少女編(第1回〜第36回)
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「おしん」の記事における「少女編(第1回〜第36回)」の解説
物語は明治40年(1907年)の春、明治も終わりにさしかかった山形の貧しい小作の娘・谷村しんの少女時代から始まる。おしんの家は父・作造、母・ふじ、祖母・なか、兄・庄治、既に年季奉公に出ている姉・はる、みつ、そして弟・正助、妹・こうにおしんを入れて9人家族だった。その年、数え年で7歳になるおしんは、4月から尋常小学校へ通うのを楽しみにしていた。しかし家はここ数年の凶作と地主への借りも積り、食事は大根飯で食いつなぐ貧しい生活だった。 作造は口減らしのためにおしんに奉公に出るよう命じる。おしんは嫌がり、ふじとなかはおしんがまだ7つだと反対する。だが、おしんはなかがおしんのために食事の回数を減らしていたのを知る。後日、おしんはふじが冷たい川に入っていくのを見て助けを呼ぶ。ふじは引き上げられるがそれは堕胎のためだった。おしんはこれから生まれる子のために1年奉公に出ることを承知する。口入れ屋・源助が年季奉公の前払いとして米一俵 を届けてくる。奉公に出る日、なかはおしんにこっそり50銭銀貨 を渡す。最上川を材木問屋の奉公人定次の筏で下る途中、堤防の上を走っておしんを追いかける作造が泣き崩れる姿を目撃し、おしんは父も苦しんでいることを知る。 左澤町の中川材木店で、おしんは店の主人の軍次の子・武の子守をする。おしんのお目付け役である材木店の奉公人つねは厳しく、ここでも大根飯、雪降る中で川でおしめを洗う辛い奉公生活だった。ある日、尋常小学校を覗いたおしんは授業をしていた松田先生と出会う。松田は夕方中川材木店を訪ねて来て、軍次ときんにおしんを小学校に来させるように説得。軍次は子守りを承知でならと承諾する。おしんは喜ぶが、つねは反対し、おしんを昼飯抜きにする。おしんはそれでも学校へ通う。見かねた松田はおしんに昼飯を持ってくる。しかし同級生たちは松田の贔屓を快く思わずおしんをいじめる。武への危害を恐れおしんは学校をやめる。 定次から上流から筏を流すついでに谷村家にお使いに行ってやると言われたおしんは習い覚えたカタカナで手紙を出す。定次は字の読めないふじとなかに手紙を読み聞かせる。おしんは心配させぬよう辛いことは一切書かず、腹一杯食わせてもらっていると嘘を書いた。町では憲兵が脱走兵を探し回っていた。ある時、つねの財布から50銭銀貨がなくなり、疑いをかけられたおしんは首にかけた守り袋に入れていた50銭銀貨を取り上げられてしまう。辛抱の糸が切れたおしんは川の上流にある実家に向かい吹雪の中を歩き出す。 気がつくとおしんは見知らぬ青年に抱かれていた。猟師の俊作が吹雪の中行き倒れとなっていたおしんを見つけ、体を温めてくれたおかげで、おしんは凍死を免れる。ゆくあてのないおしんは、俊作と炭焼き・松造が暮らす月山が見える山小屋に春まで厄介になることになる。203高地で負った銃創が原因の高熱で倒れた俊作をおしんは懸命に看病する。回復した俊作はおしんに読み書きや算術を教える。おしんにせがまれ、俊作は与謝野晶子の詩、『君死にたまふことなかれ』を朗読し、戦争の残酷さ、反戦を説く。 おしんが失踪してから20日。つねの財布から50銭銀貨を持ち出したのは軍次だったと判明するが、つねはおしんが家に逃げ帰ったと思い、源助を呼びつけると前払いの米一俵の回収と50銭銀貨の返却を依頼する。源助から銀貨を渡されたふじはおしんが死んだと思い悲しむ。 おしんは毎日腹いっぱい食べ、勉強できる幸せな日々を送っていた。春が来ていよいよ家に帰ることになるが足をくじいた松造にかわって、普段人前に出ない俊作がおしんを連れて山を下りる。途中、おしんは俊作から愛用のハーモニカをもらうが山狩りの兵隊に嫌疑をかけられて際に抵抗した為、俊作は兵士に射殺されてしまう。おしんは憲兵の取り調べで俊作が脱走兵として追われる身だったことを初めて知る。ようやく家に帰ったおしんにふじとなかは喜ぶが作造は激怒、兄の庄治も村で白い目で見られると愚痴る。後日、松造はおしんをこっそり訪ね俊作の身の上を話したあと去っていった。家では妹のすみが生まれていた。 年季奉公の明けたはるが家に戻ってくるが、すぐに製糸工場へ勤めに出た。次の奉公先が決まらないおしんははるがくれた小遣いで買った石盤でこっそり字の練習をする。