慟哭
「慟哭」とは、悲しみによる号泣のことを意味する表現。
「慟哭」とは・「慟哭」の意味
「慟哭」とは、悲しみに耐えきれず激しく泣くことを意味する言葉である。慟哭の「慟」とは「声をあげ、身を震わせてなげく」という意味で、「哭」とは「声をあげて泣き叫ぶ」の意味となる。慟も哭も、ともに悲しみの感情に起因しており、「歔欷」のように静かな泣き方ではなく、感極まった激しい泣き方をさしていう。「慟哭」と同じように使われる言葉に「号泣」があるが、慟哭が悲しみのあまり激しく泣くことをいうのに対して、号泣は、激しく泣くという行為そのものをさす。そのため、号泣はうれしくて泣く場合にも使用できる言葉であり、泣く原因が特定されていないという点で慟哭との違いがある。
この「慟哭」は、泣くという人間の根源的な感情を表現する言葉として、文学作品や歌の歌詞などにも頻繁に使用される言葉である。中でも高校の国語の教科書に教材として採用される頻度の高い中島敦の中編小説「山月記」には、慟哭が作品の重要なキーワードとして使われている。過剰な自意識を制御することができず、人の心を失って虎になってしまった主人公が、宿命的な苦悩にあらがえない存在の不条理を嘆く場面で、やり場のない悲しみを表出した象徴的な行為として、慟哭が用いられている。「言終って、叢中から慟哭の声が聞えた。」がその描写である。主人公は、人間の宿命を嘆き切った後、ついに人としての心を失くす。その変化が「慟哭」から「咆哮」へと主人公の行為が移り変わることで印象的に描かれている。咆哮とは、猛獣が吠えたけることである。慟哭が嘆き悲しむ人間の根源的な感情であるとすれば、咆哮とはもはや人間性を失った単なる野獣の雄たけびである。「山月記」のラストでは「虎は、既に白く光を失った月を仰いで、二声三声咆哮したかと思うと、又、元の叢に躍り入って、再びその姿を見なかった。」とその咆哮のさまが描かれており、人間性が完全に消え去ったことを暗示して悲しみの余韻を残す。
「慟哭」は、この小説以外に、作家・貫井徳郎の小説のタイトルでもある。また、シンガーソングライターの中島みゆきが作詞して歌手の工藤静香が歌う歌のタイトルとしても用いられている。
「慟哭」の読み方
「慟哭」は、「どうこく」と読む。「慟哭」の熟語・言い回し
慟哭へのモノローグとは
「慟哭へのモノローグ」とは、歌手の高橋洋子が歌う歌のタイトルで、2010年に発売された自身の23枚目のシングルである。パチスロ「新世紀エヴァンゲリオン 〜魂の軌跡〜」のテーマソングとしても知られている。
慟哭するとは
「慟哭する」とは、悲しみに身もだえて激しく泣くことで、今まさにその泣き方をしているという動作を表している。
「慟哭」の使い方・例文
「慟哭」の例文としては、文学作品に「なにものももうわたしで終り、なにものももうわたしから始らないのかとおもうと、わたしのなかにすべての慟哭がむらがってくる(原民喜「鎮魂歌」)」、「その詩はすこぶるセンチメンタルなものであって、死を憧憬し、悲恋を慟哭する表現がいかに少女の情緒にも、誇張に感じられた(岡本かの子「河明り」) 」、「兄弟は、その夜三条小橋の宿屋で、相擁して慟哭した(菊池寛「仇討三態」) 」などが見られる。また一般的な使い方としては、「弟子の顔淵が死んで、孔子が慟哭したことが論語に描かれている」、「最愛の人と死別して、彼は慟哭した」、「私は生れて初めて、父がこんなに慟哭する姿を見た」、「ダムに沈んだ故郷を見て、慟哭の思いにかられた」、「うれしくて慟哭したという言葉の使い方は適切ではない」、「慟哭の反対の熟語としては、すすり泣くという意味の歔欷が適切である」、「慟哭と似た言葉に、号哭がある」などを挙げることができる。
慟哭
慟哭とは、慟哭の意味
慟哭(どうこく)とは、悲しみに耐えきれずに声を上げて泣くことである。慟哭の「慟」の字は身体を上下に動かして悲しむという意味があり、「哭」の字は大声で泣くという意味がある。慟哭は、特に悲しみの感情が大きいときに使われる言葉である。慟哭という語そのものに悲しみの感情や泣く意味が含まれているため、「悲しみのあまりに慟哭する」といった使い方は重複表現となり誤った表現である。慟哭の類義語
慟哭の類義語には「号泣(ごうきゅう)」や「哀哭(あいこく)」などが挙げられる。「号泣」は大声をあげて泣くこと、「哀哭」は声をあげて嘆き悲しむことを意味し、いずれも激しい感情を表現する際に使われる。「慟哭」「哀哭」が悲しみを表現する際に使われるのに対し、「号泣」は悲しみ以外に喜びを表現する際にも使われる。人が泣くときに「嗚咽(おえつ)」という語も使われることがあるが、この語は声をおさえて泣くことを意味するので、「慟哭」「哀哭」「号泣」より落ち着いたニュアンスである。
慟哭の対義語
慟哭の対義語には「哄笑(こうしょう)」が挙げられる。慟哭が声をあげて泣くことであるのに対し、哄笑は声をあげて笑うことを意味する。慟哭の使い方、例文
慟哭
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/11/02 08:48 UTC 版)
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- 慟哭 (工藤静香の曲) - 工藤静香のシングル曲。
- 慟哭 - 陰陽座の曲。シングル「相剋/慟哭」に収録。
- 慟哭 (映画) - 1952年の日本映画。
- 慟哭 そして… - 1998年に発売されたセガサターン用ゲームソフト。
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