都市間鉄道とは? わかりやすく解説

都市間鉄道

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/05/22 17:19 UTC 版)

都市間鉄道(としかんてつどう、英語: Intercity rail)は、通勤列車中距離電車よりも長い距離を結ぶ、日本であれば特急列車、欧州であればインターシティーなどの種別を指す。 その正確な定義はなく、国ごとに意味が異なるが、最も広く言えば、一つの都市内で完結する通勤列車や、各駅に停車して地域輸送を担う普通列車でもない列車であり、停車駅が限られ、クロスシートのような長距離輸送に適した快適な設備を有する特急列車や急行列車である。

速度

在来線による時速100キロ以下のものから高速新線を利用した時速300キロ以上の高速鉄道に分類されるものまで、様々である。都市間輸送においては、自動車航空機と対抗したり、経済発展や需要創出を目指したりするためには高速化が重要な課題であり、多くの国で高速鉄道の整備や計画が進められている。

距離

IC (オランダ)
  • 100 km未満

メガシティやそれに次ぐ大都市圏では、通勤列車が100 km近い距離をカバーしており、運行範囲が重なっている。都市間鉄道の運行距離が比較的短い国として、オランダベルギースイスイスラエルなどが、地域単位ではドイツのライン=ルール大都市圏などが挙げられる (アムステルダム~ロッテルダム・62 km) (ブリュッセル~アントウェルペン・46 km) (ケルン~エッセン・82 km)。

例としてランドスタット地域は数十 kmの範囲に都市が集中しており、都市間列車が高頻度で運行されている[1]。なお、南東イングランドには、オランダのインターシティーと運行距離や車内設備が似通った鉄道網があるが[2][3]、これらはインターシティーとは呼称されない。日本国内における比較的短距離の都市間列車としては、高松~徳島名鉄特急などが挙げられる。

IETHST (イギリス)
  • 100 - 500 km程度

多くの国で都市間列車が利用される一般的な距離であり、所要時間が3時間以内の場合、都市間鉄道は高速道路や短距離の航空路線と十分に競合できる。自家用車やバスに対しては居住性や速度面で、航空路線に対しては搭乗手続きの省略や都心直結などの点で優位性がある[4]。また、環境保護の観点から鉄道の利便性が高い都市間の空路を廃止する動きもある[5]

ニューヨーク~ワシントンD.C. (362 km)、ロンドン〜マンチェスター (290 km)、パリ〜リヨン (390 km)、ベルリン~ハンブルク (335 km)、アムステルダム~ブリュッセル (200 km)、東京~大阪 (515 km)、上海~南京・重慶~成都 (300 km)、広州~香港 (178 km)、ソウル~釜山 (417 km)、台北~高雄 (340 km)など、主要な都市間鉄道ルートの多くがこの距離の範囲に収まる。また、この範囲内である東京~仙台、東京~新潟など、鉄道の利便性向上によって早期に航空路線が廃止となる都市間もある[6]

ユーロナイト
  • 500 - 1,000 km

この距離の移動では、主に航空路線が利用される場合が多い。しかし高速鉄道の発展により、このような長距離移動においても鉄道のシェアは拡大している。例として、パリ〜マルセイユ (750 km)や、東京〜青森 (675 km)などは3時間程度、武漢~広州 (968 km)は3時間半程度で結ばれている。高速鉄道ではない従来の在来線の場合、この距離では夜行列車の利用が一般的である。ヨーロッパでは国際夜行列車「ユーロナイト」が路線網を広げており[7]、ベルリン~チューリッヒ (850 km・12時間)、ウィーン~ヴェネツィア (620 km・11時間)、プラハ~ワルシャワ (785 km・10時間)など、様々なルートがある。


中国国鉄の夜行列車
  • 1,000 km以上

中国インドロシアのように、広大な領土に鉄道網を有する国、或いは航空や自動車による輸送が限られている国では、夜行の長距離列車サービスが提供され、広く利用されている。他の多くの国では、観光や趣味、或いは大幅なコストメリットがある場合を除き、このような長距離の鉄道移動は航空路線に取って代わられている。アムトラックVIA鉄道の大陸横断路線などがその例である。

中国では北京~上海 (1,300 km)などの長距離であっても、最速4時間半前後で結ばれており、航空路線に対して一定の競争力がある[8]。夜行列車の場合も、北京~長沙 (1,587 km・14時間半)[9]、北京~ハルビン (1,249 km・10時間半)[10]、北京~深圳 (2,400 km・高速鉄道経由で11時間)[11]などは、他国より長い距離をより速く結んでいる。

国・地域ごとの概況

東アジア

日本

特急あずさ号

日本で都市間鉄道と言えるのは主にJRの新幹線や在来線の特急列車である。沖縄県を除けば、人口10万人以上程度の主要都市の大部分は都市間鉄道で結ばれてネットワークを形成しており、新幹線・特急ルートにない場合も、普通列車を乗り継いで到達できる。また、東武鉄道小田急電鉄名古屋鉄道近畿日本鉄道などの私鉄の一部も、都市間鉄道の分類に入る特急列車を運行している。



