Strela 2とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > Strela 2の意味・解説 

9K32

(Strela 2 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/15 04:23 UTC 版)

9K32 ストレラ-2
ミサイル本体(上段)
ミサイルコンテナおよび発射装置(下段)
種類 携帯式防空ミサイルシステム
製造国 ソビエト連邦
性能諸元
ミサイル直径 約100 mm
ミサイル全長 約1,490 mm
ミサイル重量 9.97 kg
(さらに発射装置重量 4.71 kg)
弾頭 HE破片効果(1.15 kg)
射程 550 - 5,500 m
射高 18 - 4,500 m
推進方式 単段式固体ロケット・モーター
誘導方式 パッシブ赤外線ホーミング(IRH)
(PbS素子)
飛翔速度 430 m/s(ストレラ-2)
500 m/s(ストレラ-2M)[1]
テンプレートを表示

9K32 ストレラ-2ロシア語: 9К32 Стрела-2 ヂェーヴャチ・カー・トリーッツァヂ・ドヴァー・ストリラー・ドヴァー、Strela-2)は、ソ連で開発された携帯式防空ミサイルシステム(MANPADS)。小型の発射装置と赤外線誘導ミサイルの組み合わせにより、歩兵が携行・発射できる。ミサイル弾体は9M329М32 ヂェーヴャチ・エーム・トリーッツァヂ・ドヴァー)と呼ばれる。NATOによって用いられたNATOコードネームはグレイル(Grail)、DoD番号はSA-7。なお、「ストレラ」はロシア語で「」の意味。

概要

9K32 ストレラ-2は、車載式の9K31 ストレラと並行して1959年頃から開発され、1968年前後に量産および配備が開始された。筒状のコンテナミサイルが入っており、その下に小型の発射装置と引き金、ミサイル電源用の小型熱電池が取り付けられている。

ミサイルの射程は550-5,500m程度、高度18-4,500m程度の目標に対応する。誘導方式はパッシブ赤外線ホーミング方式であり、ミサイル先端の赤外線シーカーが目標の航空機の熱を感知し追跡する。ただし、本機の赤外線シーカーは冷却措置を持たない硫化鉛(PbS)焦電素子を用いたものであり、検知波長の関係上、必ずしも目標を適切に捕捉できない場合があり、特に初期型は性能が劣るとされている。

目標に直撃した場合、炸薬HE)1.15kgが爆発し目標を破壊する。また、目標を逃した場合は、15秒程度で自爆する仕組みになっている。発射装置は別のミサイル容器に取りつけて再使用できる。

9K32は輸出が積極的に行われ、実戦でも多数が用いられている。中東戦争ではアラブ諸国に供給され、ベトナム戦争では北ベトナム軍に供給されて南ベトナム軍アメリカ軍ヘリコプターを相当数撃墜している。アフガニスタン紛争においては、ムジャーヒディーン側が中国エジプトの9K32のコピー品を使用していた。これらはCIAサウジアラビアの支援団体などが供給したものであり、皮肉にも自国が開発した兵器の複製品で自分たちの航空機が狙われたのである。近年では、湾岸戦争イラク戦争でも存在が確認されている。2012年には、ヒズボラが9K32を用いてイスラエルのヘリコプターを攻撃したとの報道もなされた[2]

基本型の9K32は射程が短く、炸薬量が少ない点、フレアに対して脆弱な点などが欠点だが、海外製の派生型はこれらを改良しているとされる。生産数も多く、現在では世界中に拡散しており、非正規軍テロリストの手にも渡っているものと見られる。特に、2010年アラブの春に端を発する中東各国の政権崩壊の混乱により、が保有している武器テロリストに流出しており、9K32も例外ではない[3]

後継は9K34 ストレラ-3

派生型

9K32 ストレラ-2
初期量産型。NATOコードネームはSA-7A。
9K32M ストレラ-2M
改良型。NATOコードネームはSA-7B。
HN-5
9K32を元に開発した中国携帯式防空ミサイルシステム
HN-5A
HN-5の改良型。
화승총(Hwasung-Chong)
北朝鮮での生産型。
Ayn as Saqr
エジプトでの生産型。
Anza MK-1
パキスタンでの生産型。

このほかに、艦載型(運用側の名称はストレラ-2のままだが、DoD番号は新たにSA-N-5が付されている)、車載型も開発・配備されている。そのほか、ユーゴスラビアなどでも派生型が開発されている。また、現地改修型と分類すべき派生型も多く、必ずしもすべては把握されていない。

配備国

登場作品

ドラマ

『ロシア特殊部隊スペツナズ』

漫画・アニメ

ヨルムンガンド
民兵組織「バルドラ」が、ココたちの乗るAn-12 カブ輸送機を迎撃する際に使用。

ゲーム

ARMA 2
Armed Assault
Operation Flashpoint: Cold War Crisis
ソ連軍レジスタンス陣営の対空ミサイル兵科で使用可能な地対空ミサイルとして登場する。
グランド・セフト・オート・サンアンドレアス
「熱追尾式ロケットランチャー」の名称で登場する。航空機・車両・船舶に対しロックオンが可能。
コール オブ デューティ ブラックオプス
名称が「ストレラ3」になっている。
バトルフィールド ベトナム
北ベトナム軍ベトコンで使用可能。
フィクショナル・トルーパーズ
エストビア連邦軍の歩兵装備として登場する。

脚注

  1. ^ http://www.new-factoria.ru/missile/wobb/strela_2m/shema.htm. Retrieved: May 5th, 2009
  2. ^ “ガザで携行型地対空ミサイルの初の攻撃、イスラエル機を狙う”. CNN News (CNN). (2012年10月18日). https://www.cnn.co.jp/world/35023248.html 2012年10月27日閲覧。 
  3. ^ 瀬川明秀 (2013年1月22日). “アルジェリア、なぜ人質救出ではなく軍事作戦に踏み切ったのか”. 日経ビジネスオンライン. http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20130121/242513/ 2013年1月22日閲覧。 
  4. ^ IISS 2024, p. 180.
  5. ^ IISS 2024, p. 77.
  6. ^ The International Institute for Strategic Studies (IISS) (2023-02-15) (英語). The Military Balance 2023. Routledge. p. 439. ISBN 978-1-032-50895-5 
  7. ^ IISS 2024, p. 79.
  8. ^ IISS 2024, p. 431.
  9. ^ IISS 2024, pp. 184–185.
  10. ^ IISS 2024, p. 497.
  11. ^ The International Institute for Strategic Studies (IISS) (2023-02-15) (英語). The Military Balance 2023. Routledge. p. 181. ISBN 978-1-032-50895-5 
  12. ^ IISS 2024, p. 368.
  13. ^ The International Institute for Strategic Studies (IISS) (2023-02-15) (英語). The Military Balance 2023. Routledge. pp. 346-347. ISBN 978-1-032-50895-5 
  14. ^ The International Institute for Strategic Studies (IISS) (2023-02-15) (英語). The Military Balance 2023. Routledge. p. 198. ISBN 978-1-032-50895-5 
  15. ^ IISS 2024, p. 524.
  16. ^ IISS 2024, pp. 208–209.

参考文献

  • The International Institute for Strategic Studies (IISS) (2024) (英語). The Military Balance 2024. Routledge. ISBN 978-1-032-78004-7 

関連項目

外部リンク

ウィキメディア・コモンズには、9K32に関するカテゴリがあります。


「Strela 2」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「Strela 2」の関連用語

Strela 2のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



Strela 2のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの9K32 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS