批判側
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/06 15:08 UTC 版)
抗議のデモ行進をする学生団体(United Students Against Sweatshops) 詳細は「反グローバリゼーション」を参照 近年では、多国籍企業が海外進出してコストを削減して利益を増やす工程で企業のグローバル化に反対する反グローバリゼーション運動が起きている。搾取工場反対運動は反グローバリゼーション運動と多くの共通点がある。どちらも搾取工場を有害と考えており、搾取工場を利用していると多くの企業(ウォルト・ディズニー・カンパニー、GAP、ナイキなど)を非難している。これら運動の一部はネオリベラリズムのグローバリゼーションが搾取システムと同類だと非難し、多国籍企業が製造コストを更に下げようと低賃金国から別の低賃金国に高飛びするので「底辺への競争」が起こりやすくなっており、これは搾取仲介業者(sweaters)が最も低コストの下請け業者へと生産を切り替えていったのと同じ方法だと論じている。 様々な団体が、現在の搾取工場反対運動を支援または実行している。National Labor Committee(現:Institute for Global Labour and Human Rights)が搾取工場を主流メディアに持ち込んだのは1990年代、ウォルマート製品の衣類を縫うのに搾取工場と児童労働の利用があったとキャシー・リー・ギフォードによる暴露がされた時だった。United Students Against Sweatshopsは大学構内で精力的である。International Labor Rights Fundは、中国、ニカラグア、スワジランド、インドネシア、バングラデシュの労働者を代表してウォルマートを相手に訴訟を起こし、同社の行動規範に従っている間は満たすことが不可能な(特に価格と配達時間に関する)買取り方針を故意に作ったことを告発した。AFL-CIOなどの労働組合は、発展途上国の労働者と米国労働者の福祉の双方に対する懸念から、搾取工場反対運動を支援している。 社会批評家は、搾取工場の作業員が作るのはTシャツ、靴、おもちゃ等のありふれた商品であることが多いにもかかわらず、多くの場合その製品を買うための十分なお金を稼いでいないと不平を訴えている。2003年、ホンジュラスの衣料品工場の従業員には、ショーン・ジョンの50ドルのトレーナーにつき0.24ドル、長袖Tシャツ1枚につき0.15ドル、半袖シャツ1枚につき5セントと、小売価格の1%の半分にも満たない額が支払われた。国際的な生活費を比較しても、ホンジュラスの従業員が長袖のTシャツで稼いだ0.15ドルは、購買力で米国における0.50ドルと等しかった。人件費が安い国では、アメリカの店舗で50ドル以上の小売り額となるブラジャーが5-7ドルの価格で販売されている。2006年時点で、インドにいる服飾作業員の女性は1日あたり約2.20ドルを稼いだ。 反グローバリゼーション支持者は、高い貯蓄、発展途上国における設備投資の増加、輸出の多様化、貿易港としての地位、を搾取工場ではなく経済的成功の理由として挙げ、搾取工場が生活水準と賃金を低下させている場所として「アジア四小龍」の事例を数多く挙げている。より良い給料の仕事、設備投資の増加、資源の国内所有権、が搾取工場よりもサブサハラアフリカの経済を改善するだろうと彼らは考えている。彼らは、より裕福なサハラ以南の国々(モーリシャスなど)における強力な製造業輸出セクターを開発している良好な労働基準を指摘している。 反グローバリゼーション組織は、これら施設の一部従業員によって得られる僅かな収入が、利益率を高める目的の賃金引下げや同施設が作業員の日々の経費よりも少ない支払いをする等の負のコストよりも重要なのだと主張している。彼らはまた、搾取工場に税制優遇措置を与えた貿易自由化以前は、現地の仕事がより高い賃金を提供していケースも散見されたという事実を指摘した。さらに彼らは、搾取工場の仕事が必ずしも必然のものとは限らないと主張する。エリック・トゥーサンは、1982年の国際的な債務危機が発展途上国の経済に損害を与える前の1945-1980年までは発展途上国の生活の質が実際には高くて、IMFと世界銀行が組織した「構造調整」がそれを変えるきっかけだったと主張し、組合結成された仕事は全体的に搾取工場の仕事よりも多くを支払うと、以下の事例を挙げている。 「メキシコで米国企業のために生産する労働者の研究の幾つかは有益である。シウダード・アクニャにある米国アルミニウム企業の工場作業員は週に21.44-24.60ドルを稼いでいるが、基本的な食費を一週間まとめた額は26.87ドルである。メキシコのGM従業員は30分の仕事でリンゴを1ポンド(453g)買うのに十分な収入を得ているが、米国のGM従業員は5分で同じくらいの収入を得ている。」 搾取工場に批判的な人達は「自由貿易協定」が本当の自由貿易を促進するとは考えず、地場産業との競争から多国籍企業を保護しようと模索していると信じ込んでいる。自由貿易は関税や参入障壁の削減のみを伴うべきで、多国籍企業は現地の環境法や労働法からの免責を模索するのではなく事業したい国の法律の範囲内で活動すべきだ、と彼らは考えている。これらの状況が、自然な工業化や経済発展ではなく搾取工場を増やすことになると彼らは考えている。 中国など一部の国では、これら施設が従業員の賃金を保留することも珍しくない。 .mw-parser-output .templatequote{overflow:hidden;margin:1em 0;padding:0 40px}.mw-parser-output .templatequote .templatequotecite{line-height:1.5em;text-align:left;padding-left:1.6em;margin-top:0}香港の労働団体によると、何らかのサービスと引き換えに賃金を制限する管理者によって最大3億6,500万ドルが保留され、あるいは一切支払われない。 さらに、搾取工場を擁護する西側の人々は西側政府によって敵または敵対的とみなされる国の搾取工場の労働条件に不平を言いつつ、一方で依然として輸出を喜んで消費しながらその品質に文句を言うダブルスタンダードを見せる、と反グローバリゼーションの支持者は主張している。彼らは、多国籍企業の仕事が国際的な労働法や環境法、西洋で行うビジネスと同じく最低賃金基準に従って運営することが期待されて然るべきだと主張する。 労働歴史家のエリック・ルーミスは、金メッキ時代に米国の労働者が直面した状況が発展途上国(欧米企業が搾取工場の労働を利用している場所)で再現されている、と主張している。特に、1911年ニューヨークでのトライアングルシャツウエスト工場火災と、2013年バングラデシュでのラナプラザ崩壊を比較している。前者は最終的に職場の安全だけでなく、最低賃金、八時間労働制、労災補償、社会保障、大気汚染防止法、浄水法に関する改革も推進する政治活動に国民を奮い立たせた、と彼は主張する。米国企業は、そうした保護が存在しない発展途上国に生産を移すことで対応した。ルーミスは以下のように説明する。 そこで2013年にバングラデシュのラナプラザで1100人超の労働者が死亡した時、それはトライアングル火災と同じ産業で、アパレル企業はトライアングル火災みたいに職務責任を回避するため同様の生産下請けシステムを備え、同じく若くて貧しい女性の強制労働力、同じタイプの残酷な上司、そしてトライアングル火災と同じく酷い作業場の安全基準を備えていた。違いとしては、我々の大半がバングラデシュを地図上で見つけることさえできないことである。この生産と消費の分離は、自分達の行動について消費者から責任を負わされることをまさに回避するための、企業による意図的な動向である。そして、それは非常に効果的である。
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