で過ごす陸生ホタルがいる[3][4]。ただし水生ホタルは世界で10種類ほどしか知られておらず、そのうち日本にはゲンジボタルヘイケボタルクメジマボタルの3種類が生息している[2]

日本で「ホタル」といえば一般的にはゲンジボタル Nipponoluciola cruciata を指すことが多い[5]本州四国九州に分布し、九州地方では5月上旬から、東北では7月頃から羽化する[6]

日本では50種ほどのホタルが確認されているがほとんどは南西諸島に分布しており、本州、四国、九州では、ゲンジボタルヘイケボタルヒメボタル、クロマドボタル、オバボタル、オオオバボタル、スジグロボタル、ムネクリイロボタル、カタモンミナミボタルのおおむね9種類が観察される[7]

南に下った台湾では60種以上が生息しており、初夏にホタルを鑑賞する観光行事も行われている[8]

ゲンジボタルの成虫が初夏に発生するため、日本ではホタルは風物詩と捉えられており、夜の蛍の発光を鑑賞する「蛍狩り」が行われる[注釈 1]。日本を含む東アジアにおいて、蛍の成虫は必ずしも夏だけに出現するものではない。例えば朝鮮半島中国対馬に分布するアキマドボタル Pyrocoelia rufa和名通りにに成虫が発生する。西表島で発見されたイリオモテボタル Rhagophthalmus ohbai は真に発光する。南西諸島に数種が分布するヒゲボタル類も秋から冬に成虫が現れる[9]

形態

成虫の体長は数mmから30mmほどで、甲虫としては小型から中型である。体型は前後に細長く、腹背に平たい。特に前胸は平らで、頭部を被うことが多い。よくある色合いは全体に黒っぽく、前胸だけが赤いというものである。その体は甲虫としては柔らかい。オスとメスを比べるとメスのほうが大きい。メスは退化して飛べない種類があり、さらには幼虫のままのような外見をした種類もいる。光でコミュニケーションする種では触角は糸状で細いが、フェロモンを使う種では鋸歯状だったり、クシ状だったりするものもいる。成虫期間は約1-2週間。

幼虫はやや扁平で細長い。頭部は胸部に引っ込めることができる。胸部に短い三対の歩脚があり、腹部の後端に吸盤があって、シャクトリムシのように移動する。


注釈

  1. ^ 一例として、「蛍火が星空と競演 高知県四万十町の津賀ダム湖」[リンク切れ]高知新聞』2018年6月15日(2018年11月27日閲覧)。
  2. ^ かつて日本住血吸虫の中間宿主であったミヤイリガイをホタルの幼虫が捕食していたが、ミヤイリガイを駆除することによってホタルの生息環境も奪われることになった。

出典

  1. ^ a b "ホタル". 『日本大百科全書(ニッポニカ)』小学館. コトバンクより2022年3月27日閲覧
  2. ^ a b 古河 2011, p. 89.
  3. ^ a b 『だれでもできるホタル復活大作戦』
  4. ^ a b 『謎とき昆虫ノート』
  5. ^ 古河 2011, p. 2-3.
  6. ^ 東京ゲンジボタル研究所 2004, p. 17.
  7. ^ a b 古河 2011, p. 1-2.
  8. ^ 夜空を輝かせるホタル(夜螢親親). 台湾観光局. 2022年4月8日閲覧
  9. ^ 松村雅史編著 2022 沖縄甲虫図鑑.沖縄時事出版
  10. ^ ホタルのゲノム解読に成功 〜ホタルの光の遺伝子の進化が明らかに〜基礎生物学研究所/中部大学プレスリリース(2018年10月16日)2018年11月27日閲覧。
  11. ^ 『ホタルの木』
  12. ^ 川島逸郎 2009 オキナワクシヒゲボタル♀成虫の記載.豊田ホタルの里ミュージアム研究報告書(2): 1-7.
  13. ^ 大場信義・後藤好正・川島逸郎 1997 日本産クシヒゲボタル属の行動および雌成虫形態. 横須賀市博研報(自然) (45):23-37.
  14. ^ a b c 古河 2011, p. 69-71.
  15. ^ 古河 2011, p. 71-75.
  16. ^ 矢島稔『昆虫誌』
  17. ^ 東京ゲンジボタル研究所 2004, p. 75-76.
  18. ^ 古河 2011, p. 77-79.
  19. ^ 古河 2011, p. 79-80.
  20. ^ 一の坂川 『よみがえる川 - 河川再生事例集』(2011年刊)より. 日本河川・流域再生ネットワーク. 2022年3月28日閲覧
  21. ^ ホタル護岸の整備”. 山口県 (2018年5月2日). 2022年3月28日閲覧。
  22. ^ 神田左京『ホタル』
  23. ^ 神田虔十(編著)『日本童謡・唱歌わらべうた集 2』メトロポリタンプレス、2013年、6-7頁。ISBN 978-4-904759-80-6


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