ガイドウェイバス ガイドウェイバスの概要

ガイドウェイバス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/03/06 21:45 UTC 版)

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ガイドウェイバス(ドイツエッセンのEVAGで運用されているメルセデス・ベンツ・シターロ

バス専用走行路の両側に低い側壁(ガイドウェイ)を設置し、バスの走行を誘導する仕組みを持つ[2]英語では "Guided Bus" と呼ばれる[3]。発祥のドイツでは開発を担当したダイムラー・ベンツのシステム名称[2]である "O-Bahn" とも呼ばれている[3]。「バスウェイ」と呼ばれることも多い。

磁気や光学的に誘導されるバスもガイドウェイバスの一種とすることがある。

歴史

世界初のガイドウェイバス(1986年・ドイツのエッセン
1989年のアジア太平洋博覧会で運行された車両(一般路線に転用後)

側壁の案内軌条により車両を誘導する仕組み自体は、1856年馬車による特許がイギリスにおいて取得されており[2]1859年には実際にリヴァプールで「ガイドウェイ馬車」が運行されている[2]

この「ガイドウェイ馬車」は普及に至らなかった[2]が、1970年代後半になり、ドイツ研究技術省 (Bundesministerium für Forschung und Technologie, BMFT) はエッセンの市内交通を担当するエッセン交通会社 (Essener Verkehrs-AG、EVAG) に対してガイドウェイバスの研究を行うように要請した[4]。ドイツにはトラムが多く存在し、トラムは高架や地下を走る鉄道と比較して運行経費面では優位であった[2]が、それでも車両の価格自体は決して安価なものとはいえない[2]ことから、車両費用の低いバス車両を使用し案内軌条によりバスの誘導を行うシステムとして、路面電車ライト・レール・トランジット (LRT) のごとくバスを利用するために開発されたシステム[2]として、ガイドウェイバスが検討された[2]

1979年にはエッセンのエアバッハ地区において実用化が決定[4]1980年から世界初のガイドウェイバスが運行を開始した[5]1984年にはイギリスのバーミンガムで試験的な導入が行われ[6]1986年にはオーストラリアアデレードにおいて導入された[7]。また、1989年には日本においてもアジア太平洋博覧会の会場内交通機関として導入され[8]2001年に名古屋市で日本初の本格的な新交通システムとして営業運転が開始された[9]

特徴

ガイドウェイバスの車両の例(イギリス・クローリー)。 赤丸で囲まれた部分が案内輪 ガイドウェイバス専用走行路の例(イギリス・イプスウィッチ)。 枠状のものが一般車両の進入を防ぐためのもので、左右の車輪がこれより広く、車体底部がこれより高い車両でないと通行できないようにしている
ガイドウェイバスの車両の例(イギリス・クローリー)。 赤丸で囲まれた部分が案内輪
ガイドウェイバス専用走行路の例(イギリス・イプスウィッチ)。 枠状のものが一般車両の進入を防ぐためのもので、左右の車輪がこれより広く、車体底部がこれより高い車両でないと通行できないようにしている

ガイドウェイバスに使用されるバスでは、通常のバスの車輪の近くに「案内輪」と呼ばれる小型で水平の車輪が設置されている[2]。この案内輪が、専用走行路の両脇に設置された高さ180mm程度の側壁面(ガイドウェイ)をたどる仕組みで、狭い専用道でもハンドルの操作が必要なくバスが安全に誘導される[2][9]。車両側では、案内輪とそれに付随する機構以外には特別な装備は必要ない[10]ため、専用走行路以外の道路では通常のバスとして運用が可能である[2]。案内輪は、一般道路でも収納しない方式(固定式)と、一般道路走行時には収納される方式(収納式)があり、世界的には固定式が一般的である[11]。こうした構造は、ほぼ全てのガイドウェイバスがダイムラー・ベンツが開発した方法に拠っている[2]

