インディペンデント期とマッドラブ: 1988–1993とは? わかりやすく解説

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インディペンデント期とマッドラブ: 1988–1993

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/15 04:39 UTC 版)

アラン・ムーア」の記事における「インディペンデント期とマッドラブ: 1988–1993」の解説

メジャー出版社背を向けたムーアは、自分書きたいテーマSF冒険ものやスーパーヒーロージャンルには収まりきらない公言し、それらのジャンル作品確立したポストモダン作風社会的な作品適用し始めた。しかし大手出版社取次から離れた執筆活動多く困難に見舞われることになる。 1988年、AARGH (Artists Against Rampant Government Homophobia)(→猖獗極める政府同性愛嫌悪抗議する芸術家集団)というチャリティ・コミックを出版するため、妻フィリス夫妻共通の愛人デボラ・デラノの3人で個人出版社を設立してマッドラブ名付けたサッチャー政権提出した地方議会学校に「同性愛奨励すること」を禁じる「第28条(英語版)」法案抗議する刊行物だった。ムーアはゲイマン、ミラー、スピーゲルマン、ハービー・ピーカーロバート・クラム錚々たるコミック作家原稿集め自身同性愛の歴史綴った詩 The Mirror of Love提供した作画リック・ヴィーチ、スティーヴン・ビセット)。収益1万7千ポンドはレズビアン・ゲイ団体寄付された。ムーアは AARGH の出版によって法案成立阻止することはできなかったが、一般大衆抗議の声に加わることはできた。その声が、問題法案立案者望んでたような悪辣な効果発揮できないようにさせたのだと述べている。 続いて米国中央情報局 (CIA) を相手取った連邦訴訟に関わっていた公益法律事務所クリスティック・インスティチュート(英語版)の依頼受けてCIA非合法活動告発する Shadowplay: The Secret Team作画ビル・シンケビッチ(英語版))を書いた内容はクリスティックが提供した大量調査資料基づいていた。徹底した取材によって実在事件作品化する経験その後執筆活動影響大きかったShadowplay はクリスティックが一般支持集めるため刊行したアンソロジー Brought to Light(→白日の下へ)(1988年エクリプス刊)で発表され、さらに1998年ムーア作曲家ゲイリー・ロイド(英語版の手スポークン・ワードとしてCD化された。 1990年コミック自己出版伝道者デイヴ・シム(英語版)に触発され、AARGH 1号限りのはずだったマッドラブから Big Numbers発刊した生地ノーサンプトンモデルにした英国地方都市舞台に、巨大ビジネス一般人与え影響カオス理論概念組み合わせた社会的リアリズム作品だった。ムーア自身『ウォッチメン』からスーパーヒーロー要素除いて偶然性無秩序支配する世界観をさらに掘り下げた作品だと語っている。読者を選ぶ題材だが、全12号×大判40ページという大部構想で、ビッグネームのビル・シンケビッチが作画担当するとあってファン期待高かった。しかし2号出た時点でシンケビッチがフォトリアリスティックなペイントアートという方針維持できなくなり作画降りた続刊出ず終わった。この失敗ファン失望招きムーアにも大きな金銭的損失もたらした1991年書籍出版社ビクター・ゴランツ(英語版)から書き下ろしグラフィックノベル A Small Killing(→ア・スモール・キリング)(作画オスカー・サラテ(英語版))が刊行された。広告会社重役理想家だった少年時代自分自身取りつかれ、一線から退いて新し目的探すという物語である。この時期のほかの長編比べる個人的な作品で、ティム・キャラハンによるとムーア直面していた苦闘反映したムーア殿堂中でも鍵となるテクストである。ジャクソン・エアーズは、商業主義にいったん膝を屈した芸術家主人公であるのは、ムーアの中で過去自作対す見方変わったためだと分析している。80年代スーパーヒーロー作品とは方向性異なる A Small Killing は、コミックではなく書籍取次から販売されたこともあって部数伸びず、「もっとも過小評価されているムーア作品とされることがある過去共作者スティーヴン・ビセットが自己出版するアンソロジーコミックTaboo では、内容制約を受けることなく性や暴力政治宗教といった題材自由に追求することができた。ムーアが同誌で行った連載一つ目は、1880年代起きた切り裂きジャック事件フィクション化した『フロム・ヘル』(1989年–)である。ムーアダグラス・アダムズ小説『ダーク・ジェントリー全体論的探偵事務所英語版)』に触発され犯罪を「全体論的解き明かす」には、社会歴史全体わたって張り巡らされ些細な事実連なりを完全に解き明かす必要があるというアイディア持っていた。そうして書かれ本作は、グレッグ・カーペンターによると女王玉座から売春婦寝床に至るまで、すべての社会階層にわたるヴィクトリア朝歴史描いており、ミソジニー反ユダヤ主義ジンゴイズム陰謀論建築理論英語版)、時間理論暴力本質イギリス史モダニズム起こりのようなテーマ数多く織り込んでいた。作画のエディ・キャンベル(英語版)は作品によく合った冷たく緊迫したペン画提供したTaboo短命に終わり、『フロム・ヘル』は小出版社からコミックブック形式続刊出た。しかしDC期のように締め切り束縛されなくなったことで各号執筆期間は延びていき、内容重厚の度を強め新刊追い続けるのが困難な状況ファン離れていった。評論誌『コミックス・ジャーナル』の論説によると、カジュアルな読者拒絶するのようなムーア行動半ば意図的なもので、作中表現される表層的20世紀文化への嫌悪もそれと通底していた。1999年10年越し完結したフロム・ヘル』はキャンベル個人出版社から単行本化された。