バス・ラピッド・トランジットとは? わかりやすく解説

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バス高速輸送システム

別名:BRT、バスラピッドトランジット
英語:Bus Rapid Transit

バス専用道路設け一般的なバス運行システムよりも高速高頻度バス運行するシステム

バス高速輸送システムは専用道を走行するため、一般道渋滞などの影響受けずに、より正確な定時運行実現できる大容量化や高頻度化が容易である、軌道必要な鉄道などに比べて低コスト整備できる、などのメリットがある。

バス高速輸送システムは、都市部基幹交通システムひとつとして導入される場合と、地方経営難から廃線になった鉄道代替として導入される場合がある。

2011年3月発生した東日本大震災の影響で、2012年2月現在、JR気仙沼線など9つ路線運行不能の状態に陥っている。これらの路線迅速かつ低コスト復興させる方法として、バス高速輸送システムの導入検討されている。

バス‐ラピッドトランジット【bus rapid transit】


バス・ラピッド・トランジット

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/17 02:57 UTC 版)

コロンビア・ボゴタのバス(トランスミレニオ)
ブラジル・クリチバの乗換駅 (Linha Verde)

バス・ラピッド・トランジット: bus rapid transit, BRT)とは、バスを基盤とした都市大量輸送システムである。英語で都市高速鉄道を意味する「ラピッド・トランジット」に用語が由来する。

日本語ではバス高速輸送システム(バスこうそくゆそうシステム)とも呼ばれる[1]

概要

世界初のBRTシステムである、ブラジルクリチバの統合輸送ネットワーク

世界初のBRTシステムは、1974年に南アメリカブラジルクリチバで開業した統合輸送ネットワーク(RIT, Rede Integrada de Transporte)である。

同システムは、世界の多くの都市交通システムに採用された。例えば、コロンビアボゴタで2000年に開業したTransMilenio(TransMilenio)がある。

2014年10月時点で世界186都市でBRTが運行され、路線の総延長距離は4757キロメートルに達する[2]。世界の1日当たりのBRT推定乗降客数は約3170万人とされ、33都市で運行されているブラジルなどラテンアメリカでは、世界最多の60路線が存在し、推定乗降客数は約1970万人である[2]日本でも導入や検討が進んでいる。

定義

バス・ラピッド・トランジット(BRT)は必ずしも明確になった定義があるわけではないが、「専用走行空間の確保を基本とした、速達性、定時性、輸送能力に優れた、バス車両をベースとした高速運行の公共交通システム」と定義される[3]。「バス・ラピッド・トランジット」の名称は、英語で都市高速鉄道を意味する「ラピッド・トランジット」(直訳では高速輸送)を由来とする。

BRTは、混合交通、平面道路でのバス専用車線、他の交通から分離したバス専用道路を含む多種多様な優先権を行使して運用される。

2011年及び2013年、BRTシステムには多くの差異及び明白な特徴が存在するため、アメリカ合衆国の交通開発政策研究所英語版は、BRTとしての資格を有するシステムにはどのような特徴を備えるべきかという最低限の定義を設定し、既存のシステムを評価するBRTスタンダード英語版を創設した[4]

国際公共交通連合英語版(UITP)はBRTではなくBHLS(Bus with High-Level of Service)という別の概念を導入している[3]

主な特徴

BRTシステムは通常、以下の特徴の大部分を有する。

バス専用道路

バス専用道路を導入した場合、目的地までの所要時間が短縮され、混合交通での渋滞による遅延が回避可能である。分離優先道路を導入する場合、高架道路地下道路トンネル鉄道路線廃線跡を利用可能である。トランジットモール又は「バス・ストリート」は、中心市街地にも導入可能である。

バス専用車線

車道の中央又はバス専用車線でバスを運行した場合、歩道の縁石側(乗用車やトラックの停車・一時停止・方向転換があって交通量も多い)からバスを離すことが可能になり、遅延が防止できる。

車外運賃徴収

バス内での料金支払いの代わりに駅(バス停留所)での料金支払いを行うことにより、バス内での乗客の料金支払いに起因する遅延の防止が可能である。

交差点での待遇

バス専用車線を横断する方向転換を禁止することにより、バスの遅延は大いに減少する。バス車両優先システムを導入した場合、通常の順序と比較し、バスの進行方向での青信号の時間が拡大し、赤信号の時間が縮小することにより遅延が減少するため、信号交差点に導入されることが多い。方向転換の禁止は、交差点を通過するバスの移動に最も重要な方策になり得る。

