起承転結
起承転結(きしょうてんけつ)とは、文章や物語の構成法であり、四部から成る構造を指す。この構成法は、情報を効果的に伝え、理解を促進するために用いられる。具体的には、「起」で話題を提起し、読者の興味を引く。「承」で「起」の内容を受け継ぎ、詳細を加えることで話を展開する。「転」では新たな視点を提供し、予想外の展開を示すことで、物語に深みを与える。「結」で全体を締めくくり、結論を提示する。この構成法は、読者が内容を順を追って理解しやすくなるため、広く採用されている。また、現代では、漫画や映画などのストーリーテリングにも影響を与えており、日本文化における伝統的な語りの形式として重要な役割を果たしている。
起承転結
「起承転結」とは・「起承転結」の意味
「起承転結」とは文章や物語の構成の一種である。もともとは中国の漢詩の技法だった。漢詩には「四行詩」という手法があり、四行である情景を伝えてきた。この四行を「起句」「承句」「転句」「結句」と呼ぶ。四行にはそれぞれの役割が決められており、全体の結びつきが重要だとされてきた。そして、漢詩を応用する形で現代では、ジャンルを問わずさまざまな場面で起承転結は使われている。そもそも現代に広がった起承転結は「起」「承」「転」「結」の4つの部分から成り立つ。まず、「起」は状況の説明である。主人公の立場や物語の舞台、筆者の素性などが「起」で示される。「ある会社員がいた。年齢は40歳で商社に勤務していた」といった文章が「起」の部分だ。次に、「承」は「起」からわずかに展開することを指す。あるいは、「起」の補足説明や感想を「承」で述べる場合も多い。「その会社員は上司と仲が悪かった。それでも、仕事は好きだったので懸命に働いていた」といった描写が「承」にあたる。
「転」は「起」「承」からの大きな展開である。これまでとはまったく違う事象が「転」で登場する。「結」に向かうための助走として、「転」が設けられることも少なくない。「しかしある日、堪忍袋の緒が切れた。男は上司に反抗し、大喧嘩をしてしまったのだ。男は会社をクビになってしまった」という文章が「転」である。
そして、「結」では一連の流れの結果が述べられる。起承転結は基本的に、「結」を盛り上げるための構成である。「男はこれをきっかけに、もとからやりたかったカフェを開業した。会社員時代には気づいていなかった才能が開花し、カフェは大繁盛だ。男は会社員時代より今の方が幸せだと感じている」という文章が「結」に該当するだろう。なお、起承転結は日本の小学校、中学校の国語教育で教えられてきた技法だ。実際に、起承転結を用いて、作文を書かせるような授業も行われている。それに対し、英語圏では起承転結の認知度は高くない。起承転結は日本でのみ強く推奨されている技法である。
起承転結が日本で広がったのは、「簡潔にまとめられる」というメリットがあるからだ。作文の場合、起承転結それぞれに事象をあてはめていけば、分かりやすい内容となる。何らかのエピソードを語るときも、起承転結にあてはめて考えれば伝えやすく、聞き手にも容易に理解される。複雑な説明を盛り込まなくても、起承転結の文章、物語は人々の印象に残りやすい。老若男女問わず、大勢の人に受け入れられたい際は起承転結による伝え方が効率的だ。
次に、「説得力」があるのも起承転結のメリットである。起承転結による話法では、物事を順序だてて伝えていく。そのため、聞き手は内容をじっくり理解できる。そのうえで「転」では急激な展開があるので、強い印象を受ける。「転」の後で「結」がくると、直前の衝撃もあいまって語り手の言葉に納得しやすい。一部のスピーチでは「起」「承」で事実を羅列し、「転」でそれらを否定するような話法もとられてきた。聞き手が不安になると、提示される「結」を信じてもらいやすくなるからだ。
そのほかにも、起承転結には「要点が見えやすい」というメリットもある。主に日本では起承転結による文章構成、話法が浸透しており、受けては「結」の部分が重要だと理解している。「起」「承」「転」を導入部分だと捉えてくれるので、「結」への期待を煽りやすい。仮に起承転結の文章において、受け手が「結」だけを読んだとしても、全体の要点を把握できる。
一方で、起承転結にはデメリットもあると指摘されてきた。たとえば、起承転結は複雑な議論には向かない。世の中には簡単に結論を出せないような問題もたくさんある。最終的には分かりやすく結論を提示しなければならない起承転結では、物事の複雑さや難解さを正確に伝えられない。さらに、「起承転結」はまわりくどい印象を与えるリスクもある。どうしても起承転結では、結論が後半部分になってしまう。早く結論を知りたいという受け手にとって、起承転結の話法や文章は大きなストレスだ。ビジネス文書のような、結果だけを求められる場合にも起承転結は向かない。
起承転結のメリットが発揮されるのは、長い物語を発表するときだろう。小説や漫画、ドラマや長編映画などは起承転結によって語られることが多い。なぜなら、情報量が多い物語に受け手が接するとき、起承転結による構成は「まとまりがある」と感じられるからだ。物語が進んだところで「転」のパートに突入すれば、受け手は飽きずに先の展開を追える。そして、「結」を確認した後に受け手は解放感や感動を覚えられるのだ。
小さな子供のように、作文に慣れていない人にも起承転結は向いている。作文が苦手な人は、順序だてて物事を語りにくい。文章以前に、書くべき内容を整理できず戸惑ってしまう。しかし、起承転結にあてはめて構成を考えると、作文に必要な要素を思いつきやすい。「結」が明確になっていたなら、展開を脱線させずに書き続けられる。