後に映画化再刊経て名作としての評価確立している。ベン・ディクソンは巨大な構想野心に基づく、コミックというメディア定義する作品一つ評している。 Taboo開始されもう一つ作品 Lost Girls1991年–)はムーアによると知的なポルノグラフィだった。作中では、セックスアンチテーゼとしての世界大戦前夜成長した児童文学女主人公たちが互いに性の目覚め物語る。原典内容性体験メタファーとして解釈されるムーアティファナ・バイブルロバート・クラムを例に挙げて非主流コミックポルノ伝統があると主張しており、芸術的価値のあるポルノ・コミックを作ることを一つ挑戦考えていた。 たいていのポルノ付き物問題避けながら露骨に性的なコミックを書くにはどうすればいいか、アイディアいくらでもあった。問題とは、たいていのポルノ不快で退屈な代物であり、創意欠けることだ。水準がないのだ。 —アラン・ムーア2003年Lost GirlsTaboo などで一部発表された後に出版当てがないまま書き続けられ2006年完成するトップシェルフから箱入りハードカバー3冊組の豪華本として刊行された(作画メリンダ・ゲビームーアはその翌年結婚した)。豪華な装丁にされたのはわいせつ物ではなく芸術作品だという印象与えようとした版元意図もあった。児童ポルノ受け取られうる内容を含むものの、おおむね芸術的価値認められ各国出版販売実現し高い評価得たコミック批評家文学研究者からも注目を受け、ジェンダー学やクィア理論、「子供」の社会的構築コミックストーリーテリング形式など多く観点から分析が行われた。出版同年ムーアポルノグラフィ歴史をたどる論説発表し、ある社会活力を持つかどうか、うまく回るかどうか性的な事柄どれほど許容するかによると論じ、公の評価に耐え公益もたらすような新たなポルノ必要性訴えた。このテーマ2009年評論25,000 years of Erotic Freedom(→性の自由の2万5千年史)に発展した同書美術評論家ジョナサン・ジョーンズによってとんでもなくウィット利いた歴史講義評された。 @media all and (max-width:720px){.mw-parser-output .mod-gallery{width:100%!important}}.mw-parser-output .mod-gallery{display:table}.mw-parser-output .mod-gallery-default{background:transparent;margin-top:.3em}.mw-parser-output .mod-gallery-center{margin-left:auto;margin-right:auto}.mw-parser-output .mod-gallery-left{float:left;margin-right:1em}.mw-parser-output .mod-gallery-right{float:right}.mw-parser-output .mod-gallery-none{float:none}.mw-parser-output .mod-gallery-collapsible{width:100%}.mw-parser-output .mod-gallery .title,.mw-parser-output .mod-gallery .main,.mw-parser-output .mod-gallery .footer{display:table-row}.mw-parser-output .mod-gallery .title>div{display:table-cell;text-align:center;font-weight:bold}.mw-parser-output .mod-gallery .main>div{display:table-cell}.mw-parser-output .mod-gallery .gallery{line-height:1.35em}.mw-parser-output .mod-gallery .footer>div{display:table-cell;text-align:right;font-size:80%;line-height:1em}.mw-parser-output .mod-gallery .title>div *,.mw-parser-output .mod-gallery .footer>div *{overflow:visible}.mw-parser-output .mod-gallery .gallerybox img{background:none!important}.mw-parser-output .mod-gallery .bordered-images .thumb img{outline:solid #eaecf0 1px;border:none}.mw-parser-output .mod-gallery .whitebg .thumb{background:#fff!important} Lost Girls主人公一人アリス(不思議の国のアリス)老齢貴婦人として登場するジョン・テニエル画(1865年)。 中流階級出身ウェンディピーター・パン)は家庭主婦である。オリバー・ハーフォード(英語版)画(1907年)。 エネルギー満ちた田舎育ちドロシーオズの魔法使い)。ジョン・R・ニール英語版)画(1908年)。 1996年には初の小説本 Voice of the Fire(ビクター・ゴランツ刊)が出た青銅器時代から現代まで数千年の間の出来事描いた短編連作で、時代異なれどすべてムーア生地ノーサンプトン舞台となっている。言語や文化発展再現した異例語り口書かれており、全体として想像力と「幻視」が私たち自身どのように形作ってきたかについてのストーリーとなっている。

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