乗降口の高さ

駅のプラットホームの高さをバスの床高に合わせることにより、乗降が迅速で容易になり、車椅子、体の不自由な乗客、ベビーカーの利用が十分容易になり、遅延を最小限に抑えることが可能である。

高床バスの床高に合わせた高床式プラットフォームを導入した場合、プラットフォームの外側での停車及び高床式プラットフォームでの通常のバスの停車が困難になるため、BRTの停車は他のバスの停車とは完全に分離する必要がある。鉄道車両とは対照的に、バス及びプラットフォームの間隙の高い危険性もまた存在する。

ドアでの段差のない低床バスは人気があり、増加傾向にある。低床バスは容易な乗降及び他のバスと互換性のある停車が可能である。

追加設備

最大乗車定員270人のトランスミレニオの車両

高頻度全日サービス

大容量車両

二連節バスのような大容量車両は、乗客の乗降を迅速化するため、通常複数のドアが用いられる。ガイドウェイバスもまた用いられ得る。円滑な乗車には先進的なパワートレイン制御英語版が用いられ得る。

上質な駅

トランスミレニオの駅入口における改札口

BRTシステムの駅は、密閉型の駅舎、魅力的なガラス製の引き戸、職員が配置された切符売り場、案内所などを備えることがあり、一般的なバス停留所と比べて多額の投資を要する傾向がある。また乗降の迅速化及び体の不自由な乗客の利便性向上のため、低床バス又は高床式プラットフォームのいずれかを用いた高低差のない乗降口や、複数のドアが用いられることが多い。特に利用客の多い駅においては、地下鉄のシステムと同じような方法で、車両乗車時ではなく「駅」への入場時での切符確認も一般的である。

優れたブランド又はアイデンティティー

ヴィヴァ・ラピッド・トランジット英語版メトロポリタン・エリア・エクスプレス (ラスベガス)英語版TransMilenioMetropolitano英語版Select英語版を例として、バスだけでなく停留所及び駅にもマークを付している[5]。固有かつ特色を示すアイデンティティーにより、自動車運転の代替案としてのBRTの魅力を高められる[6]。大都市は通常大規模なバス路線網を有する。全てのバス路線を示す路線図は理解しにくくなり得るため、乗客が低頻度のバスを待つ原因となる。特有のブランド及び分離した路線図を用いて、主要な高頻度のバス路線に数字でブランド設定を行うことにより、主要路線網がより理解しやすくなる。

各国の主なBRT

日本のBRT

日本国内でも、バス専用の走行空間を有する輸送システムや、運行車両に連節バスを用いた一般バス路線が各地に存在している。国土交通省は、BRTを「連節バス、PTPS(公共車両優先システム)、バス専用道、バスレーン等を組み合わせることで、速達性・定時性の確保や輸送能力の増大が可能となる高次の機能を備えたバスシステム」と定義し[7]、BRT導入におけるガイドラインも示している[8][9][10]

一方、多くは表定速度20km/h以下と低速であり、「BRT=連節バス」という「Rapid」が抜けた解釈が広まっていることが多い[11]。連節バス自体は一般路線バスとして日本でもわずかながら導入されていた。

バス専用の走行空間を有する路線

ガイドウェイバス専用通路を走るゆとりーとライン
バス専用道路区間を走るひたちBRT

運行経路にバス専用の走行路を使用している路線。主に廃止された鉄道路線の線路跡地にバス専用道路を設置している場合が多く、下記の6路線のうち4路線が関東・東北の路線であり、そのうち2路線が茨城県の路線である。

一般道を運行する路線

他の一般路線バスとは別体系の路線を設定して運行するもの。バスレーンの設置や連節バスを使用する場合が多い。

計画中の路線

災害時BRT

欧州のBRT

中国のBRT

インドネシアのBRT

マレーシアのBRT

オーストラリア

BRTスタンダード

BRTスタンダードによる金賞を受賞したBRT一覧
都市 BRTシステム
広州市中華人民共和国 広州BRT中国語版GBRT
(中山路)
ボゴタ(コロンビア) TransMilenio
(Americas, Calle 80, Calle 26,
NQS (Norte-Quito-Sur), SUBA, El Dorado
)
クリチバ(ブラジル) Curitiba BRT
(Linha Verde)
リオデジャネイロ(ブラジル) TransOeste英語版
リマペルー Metropolitano英語版
グアダラハラ (メキシコ) Macrobús英語版
メデジン(コロンビア) Metroplús英語版

