九字切りとは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > 九字切りの意味・解説 

九字護身法

(九字切り から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/02 08:40 UTC 版)

九字護身法(くじごしんぼう)とは、主に修験道において「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前」の九字の呪文と九種類の印によって除災戦勝等を祈る作法である。この行為は九字を切る(くじをきる)[1]九字切り(くじきり/くじぎり)とも表現される。仏教密教)で正当に伝えられる作法ではなく、道教の六甲秘呪という九字の作法が修験道に混入し、その他の様々なものが混在した日本独自の作法である。

由来

六甲秘呪は『抱朴子』内篇第四「登渉篇」に葛洪が「臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・前・行」と唱えたとある。

日本での九字作法は、独股印を結んで口で「臨」と唱え、順次に大金剛輪印、外獅子印、内獅子印、外縛印、内縛印、智拳印、日輪印、宝瓶印(別称:隠形印)を結び、「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前」を唱える。次に刀印を結んで四縦五横の格子状に線を空中に書く。

道教では縦横法と称し、修験道等では俗に「九字を切る」と称する。

修験道では九種類の印にそれぞれ、毘沙門天十一面観音如意輪観音不動明王愛染明王聖観音阿弥陀如来弥勒菩薩文殊菩薩を本地仏に配当する説がある。ただし不動明王の印である独股印が毘沙門天、金剛界大日如来である智拳印が阿弥陀如来など、印の形と本地仏とは関連性のない配当がされており根拠は不明である。また外獅子印、内獅子印の二つはインド撰述の密教経典には見られない、日本独自の印である。

そのほかに天照皇大神八幡大菩薩・春日大明神・加茂大明神・稲荷大明神住吉大明神・丹生大明神・日天子摩利支天を配当する説もある。

九字は中世には護身、戦勝の利益があるとして、武人が出陣の際の祝言に用いるようにもなり、やがて忍者の保身の呪術としても使われた。

また日蓮系統の法華行者では、日栄の『修験故事便覧』による法華経序品の「令百由旬内無諸衰患」を九字とする説に基づいて、格子状の九字を切る作法が相承される。

日本には忍者が結ぶ印の基になった、戦場に臨む武士が行う修法「摩利支天の法」(まりしてんのほう)が存在し、摩利支天は武士の守り本尊として鎌倉時代から武士に人気があった。方法は、右手と左手の人差し指と中指をそれぞれ立て、右手を刀、左手を鞘に見立て、右手で空中を切る。空中を切った後、刀に見立てた右手指は、鞘に見立てた左手に納める。

九字(『九字護身法』 博文堂庄左衛門 1881年2月)

明治以降、大東流合気柔術の創始者武田惣角は、修験道の九字護身法を修行した。九字切り、気合術(気合・合気)、不動金縛り法、足止め術は関連性がある。2023年、会津の易師中川万之丞の遺品が公開され、冊子「呪法」に九字の秘印の五横四縦、五芒星、信者に与えた呪符に五横四縦をアレンジした九字がある。不動金縛り法、足止め術の記述もあり、近村の武田惣角に教えた状況証拠が確認された。

もっとも素人が九字護身法を切ることはいけないとされ、修行を積んだもののみがゆるされるとされる。

参考文献

  • 『密教大辞典』宝蔵館。 
  • 『密教辞典』宝蔵館。 
  • 『岩波仏教辞典』岩波書店。 
  • 「武田時宗遺稿集」『月刊秘伝』第2号、BABジャパン、2010年。 
  • 池月映(著)、会津史学会(編)「武田惣角は大東流合気柔術の創始者」『歴史春秋』第92号、歴史春秋社、2021年。 
  • 池月映「会津一の天才易師中川万之丞」『会津人群像』第46号、歴史春秋社、2023年。 
  • 池月映(著)、会津史学会(編)「易師中川万之丞の業績ー呪法」『歴史春秋』第95号、歴史春秋社、2024年。 

脚注

  1. ^ 九字を切る』 - コトバンク

関連項目

外部リンク




英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「九字切り」の関連用語

九字切りのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



九字切りのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの九字護身法 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS