突撃飛行隊とは? わかりやすく解説

突撃飛行隊

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/15 01:32 UTC 版)

フォッケウルフ Fw190」の記事における「突撃飛行隊」の解説

1943年ドイツ空軍コンバット・ボックス(密集防御編隊)を組んだアメリカ第8航空軍重爆撃機編隊直面した。このB-17およびB-24 (航空機)の重防御・高火力対抗する戦術が必要であったコンバット・ボックスは、1個中隊6機を3グループ集合させた15-18機で構成され、どの方向にも30-40門の機銃による防御射撃可能だった。このボックスおおよそ全長189m、全幅342m、全高270m程度となる。またこれを上下3段重ねた、45-54機による「コンバット・ウイング」を構築、、これを連ねた数百機の大編隊による攻撃が行われていた。 参謀本部戦闘機隊総監アドルフ・ガーランド補佐していたハンス=ギュンター・フォン=コルナツキ(KORNATZKI コルナルツキ、コルナッキー)少佐(のち、中佐)は、これを迎撃するための「突撃飛行隊」(Sturmgruppen)の設立提案した第二次大戦途中から参戦したアメリカ重爆撃機イギリスそれより爆弾搭載量こそ少ないが、防御火力および防弾性能優れており、従来ロッテ(2機編隊)やシュヴァルム(4機編隊)単位による攻撃では、コンバット・ボックスを崩す事は容易でない考えられた。このため1個飛行隊(3個飛行中隊)が敵重爆撃機防御火力比較的弱い正面から編隊攻撃行い大打撃と共に重爆撃機搭乗員精神的圧迫与え戦術的にコンバットボックス防御機能不全に陥らせ、作戦的にはアメリカ爆撃機群に対す継続的な損害与え機材補充によっても許容し得ないほどの出血を強いるという作戦であった1943年10月19日に第1突撃飛行中隊(シュトルムタッフェル)が創設された。ドイツ空軍場合中隊12機で編成されており、実験的な兵力であったパイロット可能な限り敵編隊肉薄し必要とあらば体当たり攻撃も辞さずに敵重爆撃機撃墜することを宣誓した。ただしこの宣誓多分に儀式的な意味合い含まれており、宣誓書署名させられるようなことはほとんど無かったか、または署名せずとも特に咎められることもなかった。IV./JG3飛行隊長ヴィルヘルム・モリッツ大尉は、国防軍将兵入隊時既に国家への忠誠献身宣誓しており、重ねてこの様宣誓など無用と、署名済み宣誓書焼き捨てとされる参加パイロット数は15名から18であった。彼らは1944年2月末までに訓練終え1944年1月または3月より本格的な作戦開始した。 第1突撃飛行隊による実験の結果、突撃飛行隊の有効性高く評価され1944年4月始めには第11戦航空団(JG11)と第1戦闘航空団(JG1)「エーザウ」に新たに突撃中隊置かれた。さらに4月末または5月始めには第3戦闘航空団(JG3)「ウーデット」に第IV飛行隊(突撃)および「モーリツ」突撃飛行隊が設けられた。第IV飛行隊は第10,第11(旧第1突撃飛行中隊編入)と第12中隊からなり兵力は計36機である。1944年7月頃には第300戦闘航空団(JG300)第II飛行隊第4戦闘航空団(JG4)第II飛行隊も突撃飛行隊とされ、後者については1944年春中佐となった突撃飛行隊創案者・コルナツキが指揮官となった。なおコルナツキは第4戦闘航空団第2飛行隊所属していた1944年9月13日、敵護衛戦闘機撃墜され不時着試みるも高圧電線接触し墜落戦死している。 突撃飛行隊の戦術には当初正面攻撃用いられいたものの、相対速度が高いため射撃行え時間少なくパイロットにも高い技量求められた。そこで敵重爆撃機防御火力は強力となるが、後方から攻撃を行うことが一般的になった。後方攻撃への方針変換1944年4月または5月第3戦闘航空団III飛行隊長ダール少佐発案よる。また白石 (2009)の文献によればコルナツキの発案により当初から後方攻撃用いられともされる。この攻撃全機火力発揮するため一列横隊または鏃型の編隊組み、敵コンバット・ボックス後方肉薄し攻撃加えるものであった攻撃後は上方または下方離脱する。突撃飛行隊の特筆すべき戦闘として、1944年7月7日第3戦闘航空団第4飛行隊44をもってB-24を迎撃後方よりのわずか1航過の攻撃で、12機ものB-24を屠ったという事例がある。 