脚注

注釈

  1. ^ 道路運送法や道路交通法に基づくバス専用道路ではない。
  2. ^ 当初は呉駅 - 広島駅間の直行便、坂駅 - 海田市駅間の運行再開後は、広駅・呉駅 - 坂駅間の直行便が対象。呉駅 - 坂駅間運行再開前日の9月8日で運行終了。
  3. ^ 広島 - 呉間の高速バス(クレアライン)の代替バスとして運行されている臨時バス。

出典

  1. ^ 道路:BRT”. 国土交通省. 2023年3月26日閲覧。
  2. ^ a b Global BRT Data
  3. ^ a b c d 中村 文彦、外山 友里絵「海外のガイドウェイバス事例に学ぶBRTの課題」 公益社団法人土木学会、2021年2月27日閲覧。
  4. ^ Greenfield, John (2013年3月12日). “Taking the Guesswork Out of Rating BRT: An Interview With Walter Hook | Streetsblog Chicago”. Chi.streetsblog.org. 2014年2月24日閲覧。
  5. ^ What is Select Bus Service? NYC Metropolitan Transit Authority. Retrieved 12 March 2010
  6. ^ Characteristics of BRT for decision making. page ES-8. Federal Transit Administration (August 2004).
  7. ^ BRTの導入促進等に関する検討会”. 国土交通省. 2020年2月6日閲覧。
  8. ^ 道路空間を活用した地域公共交通(BRT)等の 導入に関するガイドライン (本文) 国土交通省、2022年9月7日、全121ページ
  9. ^ 道路空間を活用した地域公共交通(BRT)等の導入に関するガイドライン(概要) 国土交通省、2022年9月7日、全9ページ
  10. ^ 地域公共交通(BRT)等の導入に関するガイドラインを策定! ~地域公共交通から持続可能な地域社会の形成を目指して~、国土交通省 道路局 企画課評価室・総合政策局 交通政策課・都市局 街路交通施設課、2022年9月7日
  11. ^ 新潟市「専用道なきBRT」の末路。新運行協定で名称消滅へ | 旅行総合研究所タビリス
  12. ^ 日田彦山線、BRT復旧で正式合意 8月に着工 日経新聞、2020-07-16
  13. ^ 日田彦山線にBRT 振興策ないまま着工 デマンドバス案も 日経新聞、2020-09-17
  14. ^ 鉄道ファン』2012年7月号「BRTの現状と実例」p.42
  15. ^ 新交通(BRT)導入 - 日立市
  16. ^ 「岐阜市型BRT」の導入について”. 岐阜市 (2015年4月1日). 2016年1月24日閲覧。
  17. ^ いまざとライナー(BRT)の運行による社会実験を2019年4月1日から開始します”. 大阪市高速電気軌道. 2019年2月13日閲覧。
  18. ^ “「連節バス」定着へ快走 福岡市は順調、北九州市も19年度導入へ “輸送の効率化”を切り札に” (日本語). 西日本新聞Web. https://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/428903/ 2018年8月28日閲覧。 
  19. ^ 西鉄バス北九州が、小倉~黒崎間/小倉~戸畑間で「連節バス」運行開始へ | 福岡のニュース”. twitfukuoka.com. 2019年7月3日閲覧。
  20. ^ “川崎臨海部において本市初となるBRTの運行を開始します”. 川崎鶴見臨港バス. (2023年1月20日). https://www.rinkobus.co.jp/2023/01/20/f3c3dc1bafe9a84c2cabdd834f70d5ff367516a0.pdf 
  21. ^ 都心と臨海副都心とを結ぶBRTについて”. 東京都都市整備局. 2016年2月12日閲覧。
  22. ^ 五輪前に都心-臨海部結ぶバス「東京BRT」に決定『東京新聞』2018年11月10日(2018年11月15日閲覧)。
  23. ^ 国立大学法人広島大学、東広島市と西日本旅客鉄道株式会社との連携協定を締結~東広島市の都市拠点等における公共交通の機能強化と魅力向上に向けて連携を推進していきます~”. 広島大学. 2022年11月29日閲覧。
  24. ^ BRT(バス高速輸送システム)導入へ連携協定 東広島市・広島大学・JR(RCC中国放送)”. Yahoo!ニュース. 2022年11月29日閲覧。
  25. ^ “豪雨被害の広島〜呉を走る「災害時BRT」とは 通勤2時間超を40分に 命名にある想い”. 乗りものニュース (メディア・ヴァーグ). (2018年8月23日). https://trafficnews.jp/post/81274 2018年8月26日閲覧。 

関連項目

  • バス高速輸送システムの一覧英語版

外部リンク



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