幻想曲とフーガとは? わかりやすく解説

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幻想曲とフーガ

英語表記/番号出版情報
リスト:幻想曲とフーガ(バッハFantasie und Fuge S.463 R.120
モッテンセン:幻想曲とフーガFantasy and Fugue Op.13作曲年1958年 
ポッター, チプリアーニ:幻想曲とフーガ ハ短調Fantasia and Fugue in C minor Op.27作曲年1818年  出版年: c1830年  初版出版地/出版社Bonn

バッハ:幻想曲とフーガ イ短調

英語表記/番号出版情報
バッハ:幻想曲とフーガ イ短調Fantasie und Fuge a-Moll BWV 904出版年1839年  初版出版地/出版社Peters 

作品概要

楽章・曲名 演奏時間 譜例
1  Fantasia3分00 No Image
2  Fugue4分30秒 No Image

作品解説

2007年9月 執筆者: 朝山 奈津子

 大規模なヴィルトゥオーゾ・フーガのひとつ。バッハ最後弟子一人、J.C.キッテル筆写譜などに伝えられるそれ以前資料ではファンタジアフーガ別々に現れるため、これらを対にしたのはキッテルだった可能性もある。成立年不明だが、曲の様式古風である。
 ファンタジアでは、12小節に及ぶリトルネッロの間に、リトルネッロから取り出した主題展開されるリトルネッロ冒頭終結はまった同形だが、間の2回は移調装飾加えた形で現れる声部書法はかなり自由で、リトルネッロでは4声以上、エピソード展開部分)では概ね3声だが、和音加えて音の厚みを増すことには何ら躊躇見られない。しかしそれでもこの曲がきわめて古い響きを持つのは、協奏曲風の対比原理がまったく働いていない上、全声部参加する完全終止定型リトルネッロ以外の所で容易に成立しないことにある。全体はどこかの声部の掛留音によって常に休みなく続く。こうした厳粛な雰囲気は、オルガン用作品を思わせるまた、協和音中心和声進行哀調帯びた透明感のある響き生み出す。それは、半音階による直截的感情表出ではなく表面上は落ち着き保ちながらも慟哭秘めた王者哀しみである。
 フーガ3部分に分かれ対照的な2つ主題を持つ。前半後半始まりそれぞれの主題提示第3部、すなわち後半後半部分で2つ主題組み合わせた展開が行われる。対主題反行形転回交えてかなり複雑な対位法技巧駆使され、全体概ね4声を維持し、そのため響き重厚になる。演奏に際しては、声部明快な弾き分けのみならず、手の交差幅の広い音程など高い要求なされるが、2つ主題対比織り成す緊張感二重フーガ醍醐味であり、とりわけ演奏する者にとって充実感のある作品である。


バッハ:幻想曲とフーガ イ短調

英語表記/番号出版情報
バッハ:幻想曲とフーガ イ短調Fantasie und Fuge a-Moll BWV 944作曲年: 1707-13年  出版年1829年  初版出版地/出版社Peters 

作品解説

2007年9月 執筆者: 朝山 奈津子

 《アンドレーアス・バッハ本》所収。ヨハン・アンドレーアスはバッハの甥。バッハ長く師事した兄ヨハン・ベルンハルトの楽譜帖を受け継ぎ1754年という年とともに記名したもので、現在はライプツィヒ市立図書館所蔵する冒頭10小節の〈ファンタジア〉は、この資料にのみ現れる。このアルペジオについては、たとえば《半音階的幻想曲BWV 90328小節前半 においてバッハ実際に示した奏法参考になる。また、F. リストは独自のリアライゼーションを校訂譜において披露している。(リスト編曲は現在でも入手可能である。)バッハは時々、簡略な和音のみを記して奏者補完促すような書き方をしたが、大抵は《半音階的幻想曲》のように解法添えたこのように何ら指示もないのはきわめて珍しい。また、アンドレーアス・バッハ本以外の資料ではこの部分省いてフーガのみが書き写されている。バッハはおそらくこの状態を最終的な完成稿とは考えていなかったのだろう。10小節分の和音が、あるいは本格的な前奏曲スケッチだった可能性もあるし、単に即興演奏ヒント書きつけたのかも知れない
 フーガヴィルトゥオーゾ的な効果の高い、長大作品である。全体は以下のような論理的な構成を持つ。主題提示イ短調)-展開(ホ短調)-展開(ニ短調)-展開(ハ長調)-再現部主題提示ホ短調-イ短調)-展開-コーダ前半部の最初の展開(ホ短調)は徐々に音域高まり次の展開(ニ短調)では幅広く中音域を維持し三度目の展開(ハ長調)でまた徐々に低くなる再現部コーダそれぞれ2オクターヴ半もの下行アルペジオ区切られる再現部属調主題バスから始まり全体音域低くなったところで、待ち望まれ主調主題高らかに開始する以後の展開は、主題断片を短い周期でつなぎ合わせ和声くるくる変化しコーダ冒頭主題提示準備する。ここが主題としては全曲通じて最高の音域となる。コーダでも高音低音往復し主題を再提示して終結するこうした音域移動は、チェンバロ複数鍵盤使い分けるなら、立体的な効果望める。現代ピアノでは、音域ごとの音色強弱変化注意しなければならないが、展開部分の掛留を使った掛け合いは、ピアノこそ得意とする語法である。16分音符休みなく続き速く弾け華麗な技巧誇示することができようし、ゆっくりとフーガにしては珍しい3拍子進めれば和声変化を楽しむこともできる


