運送契約
(運送約款 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/28 06:11 UTC 版)
運送契約(うんそうけいやく)とは、物品や旅客を運送することを内容とする契約のこと。
概説
運送とは一定の場所から他の場所へ物品や旅客を移動させる事実行為をいう[1]。運送営業を行う商人を運送人といい、運送契約の締結によって運送を引き受ける[1]。
運送契約を規律する法源としては各種の法令があるが[2]、実際には運送人があらかじめ作成している運送約款が契約内容の決定に重要な役割を有している[3]。
物品運送契約・旅客運送契約
物品運送契約
物品運送契約は運送人が荷送人や傭船者などの契約相手方(物品所有者に限らない)に対して物品を運送することを約し、契約相手方がその対価として運送賃を支払う諾成・不要式の契約をいう[4]。
運送人がトラック、船舶、航空機など自らの輸送手段での運送を引き受ける場合を実運送契約という[4]。運送人が履行補助者として下請運送人を利用して運送サービスを引き受ける場合を利用運送契約という[4]。利用運送人は運送契約の当事者として契約上の義務を負っており、物品運送の取次業である運送取扱人(運送取扱営業)とは異なる[4]。
旅客運送契約
旅客運送契約は運送人が旅客を運送することを約し、その対価として契約相手方(通常は旅客と同一人)が運送賃を支払う諾成・不要式の契約をいう[4]。
陸上運送契約・海上運送契約・航空運送契約
陸上運送契約
ヨーロッパでは「道路による貨物の国際運送に関する条約」(CMR条約、1956年)や「鉄道による貨物輸送に関する国際条約」(COTIF条約、1980年)が締結されている[5]。
海上運送契約
国際条約に「船荷証券に関するある規則の統一のための国際条約」(ヘーグ・ルールまたはハーグ・ルールズ、1924年)とその改正議定書である「1968年改正議定書」(ヘーグ・ヴィスビー・ルールまたはウィスビー・ルールズ)及び「1979年改正議定書」がある[2]。
航空運送契約
国際条約に「国際航空運送についてのある規則の統一に関する条約」(ワルソー条約、1929年)と正式名称が同一の新条約(モントリオール条約、1999年)がある[2]。
脚注
- ^ a b 江頭憲治郎『商取引法 第7版』弘文堂、277頁。
- ^ a b c d 江頭憲治郎『商取引法 第7版』弘文堂、279頁。
- ^ 江頭憲治郎『商取引法 第7版』弘文堂、281頁。
- ^ a b c d e 江頭憲治郎『商取引法 第7版』弘文堂、278頁。
- ^ 江頭憲治郎『商取引法 第7版』弘文堂、280頁。
関連項目
運送約款
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/06/01 15:35 UTC 版)
「船客傷害賠償責任保険」の記事における「運送約款」の解説
海上運送法(9条1項)は、一般定期航路事業者、旅客不定期航路事業者、自動車航送貨物定期航路事業者に対して運送約款の制定、変更について国土交通大臣の認可を要するとしている。 標準運送約款では、次のとおり定めている。 ―――――― (当社の賠償責任) 第20条 1.当社は、旅客が、船長又は当社の係員の指示に従い、乗船港の乗降施設(改札口がある場合にあっては、改札口。以下同じ。)に達した時から下船港の乗降施設を離れた時までの間に、その生命又は身体を害した場合は、これにより生じた損害について賠償する責任を負います。 2.前項の規定は、次の各号のいずれかに該当する場合は、適用しません。 (1)当社が、船舶に構造上の欠陥及び機能の障害がなかったこと並びに当社及びその使用人が当該損害を防止するために必要な措置をとったこと又は不可抗力などの理由によりその措置をとることができなかったことを証明した場合 (2)当社が、旅客又は第三者の故意若しくは過失により、又は旅客がこの運送約款を守らなかったことにより当該損害が生じたことを証明した場合 3.当社は、手回り品その他旅客の保管する物品の滅失、き損等により生じた損害については、当社又はその使用人に過失があったことが証明された場合に限り、これを賠償する責任を負います。 4.当社が第5条(略)の規定による措置をとったことにより生じた損害については、第1項又は前項の規定により当社が責任を負う場合を除き、当社は、これを賠償する責任を負いません。 (旅客に対する賠償請求) 第21条 1.旅客が、その故意若しくは過失により、又はこの運送約款を守らなかったことにより当社に損害を与えた場合は、当社は、当該旅客に対し、その損害の賠償を求めることがあります。 ―――――― 賠償責任が生じる事例として、次のものが考えられる。 本船乗下船のための連絡用の船に搭乗している間に船が他船にぶつかりその衝撃で負傷した。 乗降施設内で乗船待ちの旅客が船から投げられたトモ綱に当たって受傷した。 船内の食事が原因で、下船後、食中毒の症状が現れた。
※この「運送約款」の解説は、「船客傷害賠償責任保険」の解説の一部です。
「運送約款」を含む「船客傷害賠償責任保険」の記事については、「船客傷害賠償責任保険」の概要を参照ください。
- 運送約款のページへのリンク