その年も凶作で生活に行き詰まった作造は一家でブラジル移民を決意するが、年老いたなかは置いていくという。悲観したなかは川へ身投げしようとするが、おしんに止められ移民の話は立ち消えになった。そこで乳飲み子の末妹すみを養女に出し、ふじが銀山温泉へ働きに出ることになる。おしんはふじに代わって村の共同作業である杉の木の苗植えをする。 りきが子守り奉公の話を持ってくる。奉公先は酒田の米問屋・加賀屋で2年で米5俵。だという。おしんは再び奉公に出ることを決意するが酒田に行く前に銀山温泉で働くふじに会うことを望み、家族に黙って銀山温泉に徒歩で向かう。酌婦になっていたふじはおしんの訪問に驚くが、宿の女将の心配りもあって母子で一夜を過ごす。翌朝、おしんはふじに似ているこけしを譲ってもらい旅立つ。酒田の加賀屋に着いたが、跡取り息子の嫁である若女将みのはまだ加賀屋の事実上の主人である大奥様のくにに子守の雇用に関する許可を得ておらず、困惑しておしんを帰らせようとするがおしんは実家の窮状を訴えてなんとしても奉公させて貰えるよう哀願する。その話にほだされたくにはおしんを奉公人として迎え入れ、みのの末娘小夜の子守りをさせる。おしんの働きぶりにくには感心し、同い年の孫娘・加代の教育に利用する。 ある日、おしんは加代の部屋にあった美しい絵本に魅入られて持ち出してしまう。読んでいたところを加代に見つかってしまい、清太郎とみのに盗人扱いされるがくにはおしんの見事な朗読を聞いておしんが字が読めることを知り、”読んでみたかっただけで盗みの意思が無かった”ことを信用し、勉強嫌いの加代を逆に嗜めた。だが、その後清太郎とみのは街で聞いてきたおしんが奉公先から逃げ出し脱走兵と暮らしていた過去を知り、更に不信感を抱く。 おしんは俊作の形見であるハーモニカを取り上げようとした加代と取っ組み合いの喧嘩になり、加代に怪我をさせてしまう。くにはおしんが居なくなることを惜しんだが、加賀屋の中で完全に庇うことが出来る筈も無くおしんを暇を出すことに決め、別の奉公先を見つけてくる。おしんは解雇されることを覚悟し、加代への詫びの気持ちとしてススキの穂で作ったミミズクを託す。ミミズクを受け取った加代はその出来栄えと、銭でハーモニカを譲らなかったおしんの高邁な自尊心に思い至り、おしんをどこにもやらないでくれとくにに懇願する。 加代はおしんに心を開くが、みのと清太郎は訝(いぶか)しむ。加代はくににおしんも学校に行かせて欲しいとねだるがくには奉公人のおしんには仕事があると断る。その代り子守奉公の仕事が終わった後、くにはおしんに寺子屋仕込みの手習いや算盤を教えはじめ、加代も一緒に手習いをするようになった。だがみのからは奉公人の分を超えていると嫌味を言われ、居たたまれなくなったおしんはくにに辞退を申し出るが、「いつか独り立ちして、貧乏から抜け出すには、読み・書き・算盤(そろばん)くらいは出来ねえと」と諭されて続けることになる。 酒田にも送電が行われることになり加賀屋に電気を通すための工事が行われるが電信柱が建てられる途中で柱が倒れる。工事を見ていた加代は危うく倒れた柱の下敷きになるところをおしんが自身の身を挺して庇い、事無きを得る。足がすくんで何もできなかったみのはおしんの勇気と機微に感激し、以後、おしんを実の娘同様に可愛がるようになる。 正月を迎え、9歳になったおしんは加代とお揃いの晴着で初詣に行く。そこで酌婦になったふじが客の男といるのを見かける。その夜、加賀屋の近くに不審な女がいると聞いたおしんは外に出てふじと再会する。くには陰から一部始終を見届け、家に戻りひっそり泣くおしんを慰める。その後もおしんは傲ることなく奉公人として勤め、加賀屋になくてはならない存在になっていった。加代が洋服を買ってくれなければ学校に行かない、買うまで飯は食わないと我儘を言う。くにはおしんに大根飯を炊かせ、加代とおしんに食べさせる。大根飯を食べた加代はおしんを始めとした百姓の困窮を知って以降、我儘をやめる。 ひな祭りの祝いにりきが顔を出す。なかが危篤と聞いたくには、おしんに米一斗を持たせ、急ぎ家に帰らせる。なかはおしんの炊いた白米粥を食べてそのまま息を引き取る。野辺の送りに歩くおしんは、家族のために働きづめで死ぬような女にはならないと誓う。なかが布を織って貯めた50銭銀貨を形見に貰い、おしんは加賀屋に戻っていく。
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