バッハ:幻想曲とフーガ ニ短調

英語表記/番号出版情報
バッハ:幻想曲とフーガ ニ短調Fantasie und Fuge d-Moll BWV 905

作品解説

2008年5月 執筆者: 朝山 奈津子

 シェルブレ=グライヒアウフ写本伝えられる作品詳細は《前奏曲とフーガ イ短調》BWV897参照)。様式から真作であるかどうか疑われている。
 特にフーガは、声部書法対位法未熟3度6度進行多用が目立つ。そのため、テクスチュア変化乏しく響き奥行きがない。また調推移も平凡で、遠隔の調が現れない。常套句連ねて全体運んでいくので、冗長に感じられてしまう。が、バッハ初期作品には、この種の単調な展開が時に見られる
 一方ファンタジア冒頭優美なナポリ六の和音Es音)が鳴り、掛留と溜息動機組み合わせゆるやかに進む。こうした様式イタリア様式ドイツ音楽家模倣したものと考えられる。すなわち、18世紀初頭典型のものである
 どちらの曲も、バッハ真作性を否定する決め手はない。が、本当作者が誰であれ、とりわけフーガは、その長大規模満足させる出来映えとは言い難い


バッハ:幻想曲とフーガ ハ短調

英語表記/番号出版情報
バッハ:幻想曲とフーガ ハ短調Fantasie und Fuge c-Moll BWV 906作曲年: 1729-38年  出版年: 1802-03年  初版出版地/出版社Hoffmeister & Kühnel 

作品解説

2007年9月 執筆者: 朝山 奈津子

 2種類自筆譜が残る。そのうちドレスデン伝えられるものにはフーガ途中まで書き込まれている。曲集や音楽帖の体裁とっていないため、バッハがこの曲にどのような計画持っていたのかは判らない。《平均律》第II巻組み入れようとした可能性もあり、実現しなかったのは、この曲の華やかな雰囲気ゆえかも知れない
 全体二部分かれ整然とした形式持っている両手分散和音動機がX字型を描くきわめて魅力的な主題で始まる。この4小節主題現れるたびに音が増えていく。(このような主題労作の手法を「紡ぎ出し」と呼ぶ。)前半後半部分は手の交差起こり鍵盤の上でもX字が描かれることになる。5度音で開始する後半では、X字となるはずの各素材がさまざまに組み替えられる。手の交差セクション経て主調主題再現するこうした流れは、提示-展開-再現ソナタ形式似ている実際後世ソナタと同様、再現部の手前に5度調であるト短調領域に留まって、再現準備するような部分がある。(一般にはこうしたものを推移部と呼んでいる。)
 この曲のもうひとつ特徴は、半音階である。しかし、他のバッハ作品みられるような苦悩表現満ちた悲愴感はここには表れない。それはおそらく主題がもつ坦々としたリズムによるのだろう。
 続くフーガは、半音階による短い主題さりげなく始まるが、徐々にスピード感を増し16分音符の走句とオクターヴ超える跳躍組み合わせたダイナミックな展開部分へと進む。ドレスデン自筆譜は、走句と主題結合したところで途切れている。なお、第5小節再現記号、第35小節フェルマータ終止記号書き込まれていることから、ダ・カーポによる大規模な構想があったことがわかる。この曲が完全な形で残っていないのは実に惜しまれる


幻想曲とフーガ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2015/09/26 02:29 UTC 版)

幻想曲とフーガ(けんそうきょくとフーガ)と題する楽曲は数多く存在する。




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