国際機構法とは? わかりやすく解説

国際機構法

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/27 06:16 UTC 版)

国際法」の記事における「国際機構法」の解説

「国際機構法」あるいは「国際組織法」とは、国際組織政府国際組織)(international organizations)に関する国際法一分野である。国際組織とは、条約によって設立され、共通の目的有し、それを達成するための常設機関持ち加盟国独立した法人格有する国家集まりをいう(1975年国家代表に関するウィーン条約1条)。国際組織法最大特徴は、国際組織生きた組織として変わりゆく国際情勢対応するために、設立当初創設者意思から離れてでも、動態的目的論的解釈とられる点にある(「黙示的権能」implied powers)(「武力紛争中の国家による核兵器使用合法性国際司法裁判所勧告的意見、C.I.J.Recueil 1996(I), p.79, par.25)。 国際組織法は、内部法と外部法分けられる内部法とは、その国際組織内部運営表決制度予算決定など)を規律する法の総体をいい、外部法とは、その国際組織対外的活動規律する法の総体をいう。本項では、現代主要な国際組織である国際連合中心に述べる。 内部法として、まず、表決制度がある。決議成立方式としては、一般に全会一致多数決コンセンサスなどがある。国際連合総会決議は、重要問題除いて出席し投票する加盟国三分の二多数)、出席し投票する加盟国過半数成立する国際連合憲章18条)。国際連合安全保障理事会決議は、「常任理事国同意投票を含む九理事国賛成投票」で成立する27条)。慣例により、常任理事国の「棄権」は決議成立妨げないとされている。しかし、27条を文言通り解釈すれば棄権は「同意」ではないので、決議成立妨げるはずである。よって、これについては、法的には、棄権についての規定欠缺していたとか、暗黙のうちに憲章改正されたとか説明する他はない。EUでは「共同体法」(EU法)に属す分野について、加重投票制度が行われている。また、世界銀行でも加重投票議決される。 予算決定については、国連総会によって派遣されONUCコンゴ国連軍)及びUNEF国連緊急中東軍)(いわゆるPKO)への支出国連憲章172項にいう「この機構経費」に当たるのか争われた。国連憲章上、PKO明示的に認められていない。これに関して1962年国際連合特定経費憲章172項)」として国際司法裁判所勧告的意見下された裁判所は、172項文言憲章全体構造総会安保理与えられそれぞれの機能照らして解釈するとし、ONUCUNEF活動国連主要目的である国際平和と安全の維持合致することは、継続的に国連の諸機関によって認められてきたことによって示されているとし、当該支出は「この機構経費」にあたると判示した(I.C.J.Reports 1962, pp.167-181)。この勧告的意見理由付けに対しては、批判もある。 国際機構で働く人については、「国際公務員法」という特別の分野となっている。国連では、職員関わる争いについては「国連行政裁判所」が国連総会決議によって設立され活動している。 外部法としては、まず、国際組織の「国際法人格性」(international legal personality; la personnalité juridique internationale)が問題となる。国際司法裁判所1949年の「国際連合任務中に被った損害賠償に関する勧告的意見において、(当時としては)国際共同体の大多数国家相当する50か国は、国際法に従って客観的国際法人格を持つ実体創設する権能(power)を有していたのであり、同時に国際請求をする権能有する述べた(I.C.J.Reports 1949, p.185; 皆川国際法判例集137頁)。ECも、その設立条約であるEC条約においてEC国際法人格性有する規定しEC条約281条)、国際社会はこれに一般的承認与えており、現在、EC京都議定書世界貿易機関設立するマラケッシュ協定」の当事国となっている。 国連対外的活動として最も重要なものは、「国際の平和及び安全の維持に関する安保理活動である。いわゆる国連憲章第七章」に基づく行動である。七章に基づく安保理行動は、冷戦終結した1990/1991年以降、大変、活発になっている。その端緒は、1990年イラクのクウェート侵攻の際の、1991年安保理決議678に基づく多国籍軍行動である。同決議は、憲章43条に基づく常備の「国連軍」がいまだ創設されていないことに鑑み加盟国に「全ての必要な手段用いることを許可する」(authorizes...to use all necessary means)とした。(米英サウジアラビア集団的自衛権に基づく行動が、国連強制行動転換したといえる。)