そのほかでは、ゲームや連載小説のように、長期間にわたって受け手の興味を持続させたいときにも起承転結の構成は便利だ。起承転結は「結」に向かっていることが明らかなので、受け手は先の展開が気になってくる。登場人物と感情や目的を共有しやすく、受け手がスムーズに感情移入できるのは起承転結による語り口だ。
「起承転結」の使い方・例文
・あなたが持ち込んでくれた読み切り漫画を拝読した。キャラクターは魅力的なのに展開が雑すぎる。起承転結を意識しながら、最後まで読者の興味を引きつけられるよう工夫してみてくれ。・起承転結でいえば、今日の敗戦はまだ「起」の部分だ。まったく気にしなくてもいい。ここからどのように這い上がっていくかで、このチームの物語は決まるはずだよ。
・社長のスピーチはいつのまにか聞き入ってしまう。課長の話とは大違いだ。おそらく、社長は起承転結を意識して、話を組み立てている。課長はダラダラと話しているだけなのだろう。
・昔の四コマ漫画は起承転結を学ぶ場所だといわれていた。しかし、今の漫画は非常に進化している。「転」を欠いた「起承結結」や、「結」からさかのぼっていく形式の作品も多い。
・起承転結だけでは語れないほど、この国の経済問題は複雑化してしまった。悪化の原因はいくらでも挙げられるし、結果もひとつだけではない。さまざまな事象が結びつき、取り返しがつかなくなっているのだ。
・私は小学校や中学校の読書感想文が得意だった。起承転結にあてはめて書き上げれば、それなりの内容になったからだ。ただ、大学の論文は起承転結だけでは書けないと感じている。
・起承転結の「転」の部分まで、この映画は非常に面白かった。それなのに、種明かしがされてしまうと急につまらなくなってしまった。こんなことなら、最後まで見なければよかったよ。
・くよくよしないで。人生を起承転結になぞらえて考えてみて。あなたは確かに失敗したかもしれない。しかし、最後に素晴らしい「結」が待っているのだとしたら、それでいいじゃないか。
・意外なことに、欧米では起承転結の概念を理解しにくいらしい。文章を書くときは「結論を先に出せ」と教えられる。アメリカに留学して、感覚を変えるのに手間取ってしまった。
・すまないが、あなたの話は要点が伝わりにくい。結局、何を主張したかったのか最後まで分からなかった。これからは起承転結を意識するといいのではないか。
起承転結
起承転結とは、起承転結の意味
起承転結は、もともとは漢詩(絶句)の詩体の構成のことであり、転じて、文章・論述・物語などを構成する際に手本とされる「構成・展開の雛形」の意味で用いられる語。簡単にいえば「話題を提起し」「提起を承けて話を続け」「話がガラリと転化し」「最後に締めくくる」という構成のこと。「起」では、話を理解するために必要な情報を伝える。「承」では、「起」の内容を継承しつつ広げたり深めたりする。「転」では話が一転し、起~承とは違った視点で話を捉えたり、あるいは物語が大きく展開したりする。「結」では起~転の流れをまとめ、話の結果を伝えて締めくくる。これを手本とすることで、構成がまとまりやすく・分かりやすく・面白くなりやすい、というわけである。
必ずしも起承転結こそが理想的な文章構成であるとはいえない、という見解もある。
起承転結の語の由来・語源
起承転結はもともとは「漢詩」の詩型である「絶句」の構成について述べる際に用いられる用語である。絶句はいわゆる四行詩であるが、4つの行(句)をそれぞれ「起句・承句・転句・結句」として構成することが理想とされた。起句でまず話題を提示し、承句では起句を承けた話を続け、転句では話を変えたり大きく展開させたりして内容に変化をつけ、そして結句で全体を結び、締めくくる。起承転結の語の使い方(用法)、例文
起承転結の類語と使い分け方
起承転結の類義語というわけではないが、同じく「話の構成の雛形」のとしては、「序破急」が挙げられる。序破急は芸道の用語で、まずは穏やかに物語を始める「序」、次いで序の静けさを覆して内容が急展開する「破」、最後を軽やかに締めとなる「急」、の3要素で構成する考え方である。「起承転結」の「起・承」が「序」に相当する部分であり、起承転結と序破急の間に大きな相違はない。論理的な文章の構成としては「IMRAD」がしばしば参照される。IMRADは「Introduction, Materials and methods, Results, And Discussion」の略(頭字語)であり、序論(introduction)、材料と手法(materials and methods)、結果(results)、考察と結論(discussion and conclusion)からなる。
起承転結の英語
起承転結に直接に対応する英語表現は特にない。起承転結は漢詩の用語であり、西欧に同じ概念がないからである。単に「文章の構成」を指す意味ならば structure of text のように表現すればよいが、「起承転結」の概念そのものを指し示す場合は「Kisho-tenketsu」と固有名詞的に述べた上で the four‐part organization; introduction, development, turn, and conclusion のように補足するのが無難といえる。き‐しょう‐てん‐けつ【起承転結】
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