体当たり攻撃実際に行われ、敵の主翼軟着陸しそれを切断する方法や、尾翼プロペラエンジン部衝突させ破壊する方法推奨された。これは重装甲を誇る突撃Fw 190であればパイロット生還十分に期待できるものであり、献身的行動ではあるが、自殺的作戦ではない。 なお実戦体当たり攻撃が行われ、そして同時に体当たり行ってパイロット生還(パラシュートによる脱出降下)できること証明されたのは1944年1月30日迎撃戦鈍重な突撃仕様機が敵戦闘機撃墜報告したのは1944年4月11日のことであり、いずれも第一飛行中隊戦果である。 突撃隊訓練用いられ機体MG 151/20 20mm機関砲4門、MG 17 7.92mm機関銃2丁を装備するA-6型に、防弾ガラス装備するなど装甲強化しアメリカ軍重爆撃機装備するブローニングM2 12.7mm機関銃対抗できるようにしたもので、シュトルムイェーガー(突撃戦闘機、嵐の狩人)と呼ばれた。ただしMG 17 7.92mm機関銃は、重爆撃機に対して効果薄く同時に装甲強化により増加した重量対す対策のため、撤去される例も多かった。また側面防弾ガラス視界狭くなり、高々度上がる従来ガラス増設しガラスの間に氷が張る弱点があることから「目隠し」と呼ばれパイロットにより外されることが多かったその後A-7/R2(外翼の20mm機関砲を30mm機関砲換装したタイプ)を経て、A-8/R2、およびA-8/R8、「シュトルムボック」(破城槌または破壊)が開発・配備されるに至った。この機体武装は13mm機関銃2丁、20mm機関砲2門、30mm機関砲2門を備え装甲としてキャノピー前面に50mm、側面に30mmの防弾ガラスコックピット周辺の5mm鋼板両翼機関砲前面に20mm鋼板装備したこのような防御のため、機重は250キログラム以上増加していた。30mm機関砲は敵重爆撃機には効果的であったが、これらの機体重量増加から敵戦闘機との空戦が相当に困難となっており、通常の戦闘機仕様Fw 190、またはBf 109による護衛を必要とした。突撃飛行隊1個につき、通常の戦闘機により編成され飛行隊が2隊ついたという。なおR-8型はR-2型の防弾ガラスなどの装甲強化し、その代償として機首の13mm機関銃撤去したのである白石(2008)によれば機銃撤去しない状態で、A-6型と、武装強化したA-8/R8(フラッペによればR-2型に相当する)型の火力比較すると、前者が3秒あたりの投射弾量37ポンド(約16.8kg)、後者74ポンド(約33.6kg)と、単純に単位時間あたりの弾量は倍増している。また、30mm機関砲 Mk 108破壊力はあるものの弾頭重量重く初速が低いため弾道性能がよくなかったが、200m以下での近接射撃基本とする突撃飛行隊にはこの点は問題とならなかった。 連合軍側では突撃飛行隊を(少なくとも当初は)「ウルフ・パック攻撃」(群狼攻撃)として恐れたという。連合軍側もこの突撃飛行隊については相応評価見せており、例えアメリカ第8空軍では1944年11月2日戦闘において、突撃飛行隊により、戦闘機による損害全体の1/4にあたる6機または7機の、そしてたった一つの突撃飛行隊のためにさらに21機のB-17撃墜され合計27程度の4発重爆撃機失ったとしている(第8空軍公式戦史はこの日の爆撃機損害合計40機としているが、ジルビッヒ (1994) はこれは過小なのではないかとしている)。なおこの代償としてドイツ空軍2つの突撃飛行隊から24-30機を失い戦闘機全体では98-120機を失っている。 戦争末期には敵護衛戦闘機の厚い壁に阻まれ、あまり戦果はあがらなかった。上述11月2日戦闘には600機ものP-51とその他若干護衛付き、これを迎撃したドイツ戦闘機500機は大きな損害被っている。また、1945年3月24日戦闘では、第300戦闘航空団II飛行隊20機もの損害被ったが、敵にはほとんど打撃与えられなかった例などが、文献紹介されている。

※この「突撃飛行隊」の解説は、「フォッケウルフ Fw190」の解説の一部です。
「突撃飛行隊」を含む「フォッケウルフ Fw190」の記事については、「フォッケウルフ Fw190」の概要を参照ください。

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