これは、朝鮮戦争において、米国指揮下にある軍に国連旗使用許可した1950年安保理決議84端を発する考えられる。この安保理決議678以降、「全ての必要な手段許可する」という方式繰り返し使用され、現在では完全に定着したと言える。 「自衛権」(the right to self-defense)は、国連憲章51条で、個別的自衛(individual self-defense)、集団的自衛(collective self-defense)とも、「固有の権利」(inherent right; 仏語テキストでは「自然権le droit naturel)と規定されている。特に「集団的自衛」が「固有の権利」とされている点について、この用語は国連憲章において初め用いられたものだが、その先と言うべきものが戦間期における相互援助条約草案ラインラント協定中に見られる指摘されうる。2001年9月11日米国同時多発テロ事件では、翌月米国アフガニスタン攻撃した学説上、これが国際法上自衛権の行使であるとか(米国英国立場、A.J.I.L., Vol.96, 2002, pp.237-255.)、違法な武力行使であるとか、自衛概念一時的に伸長」したなど様々な議論が行われている。この事件関連して出され安保理決議1368では、その前文加盟国自衛固有の権利であること確認している。国連憲章51によれば自衛権行使した国はすみやかに安保理報告しなければならず、米国は、アフガニスタン攻撃後、安保理報告している。 近年安保理活動急速に拡大し、「旧ユーゴスラビア国際刑事裁判所」(安保理決議827)、「ルワンダ国際刑事裁判所」(安保理決議955)に見られるad hoc刑事裁判所設立からテロ行為支援するいかなる措置もとらないよう加盟国一般的な義務課す立法行為」(安保理決議1373)まで及んでいる。 このような安保理活動拡大に対して司法的制御が必要であるという議論起こっている。1992年「ロッカービー上空での航空機事件から生じた1971年モントリオール条約解釈適用問題に関する事件」(社会主義人民リビア・アラブ国イギリス王国社会主義人民リビア・アラブ国対アメリカ合衆国)(「ロッカービー事件」)国際司法裁判所仮保全措置命令では、安保理決議748について、国連憲章103条が憲章上の義務他の国義務対す優越性規定していることから、モントリオール条約よりも同安保理決議優越するとし、同条約に基づく「一見した」(prima facie)管轄権否認しリビア仮保全措置申請却下した(I.C.J.Reports 1992, p.15, para.39)。同事件の管轄権判決では、リビア請求は、安保理決議748及び883が出される前になされているという理由から、管轄権認めたが(I.C.J.Reports 1998, p.26, para.44)、リビア米国英国とで和解成立し本案判決出されずに訴訟リストからはずれ、安保理司法的コントロール問題結論がもちこされた。しかし、2005年9月21日欧州共同体第一審裁判所が「Yusuf事件」において、オサマ・ビンラディンとその組織への制裁に関して個人義務課した安保理決議について、それらが国際法上強行法規(jus cogens)、特に人権普遍的保護目的とした強行法規反す場合には司法的コントロール拡大されうる、と判示し(T-306/01, point 282)、大変注目されている(他にも同日の「Kadi事件」(T-315/01)第一審判決、「Hassan事件」(T-49/04)および「Ayadi事件」(T-253/02)2006年7月12日第一審判決)。 なお、EC欧州共同体)やMercosur南米南部共同市場)、CARICOMカリブ共同体)、CAN(「アンデス共同体」; Comunidad andina)、SICA(「中米統合機構」; Sistema de la Integracion Centroamericana)は、域内共同体をつくる「統合的組織」(les Organisations d'intégration)であり、通常の国際組織区別する必要がある

※この「国際機構法」の解説は、「国際法」の解説の一部です。
「国際機構法」を含む「国際法」の記事については、「国際法」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「国際機構法」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「国際機構法」の関連用語

国際機構法のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



国際機構法のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの国際法 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS