宣伝、広告の禁止
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/06 08:51 UTC 版)
法83条1項に基づいて、広告放送(他人の営業に関する広告の放送)の禁止が規定されており、定款51条にも広告放送の排除が謳われている。一方で法83条2項では「放送番組編集上必要であつて、かつ、他人の営業に関する広告のためにするものでないと認められる場合において、著作者又は営業者の氏名又は名称等を放送することを妨げるものではない」とも規定しており、必ずしも企業名や商標等の放送が、一律に禁じられている訳ではない。 「放送禁止#日本における放送禁止の対象」も参照 これについて、取材・政策の基本姿勢を示した『NHK放送ガイドライン』 では、放送で企業名などを扱う場合に、以下の観点を放送是非の判断基準として、さらに企業名の出し方や出す回数を工夫するなど、宣伝・広告と受け取られないような配慮を行い、テレビCMや雑誌のキャッチコピー、流行語などは、安易な使用や連呼に注意することが示されている。 本質的に必要なのか、その他の表現に置き換えることはできないのか 視聴者の理解を助けることになるか ライバル企業などから見て、著しく不公平ではないか 構成や演出上やむを得ないか つまり、特に消費者を保護する必要がある、または実名を出さないと番組の企画意図や伝えるべき内容が正しく伝わらない場合に限り、NHKであっても企業名と商品名を正確に伝えるというのが原則になっている。これらの観点から、特に以下の事象については、それぞれ個別の取り扱いが定められている。 固有名称、登録商標 特定の商品、サービス(役務)の固有名称を、一般名と誤認して放送すると宣伝につながるおそれがある。 登録商標は一般に固有名詞であることが多いが、逆に、登録商標に含まれている名称であっても、一般名に過ぎないこともある。一例として、2016年8月27日放送の『お試しジャパン』でカプセルトイ「コップのフチ子」を手掛ける奇譚クラブを特集した際、製品の「コップのフチ子」が「OL人形」として紹介されたことから、商標を一時的に「OL人形」に変更する事態が発生している。 『NHKニュースおはよう日本』のコーナーの「まちかど通信」は、放送では商品名を隠して特徴だけを紹介し、会社と商品名は、番組の公式ウェブサイトやFAXサービスを通して紹介される措置をとられている。 Twitter、Instagram、LINEなどのSNSについては、競合サービスがあるものの、番組とSNSとの連動企画に関しては、各サービスの名称をそのまま使用している。視聴者に伝えるための都合上による例外的措置。 企業名については「自動車メーカー」などの表現を使いつつ、インタビュー中に会社のロゴを背景に入れるなどの手法を用いている。複数の企業が競う番組『魔改造の夜』では、チーム名(会社名)が連呼されるシーンがあるため『N産(エヌサン)』などぼかした表記と呼称を使っている。 地域団体商標制度 地域ブランド保護を目的に、広く知られた商品やサービス(役務)(例として「○○りんご」「○○牛」「○○織」(○○は地域の名称)などが挙げられている)を事業協同組合などが「地域団体商標」として商標の登録を認める制度であるが、特定の企業や個人の宣伝・広告に直結するとは考えにくいため、一般名として扱って良い。 施設命名権、冠大会 施設や大会の名称である以上、放送に使用することはやむを得ないが、名前の一部に企業名などが含まれているため、ニュースや番組の中では繰り返しを避けて、抑制的に名称を用いる。企業名などを除いた名称が定着している場合には、企業名などを除いた名称を使うこともある。具体例として、大相撲春場所が行われる大阪府立体育会館(命名権名称「エディオンアリーナ大阪」)と名古屋場所が行われる愛知県体育館(命名権名称「ドルフィンズアリーナ」)は、大相撲中継において「企業名などを除いた施設名が定着している」扱いとして正式名称で報じている。 その他のスポーツ中継(サッカー・バスケットボールなど)では会場に命名権名称が用いられている場合もそのまま放送し(B.LEAGUEなどでの上記2会場からの中継を含む)、報道(スポーツニュース)では会場の都市名のみを報じている。 スポーツの試合における広告 会場内の広告看板や選手のユニフォームに記載された広告については「必要以上にアップで撮ることは避ける」などの工夫をする。 それらに該当しないものも同様で、実写映像における企業名・商品名ロゴ・ポスター広告の写り込み(公共交通機関のラッピング広告など)程度は広告放送とみなしていないため、原則として隠していないが、画面に出てしまうことは避けられないとして、過度にならないようにする。但し、NHKが定めている放送ガイドラインに抵触する広告が頻繁に画面に映り込む可能性が高い場合は放送自体を取り止める場合もあり、実際に2021年12月にNHK BS1にて放送予定だった『カーリング 北京オリンピック世界最終予選』について、成人向け商品を販売している企業が同大会のスポンサーになっていることが放送直前に判明し、「同ガイドラインの『品位と節度を心掛けること』並びに『青少年への影響に配慮すること』に抵触する可能性がある」として、オランダからの生中継を一旦中止にしたケースがある。