二つに分かれた有識者の意見
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/15 21:19 UTC 版)
「榎本三恵子」の記事における「二つに分かれた有識者の意見」の解説
この証言には様々な知識人たちが独自の見解を述べているが、それは肯定的なものと否定的なものの二つにはっきり分かれた。 肯定的な意見 「これまでの女性は権力の前には弱かったが、勇気をもって証言してくれたことがうれしい。夫とか子供といった枠にとらわれず、社会的展望に立って発言できる女性が出てきたということではないか。社会正義を主張する女性が育ってきているということだろう」- もろさわようこ・女性史研究家 「まさに田中有罪にとどめを刺したと言える。弁護側がまともに反対尋問をしなかったのは、すればするほど墓穴を掘ることがわかっているからで、この証言の前にはもう立ち直れないだろう」- 立花隆・ジャーナリスト 「彼女はいま一つ割り切れなかった法廷のやり取りに、はっきり答えてくれた。死ぬくらいの覚悟が必要だったと思う。私にはとてもできない。その証言には直感的に真実を感じました」- 白石かずこ・詩人 「彼女のような女性が現れるのはうれしい。この1年間の優れた女性として賞状を差し上げたいです。ごく普通の主婦でも、彼女の取った行動に脱帽してます」- 吉武輝子・作家、評論家 「男の人は、あそこまで話すことはないないだろうという見方が多いですが、それは甘えです。三恵子さんは、男の人が想像もできないほど追いつめられていたんでしょう。母親の命懸けの強さを感じました」- 森山眞弓・参議院議員 「発言の中には、それなりの計算があったと思います。裏に演出家がいたとしても、三恵子さんは演出をはるかに超えた名女優です」- 樋口恵子・東京家政大学名誉教授 「そこまで彼女を追いつめた男たちが全て悪い。窮鼠、猫を噛むということです」- 俵萌子・評論家、エッセイスト 「親族の証言が問題になるのは身内の者をかばう時で、その反対の場合には逆に強い決め手になる。身近にいて目撃した証言内容は動かし得ない」- 下村康正・法学者、中央大学名誉教授 「公憤だろう私憤だろうと関係はない。証言内容の確かさはいささかも損なわれるわけでもありません」- 筑紫哲也・ジャーナリスト、ニュースキャスター 「彼女は一人の市民として真実を言ったまでで、当然のことです。世間では前の夫の悪口をいう女だとか、女の恨みで言ってるのじゃないかととらえてる風潮があるが、それははおかしい」- 小沢遼子・社会評論家 「榎本の前妻ということで証言内容は幾分、割り引かれるかもしれないが、自分が証拠隠滅罪にも問われかねないだけに、真実を述べたといっていいだろう」- 室伏哲郎・ジャーナリスト 「庶民の素直な声が田中の政治汚職を追いつめつつあり、我が意を得たりという思いがする。奥さんは離婚後も大変つらい問題を抱えておられると思うが、今後も正しい証言を続けて欲しい」- 紀平悌子・日本婦人有権者同盟会長 「少なくとも、うなずいたというくだりは間接的にせよ5億円の授受を認めたことだから、有力な証拠になるでしょう」- 岩崎四郎・弁護士、元判事 「女が怖いとかおかしいですよ。あれが当たり前なんですから」- 大島渚・映画監督 「田中角栄に反省の色が全くない。榎本前夫人が証言台に立ったのもそのせいでしょう」- 羽仁五郎・歴史家 「具体的に話しているし嘘を言ってるとは思えない。これで検察側は勝利し田中側は首相の職務権限で争うしかないのではないか」- 植松正・一橋大学名誉教授 「田中派内部にもあきらめの空気が出ていますね。これまでは角さんが強気で、それが希望だったわけですが、これで希望の日も消えたという感じです。人事に対する田中の注文も効力を失うでしょう」-飯島清・政治評論家 「田中被告はとどめを刺された形になった。近来にない衝撃的なニュースだ。強大な権力を持つ検察側のやり方はマスコミは確認するのが役目だが、それでも三恵子さんの証言の衝撃力が弱まることにはならない」-青木彰・ジャーナリスト 「田中側は妙なアリバイを主張したうえに、この証言が出たのでもう争いようがなくなり、当人にとって最も残酷な結論を引っ張り出してしまった」-板倉宏・日本大学名誉教授 「証拠を焼き捨てた時も、やはり自分の旦那ですから私情が優先するのは当然で、その葛藤みたいなものを理解してやらないと。証言したその時点の彼女を評価すべき」-丸山邦男・社会評論家- 否定的な意見 「最終的には夫婦のドロ試合という感じです。納得できる話はなかったです」- 田丸美寿々・ニュースキャスター 「別れた旦那のことをいうのが、はたして勇気あることなのか。それがフェアなのかどうかは疑問です」- 上坂冬子・ノンフィクション作家 「共感できない。夫の犯罪の共犯者であったにもかかわらず、そのことを正当化している。夫にシラを切れと励まし、自ら証拠隠滅を図った点については、政治家の妻として当然のことと言い、分与された財産が汚れた金であることを知りながら、そのことにはほおかむりのままである。このような不透明な人物を英雄にするわけにはいかない」- 伊丹十三・俳優 「いろんな面で権力の恩恵も十分にこうむっていたはず。国民の義務とか社会正義とか言うなら、なぜ秘書官夫人の時代に告発しなかったのか。告発する前に国民に謝るべきではないか」- 志水速雄・政治学者、東京外国語大学教授 「国民の義務を果たすというなら、相手のことだけでなく自らの立場を冷静に明らかにするべきでしょう。自分に都合の良いことだけを手記に書くのはおかしい」- 森田実・政治評論家 「証言自体はそれほどの重みはない。金の受け渡しは伝聞証拠に過ぎないし、検察が彼女を出廷させたのは宣伝効果を狙ったものでマスコミを利用するのはよくない。裁判はあくまで法廷で争うべき」- 俵孝太郎・政治評論家 「彼女の社会正義なるものは少々わからない。断固として夫に偽証を強要したときは自ら最も社会正義に違反する行為をしていたはずなのに、そういう自責は全くない。派閥の内にいる時と外に出た時でなぜそれが百八十度変わるのか?」- 山本七平・評論家 「常識の世界では想定できない話である。総理秘書官の日程表、メモ等を夫人が勝手に焼却できるはずはない」- 平野貞夫・政治評論家 「社会正義と言うなら、もらったなら男らしくもらったと白状しなさいと旦那に言ったのに、そうしなかったから別れると言うならスジが通る。しかしシラを切り通せと言って、それができなくて正直に白状したら、こんな男とは一緒にいられないと言って別れる。そのへんがすっきりしない」-清水英夫・青山学院大学法学部教授 当時の世論は圧倒的多数がこの証言を支持する方向に傾いた。翌日、榎本三恵子が住んでいる港区のマンションの部屋に取材陣が殺到したが、ドアには『今回の件は永い心の葛藤があっての事ですし、昨日終わってみて改めて悲しみがおそって参りました。しばらく静かにさせて頂けませんか・・・心の整理がつき次第、再びお目にかかりたく思っております』との貼り紙があり、応答することはなかった。証言の後、『週刊文春』が独占記事を書かせるため、湯河原町の旅館にかくまい他のマスコミからの接触を遮断した。その手記は『ハチは一度刺して死ぬ』という表題の下で11月12日号から5週間にわたって連載された。手記では、証言台に立ったのは「真実を貫くということの尊さを知って欲しかった」というわが子へ向けてのメッセージであることを強調している。
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