中国

復興号CR200J型

中国語では、都市間列車は城際列車と呼ばれる。近年は高速鉄道網の発展が目覚ましく、マカオ特別行政区チベット自治区を除く全ての一級行政区に高速鉄道が通じており、都市間移動の主力となっている。一方、在来線で夜行運転を行い2~3日をかけて走るような長距離列車も、依然として重要な役割を果たしている。高速鉄道の列車種別は、高速動車組列車(頭文字G)、城際動車組列車(頭文字C)、動車組列車(頭文字D)であり、G列車とC列車は最高速度300-350 km/h、D列車は250 km/hで運行されている。在来線の列車種別は、主に直達特快列車(頭文字Z)、特快列車(頭文字T)(以上、特急に相当)、快速列車(頭文字K)である。また、一部のC列車とD列車が在来線でも運行されている。在来線でも高速化改良により、T列車は最高速度140 km/h、Z列車、C列車、D列車は160 km/hの高速運転が行われている。

香港

かつては、紅磡駅から中国大陸の広州を結ぶ城際直通車広九直通列車北京西駅に直通する京九直通列車上海駅に直通する滬九直通列車が運行されていた。これらの列車は2024年に香港への乗り入れが廃止されており、以後は広深港高速鉄道香港西九龍駅を発着する高速動車組列車が、中国大陸との間の都市間輸送を担っている。

台湾

普悠瑪号

高速鉄道のほか、自強号 (特急に相当、最高速度130 km/h)、莒光号が都市間鉄道の役割を果たしている。曲線を高速で通過できる日本製の車体傾斜式車両である太魯閣号普悠瑪号が近年導入され、スピードアップや増便に大きな役割を果たした。なお、路線の高規格化が進んだ2021年に投入されたEMU3000型自強号は車体傾斜装置が搭載されていない。台湾の都市間旅客需要は西海岸東海岸の2つのルートに集中しているため、EMU3000型は輸送力確保のため12両固定編成となった。


韓国

ITX-セマウル

在来線の都市間鉄道には、ITX-青春ITX-マウムITX-セマウルセマウル号ムグンファ号ヌリロがある。最高速度は、ITX-青春が180 km/h、他は150 km/hで運用されている。
なお、ムグンファ号は普通列車が運行されない区間において多くの駅に停車することで、都市間輸送と地域輸送を兼任している。



東南アジア

マレーシア

KTM ETS

電化区間では、1,000mmのメーターゲージでありながら最高速度145 km/hで運行するKTMエレクトリック・トレイン・サービス (ETS)が、非電化区間ではKTMインターシティが運行されている。

インドネシア

ジャワ島には島を横断する鉄道網があり、首都のジャカルタと第二の都市スラバヤを結ぶ列車を始め、多くの都市間列車が運行されている。全てディーゼル機関車牽引の客車列車であり、最高速度は120 km/hである。

このほか、タイ、ベトナム、ミャンマーなどで都市間鉄道が運行されている。

南アジア

インド

ラージダーニー急行

全国の都市間に急行列車のネットワークが張り巡らされている。最高速度 160 km/hのヴァンデ・バーラト急行ガティマン急行、150 km/hのシャターブディー急行ラージダーニー急行などがその代表的なものであり、その他130 km/h以下の列車が多数存在する[12]。また、接客設備の座席及び寝台は10種類以上の等級に分かれており、価格差も大きい[13]




ヨーロッパ

ユーロシティ

ヨーロッパでは、多くの国の長距離都市間列車はインターシティのブランド名で運行されている。ドイツなどでは1時間ごとのパターンダイヤを採用し、高頻度で利用しやすい路線網が形成されている。高速鉄道網が西ヨーロッパ諸国を中心に発達しているほか、在来線であっても、最高速度160 km/hあるいは200 km/hの高速運転がなされている場合が多い。また、国際列車が多く存在し、その頻度も高かったり国境での長時間停車を行わなかったりして日常的に利用できるようになっているのも、この地域の都市間列車の大きな特徴である。

ロシア

シベリア鉄道をはじめとする数千キロの長距離列車が、国中に多数運行されている。最高速度250 km/hのサプサンのような高速列車もごく一部に存在するものの、一般的には平均速度60 km/h程度で遅い。