その後、該当企業の広告を別の広告に差し替えたことから同大会の中継を再開することを発表した。 ウェブサイトを紹介する際も、ウェブブラウザ用の広告を削除するソフトウェアを用いるなどして、画面上に表示されるバナー広告が入らないようにする。テレビアニメ『TIGER & BUNNY』では、民放用に製作されたため、プロダクトプレイスメントの一環で登場人物がスポンサー契約を結んでいるという設定で実在の企業ロゴが頻繁に登場するが、NHK BSプレミアムでの放送の際、企業ロゴが架空のものに変更された日本国外版の映像を日本語音声のみの放送をすることで対処した。 公式映像のスコア表示に企業ロゴが入っても、技術的な理由で差し替え出来ない場合は、上記の「実写映像への映り込み」に準じた解釈でそのまま表示する。一例として、拠点局以外の地域でのJリーグ中継のローカル放送では、Jリーグ制作の公式映像をスコア表示ごと流用することがあるため、その場合は、結果的にスコアテロップやVTR切り替えCGに入っている冠スポンサーの『明治安田生命』のロゴが表示される。 曲名・歌詞の変更 かつては、放送法83条1項の規定を厳格に適用して、番組内で歌唱される楽曲の歌詞から商標などに相当する語を差し替えた、以下のような事例がある。 山口百恵『プレイバックPart2』-「.mw-parser-output ruby.large{font-size:250%}.mw-parser-output ruby.large>rt,.mw-parser-output ruby.large>rtc{font-size:.3em}.mw-parser-output ruby>rt,.mw-parser-output ruby>rtc{font-feature-settings:"ruby"1}.mw-parser-output ruby.yomigana>rt{font-feature-settings:"ruby"0}真紅(まっか)な『ポルシェ』 ⇒「真紅な『クルマ』」(企業名)1978年第29回NHK紅白歌合戦のトリでの歌唱では、オリジナル通り「真紅なポルシェ」。 松本伊代『センチメンタル・ジャーニー』-「『伊代』はまだ16だから」 ⇒「『わたし』まだ16だから」(個人名) 庄野真代『飛んでイスタンブール』-「そんな『ジタン』の空箱」 ⇒「そんな『煙草』の空箱」(商品名) かぐや姫『神田川』-「24色の『クレパス』買って」 ⇒「24色の『クレヨン』買って」(商標)かぐや姫はこれを拒んだため、第24回NHK紅白歌合戦の出場を辞退している。第43回NHK紅白歌合戦では、そのままの歌詞で歌われた。 B.B.クィーンズの『おどるポンポコリン』は、「キヨスク」という店名が差し替えなしで歌われている。 ただし、1990年代頃から「芸術作品の放送にあたっては、国内番組基準をふまえて、番組の責任者が個別に判断する」との方針に基づき、歌詞の差し替え事例は無くなっている。一例として、aikoの『ボーイフレンド』には「『テトラポット』のぼって」と、消波ブロックの商標名を使った歌詞が登場するが、歌詞の差し替えは行われなかった。松平健の『マツケン』をタイトルや歌詞に含む曲も同様に差し替えずに歌われている。いきものがかりの『SAKURA』も歌詞の中に「小田急線」の歌詞の差し替えずに歌われた。グループ魂は第56回NHK紅白歌合戦で広告禁止のルールを逆手に取ったギャグを、審査員の琴欧州の協力を得て披露した。瑛人の『香水』の歌詞に登場する「ドルチェ&ガッバーナ」も歌詞の差し替えは行われていない。 なお、曲名については企業名や商標などに相当する語の差し替えは継続しており、2021年に死去した伊藤アキラと小林亜星が手がけた『日立の樹』をNHKニュースで紹介する際に曲名に企業名(日立グループ)が入っているため、「『この木なんの木』の歌いだしで知られるCMソング」として、曲名を伏せた上で報じている。 テレビドラマやドキュメンタリー 番組で特定の企業を扱うことに関しては、連続テレビ小説において、2014年秋の『マッサン』以降、『あさが来た』『とと姉ちゃん』『べっぴんさん』『わろてんか』『まんぷく』と、企業の創業者をモデルにした作品が続いているとの指摘があるが、プロデューサーの遠藤理史は「制作過程で企業を利することが想像されても、それを超える公共的理由があり、多くの方が楽しめるなら作る意義はある」と説明しており、番組内では登場人物の名称や設定を変更した「史実に基づいたフィクション」とすることで対処している。 このような、番組で特定の企業を取り上げる傾向は、2000年に放送開始された『プロジェクトX〜挑戦者たち〜』が転機になったという指摘がある。詳細は「プロジェクトX〜挑戦者たち〜#概要」および「連続テレビ小説#傾向」を参照
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