専用走行路については、バスのタイヤの接地面が一定の場所に限られるという特徴があり[2]、これを利用して物理的に一般車両の進入を排除することが可能である[2]。このことは、バス専用の走行区分を設ける方式(バスレーン)やバス専用道路と比較して、ガイドウェイバスが有利な点とされる[2]。具体的には、バスのタイヤが接地する部分だけを舗装し、その間に段差を設けたり、走行妨害のための障害を設けることが可能である[2]。また、案内軌条以外には機械的装置や電気的装置はほとんど必要がないため、安価で保守が容易である[10]

整備費用はバスレーンやバス専用道路と比較すると高くつく[2]が、車両そのものにかかる費用はトラムよりも安くなる。1kmあたりの整備費用は、トラムが10億円から20億円であるのに対して、ガイドウェイバスは5億円から10億円程度である[11]。このため、トラムの整備が費用的に過重であったり、もとからバスが市内交通の主力である都市には、トラムと同様の定時性や速達性をより安価に確保することが可能である[11]。また必要なところにだけに整備を行うことで、さらに整備費用を低減させることも可能である[11][注釈 1]

日本においては自動案内軌条式旅客輸送システム (AGT) による輸送が必要なほど乗客数は見込めず、路線バスが渋滞等により輸送力やサービス低下を招いているような区域を対象に開発されている[1]。専用路の全幅が2,900mm前後で、道路の構造が自動案内軌条式旅客輸送システム(AGT)と近い[12]ことから、まずガイドウェイバスとして開業し、輸送力増強が必要になった時点で自動案内軌条式旅客輸送システム(AGT)に切り替えることも企図されていた[13]




注釈

  1. ^ 鉄道車両を使用する場合、運行する全区間において軌道の整備が必要である。
  2. ^ 文献では「1mあたりの建設費は600DM(ドイツマルク)」とされている。同じ文献に記載の「1ドイツマルク=65円」に従って換算した数字。
  3. ^ 文献では「1kmあたり0.42DM(ドイツマルク)」とされている。同じ文献に記載の「1ドイツマルク=65円」に従って換算した数字。
  4. ^ 文献では「1kmあたり0.06DM(ドイツマルク)」とされている。同じ文献に記載の「1ドイツマルク=65円」に従って換算した数字。

出典

  1. ^ a b 『バスラマ・インターナショナル』通巻5号 p.65
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u 『鉄道ジャーナル』通巻466号 p.87
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n o 『鉄道ジャーナル』通巻466号 p.89
  4. ^ a b c d e 『バスラマ・インターナショナル』通巻27号 p.15
  5. ^ a b c 『バスラマ・インターナショナル』通巻27号 p.14
  6. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t 『鉄道ジャーナル』通巻466号 p.88
  7. ^ a b c d e f g 『鉄道ジャーナル』通巻350号 p.117
  8. ^ a b c d e 『バスラマ・インターナショナル』通巻65号 p.13
  9. ^ a b c 浅井建爾 2001, p. 252.
  10. ^ a b 『路線バスの現在・未来 PART2』p.77
  11. ^ a b c d e f g h i j k l m 『鉄道ジャーナル』通巻466号 p.90
  12. ^ 『路線バスの現在・未来 PART2』pp.78-79
  13. ^ 『バスラマ・インターナショナル』通巻5号 p.66
  14. ^ a b c d 『路線バスの現在・未来 PART2』p.78
  15. ^ a b c d e 『バスラマ・インターナショナル』通巻27号 p.16
  16. ^ a b c d e 『鉄道ジャーナル』通巻340号 p.142
  17. ^ a b 『路線バスの現在・未来 PART2』p.79
  18. ^ 『鉄道ジャーナル』通巻340号 p.143
  19. ^ 『バスラマ・インターナショナル』通巻65号 p.12
  20. ^ 浅井建爾 2001, pp. 252,253.
  21. ^ a b c 『路線バスの現在・未来 PART2』p.80
  22. ^ a b c d e 『バスラマ・インターナショナル』通巻65号 p.15
  23. ^ a b c d e 『バスラマ・インターナショナル』通巻65号 p.17
  24. ^ 『鉄道ジャーナル』通巻466号 pp.88-89


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