日本の純文学とは? わかりやすく解説

日本の純文学

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/27 16:21 UTC 版)

純文学」の記事における「日本の純文学」の解説

日本近代文学始まり告げた作品は、二葉亭四迷の『浮雲』(1887年 - 1889年といわれる言文一致による文体近代人苦悩描いたテーマは、近代文学体裁整えたものであったが、二葉自身はその出来満足せずその後20年近く小説執筆から離れている。 日本の文学用語として純文学は、明治時代1868年 - 1912年)の作家北村透谷評論人生に相渉るとは何の謂ぞ』(『文学界二号1893年2月28日)において、「学問のための文章でなく美的形成重点置いた文学作品」として定義された。この時代の「純文学」という用語は、現在の文学」という用語とほぼ同義であった日本における純文学確立した明治時代後期には、現実の負の面を捉えた島崎藤村田山花袋徳田秋声らの自然主義文学文壇席巻する。田山の『蒲団』(1907年以降、日本の純文学の主流は、自分周辺のことを書き連ねる私小説となったといわれる一方自然主義文学先陣切ったといわれる島崎の『破戒』(1906年)は部落問題扱っており、長塚節の『土』(1912年)は農民貧困克明に描いたもので、日本社会派小説先駆けとも評価される。こういった社会問題への意識は後の白樺派人道主義一面では通底するものでもあり、プロレタリア文学へとつながっていくことにもなる。 明治末から大正1912年 - 1926年)にかけては、自然主義暗さ反発して人道主義的理想主義掲げた武者小路実篤志賀直哉有島武郎白樺派登場する志賀直哉が『城の崎にて』(1917年)を初めとする短篇小説示した作為排し写生文は、後の私小説規範とされた。なお、明治後期から大正期には、反自然主義目され高踏派森鷗外や、余裕派夏目漱石が、物語性富んだ傑作残し鴎外漱石両名作品は、後に日本文学規範見なされるようになった反自然主義もう一つ流れとして、耽美派永井荷風谷崎潤一郎らがおり(ただし永井初期には自然主義作家目されていた)、彼らは江戸文芸大正モダニズム取材した豊かな物語性を持つ作品多く手がけた。谷崎陰影富んだ文体は、森鴎外代表される簡勁表現対極的ではあるが、鴎外並んで魅力的な日本語文章のひとつの極致であるともいわれる大正末期から昭和1926年 - 1989年)の初めにかけては、新現実主義称され芥川龍之介が、『文芸的な、余りに文芸的な』(『改造1927年4~8月)において、「“筋の面白さ”は、小説芸術的価値とは関係しない」と主張し、「筋の面白さこそが、小説という形式特権である」とする谷崎潤一郎対立するこの頃から、大衆小説広く読まれるようになった芸術性重視作家たちは、大衆小説との差別化を図るために、自らを純文学定義するようになった。こうして、現在の意味と同じ「純文学」という用語が定着した昭和初期には、川端康成横光利一新感覚派一世を風靡しその後日本語文体大きな影響与えた横光アンドレ・ジッド初めとする海外文学への感銘から、『純粋小説論』(『改造1935年4月)を著し純文学リアリズムへの偏向批判し純文学リアリズム大衆小説創造性止揚である純粋小説概念説いた第二次世界大戦直後は、世相混乱背景に、太宰治坂口安吾石川淳らが無頼派作家として脚光を浴び野間宏武田泰淳らが戦争体験背景にした第一次戦後派作家として登場したまた、大岡昇平堀田善衛らの第二次戦後派作家は、本格的なヨーロッパ長編小説指向し従来私小説伝統とは一線を画し文学提唱した高度経済成長期には、戦後耽美派三島由紀夫カフカ不条理文学影響受けた安部公房サルトル実存主義影響受けた大江健三郎らの作家活躍した1956年芥川賞受賞した石原慎太郎の『太陽の季節』(1955年)は、賛否両論話題呼び芥川賞華々しい存在となるきっかけ作った石原三島マスメディア多く登場し作家タレント文化人化の先駆けとなったまた、安岡章太郎吉行淳之介第三の新人は、私小説伝統連なる短篇小説作品多く手がけ、私小説再評価つながった伊藤整は、『群像1961年11月に「『純』文学存在し得るか」を発表し、このことから純文学論争はじまった概ね20世紀前半には、大衆小説純文学を書く作家棲み分けなされていた。純文学出身ながら大衆文芸積極的に執筆した谷崎潤一郎永井荷風といった例は存在したものの、逆に大衆小説出身純文学進出した作家はほぼ皆無であった。しかし20世紀後半入ってからは、多く純文学作家SF推理小説伝奇小説などのジャンル小説の手法を取り入れ物語性追求した作品上梓する一方で井上ひさし筒井康隆らの大衆作家積極的に純文学の手法を用いるなど、両者区分極めて曖昧になりつつある。 団塊の世代主要な純文学作家としては、中上健次津島佑子村上春樹村上龍高橋源一郎らの名前が挙げられるポスト団塊の世代純文学作家では、島田雅彦山田詠美小川洋子多和田葉子川上弘美らが高い評価得ている。

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