北アメリカ

アメリカ合衆国

パシフィック・サーフライナー

同国の都市間鉄道は、現在、公共企業体アムトラックにより運営されている。20世紀中盤までは、全国に私鉄による都市間鉄道のネットワークが存在したが、航空機、自動車が普及すると旅客を奪われ、人口密度が薄い国土のため鉄道が得意とする大量輸送に適さず、都市間鉄道は大きく縮小した。最終的に各私鉄が運行していた列車の運営はアムトラックに一元化された。しかし、アムトラック発足後もネットワークの縮小傾向は続いている。例外的に、ニューヨークを中心とした大都市が連なる北東回廊区間においては、アセラのような高速列車、より停車駅の多いノースイースト・リージョナルなどがあり本数が多く、ビジネスにも多く利用されている。このほか、カリフォルニア州パシフィック・サーフライナーキャピトル・コリドーリンカーン・サービス英語版などのシカゴと周辺の街を結ぶ路線などは一定の利用者・本数を維持しているが、これらの他アラスカ州の州営アラスカ鉄道以外の路線では列車本数は1日1本程度に限定され(毎日運行でない路線も一部存在する)、時間に余裕のある乗客による利用が中心である。 なお、近年では全米各地で高速鉄道の新設計画が持ち上がっており、カリフォルニア高速鉄道計画のように具体的な段階に進みつつあるものもある。

カナダ

コリドー号

カナダにおいてはカナディアン・パシフィック鉄道カナダ国有鉄道の大手2社が都市間鉄道を運営していたが、アメリカのアムトラック同様に新たに発足したVIA鉄道に移管されている。こちらもアメリカ同様に、トロントモントリオールを結ぶ路線などを除けば大陸横断路線のカナディアン号のように観光要素の強い列車が主である。

関連項目

出典

  1. The most popular routes with the train | NS”. www.ns.nl. 2025年4月23日閲覧。
  2. Southern railway Livemap
  3. Southeastern railway Livemap
  4. Trains or planes? The great European travel test”. www.telegraph.co.uk (2011年2月24日). 2023年6月29日閲覧。
  5. République Française. “フランス。鉄道で2時間半以内の国内近距離航空便の廃止、コロナ禍等で、2年遅れで実施。次の焦点はプライベートジェット機の排出規制(RIEF)” 2026年5月17日閲覧。{{cite news}}: CS1メンテナンス: 先頭の0を省略したymd形式の日付 (カテゴリ)
  6. 北海道航空問題研究会(HAPS) (2018年12月12日). 6-2-③ 日本の国内航空路線の廃止”. 2026年5月19日閲覧。
  7. Back on track.eu. Night train map”. 2026年5月17日閲覧。
  8. 颜平. 颜平:中国铁路之最——京沪高铁”. 中国法治. 2026年5月17日閲覧。
  9. 北京-长沙卧铺动集列车
  10. 北京-哈尔滨直达特快列车
  11. 北京-深圳卧铺动车组列车
  12. “Train 18: PM Modi to flag off Vande Bharat Express on February 15 from New Delhi”. Business Today. Press Trust of India. (2019年2月7日) 2019年2月15日閲覧。
  13. Accommodation Classes in Indian Railways”. Indian Railways. 2017年4月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年4月26日閲覧。

都市間鉄道

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/12 14:57 UTC 版)

ニューヨーク市の交通」の記事における「都市間鉄道」の解説

詳細は「アムトラック」を参照 ニューヨーク市ロングアイランド鉄道貨物輸送衰退しているが、アメリカ各地から旅客列車通勤電車および州間連絡列車)が頻繁に運行されている。ニューヨーク市からの都市連絡鉄道アムトラック担っているニューヨークからフィラデルフィアへの路線には毎日54本の列車走っている。アムトラックニューヨークから北東回廊経由500マイル800キロメートル未満の各都市へ向かう場合には航空機よりも安く速く移動することができる。アムトラックニューヨーク - ワシントンD.C.間を自動車使わず移動する人のうち47%が利用しており、自動車利用者も含めると約14%が利用している。アムトラック高速列車アセラ・エクスプレスボストンから北東回廊経由ニューヨーク通りワシントンD.C.までを約7時間で結んでいる。車両には車体傾斜装置がついておりカーブ高速通過することが可能である。アムトラックの駅で最も乗客数が多い駅がニューヨーク位置するペンシルベニア駅で、2004年には4400万人乗客利用しており2番目に乗客数の多い駅であるワシントンD.C.ユニオン駅の2倍以上となっている。 夜行列車運行されておりニューヨーク市からシカゴ西海岸路線接続) 、アトランタニューオーリンズマイアミ向かっている。マイアミへは1日2本、シャローットやサバンナへは1日1本が運行されている。シカゴへアップステート・ニューヨーク - クリーブランド経由1日1本、シンシナティ経由が週3本運行されている。そのほか運行頻度の多い行き先としてはオールバニボルチモアボストンハリスバーグフィラデルフィアプロビデンスワシントンD.C.などがある。また、カナダトロントモントリオールへ向かう国際列車運行されている。

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「都市間鉄道」を含む「ニューヨーク市の交通」の記事については、「ニューヨーク市の交通」の概要を参照ください。

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