『入れ替わりの環』へ逃げ込んだ7人
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/02 03:14 UTC 版)
「人格転移の殺人」の記事における「『入れ替わりの環』へ逃げ込んだ7人」の解説
199X年12月21日にハンバーガーショップ『チキンハウス』に居たところ、数十年に一度という規模の直下型大地震に巻き込まれ、避難のために『入れ替わりの環』へと逃げこんでしまった7人。うち1名は地震発生時に死亡。残り6人の間で人格転移が行われる事となった。表向きは震災により全員亡くなった事にされ、処遇が決まるまでの23日から26日までの間、かつてプロジェクトで被験者に提供されていた『寮』に監禁される事となる。 苫江利夫(とま えりお) 埼玉県和光市出身の日本人男性。33歳。シカゴ大学・大学院とで併せて8年間の学生生活をアメリカで送り、流暢に英語を話す。それぞれ特徴的な言葉遣いをする7人の中では、最も標準的なアメリカ英語を使う。現在は埼玉県で総合電機メーカーに勤め、世間的にはエリートサラリーマンと呼ばれる立場。しかし自己評価は低く、何事に対しても自虐的に語る。 見合いで知り合った美由紀という女性と、結納を交わすほどに仲を深めていたが、気まぐれに挙式直前で別れを切り出され、それでも復縁を夢見て彼女のいるカリフォルニアへ向かったものの、夢破れて落ち込んでいた。『寮』では、ぶつかりあう個性的なメンバーらの調停役を行うことが多かった。地震発生時に肋骨を折っている。 割り振られた『自我牢』の番号は3番。 ジャクリーン・ターケル イギリスノッティンガム出身の白人女性。24歳。美女だが売れていない女優で、ソープオペラのオーディションを受けるため渡米した。美しいブリティッシュ・イングリッシュで話す。 アッシュブロンドの髪を腰まで伸ばし、目は緑色。どれだけ野暮ったい服を着ようとも隠すことのできない蠱惑的な肉体を持つ。長身で、背は江利夫よりも高い。自らの美貌を資産として大切に扱い、人格転移により他人に体を明け渡すことを誰よりも嘆いた。共に『入れ替わりの環』へ逃げ込んだ7人のうち、同じ女性である窪田綾子は早期に亡くなってしまったため、6人による『寮』生活の中では紅一点となった。自らの肉体を守るために気を張って、男性陣に対しわざと感情的かつ攻撃的に接した。容赦のない振る舞いは全てが演技なわけでもないが、本来の性格は理知的な面も強い。 両親の離婚により父子家庭で育ったが、父を亡くしてからは母と会うこともなく一人で生きていた。大学卒業後に一旦は学芸員の職を得たが、演劇への夢を捨てきれずに転身した。同い年で舞台演出家のストーリング・ウッズという男性と結婚を前提に交際しており、彼の手がけた舞台で主演を務める事が夢。 地震発生時に右足首をひどく捻挫している。その際に、混乱しながら傍にいた江利夫に強くしがみつき彼の肋骨を折ってしまった事を気に病んでいる。 割り振られた『自我牢』の番号は5番。 ボビイ・ウエッブ(Bobbie Webb) カリフォルニア在住の黒人男性。16歳。高校生。語尾に独特のアクセントがつく黒人特有の訛りがある英語で話す。『入れ替わりの環』の上に位置するハンバーガーショップ『チキンハウス』のオーナーの甥にして店員。 日本人の江利夫から見れば十代の少年である事が疑わしく思えるほど逞しい体格。煙草やマリファナに手を出しており異性関係も乱れていると素行不良だが、我の強い者が多い『寮』のメンバー内においては比較的協調性がある方で、唯一の女性であるジャクリーンを気遣った。自ら「こう見えてインテリ」と称する。また、江利夫が信頼に足る人物としてメンバー内で最初に心を開けた相手でもあった。友人の兄が日本のアニメ愛好家である影響から、幾つかのアニメソングを日本語のままで歌え、日本語の単語もいくらか知っている。 割り振られた『自我牢』の番号は2番。 ランディ・カークブライド アメリカ合衆国フロリダ州ゲインズビル在住の男性。52歳。親から継いだリネン・サービス業を営んでいる。南部訛りの英語で話し、文章上は関西弁風に表現される。7人中唯一の既婚者で、現在の妻との間に3人の娘が、前妻との間に成人した子供が数名いる。 頭部は禿げており、硬い筋肉が盛り上がった屈強な体をしている。肩の辺りに入れ墨を持つ。男性相手には顰め面で横柄に振る舞うが、美しい女性を前にすると締りのない顔でセクハラを行う。『チキンハウス』店内ではジャクリーンにしつこく絡み、人格転移でジャクリーンの肉体に宿った際は乳房をいじって見せるなどして、ジャクリーンにひどく嫌われた。自らのマッチョさを誇示する言動をしつつも、知り合いに出くわさないでポルノ映画を見るために、わざわざグレイハウンドバスで何十時間もかけてカリフォルニアにまで足を運んでいたりと、小心な面も持つ。 日本人全般を嫌い、差別的に振る舞う。学生時代に奨学金の枠を日本人留学生に持って行かれ学費が払えなくなり中退せざるをえなかったことや、社会人となってからは日本企業の進出により会社が傾き、日系企業に転職してみればリストラに遭い、仕方なく家業を継ぐはめになってしまったことなどが理由である。日本人である上に高学歴でホワイトカラーの江利夫を憎み、「坊や(ショーテイ)」と侮蔑的に呼ぶ。 割り振られた『自我牢』の番号は4番。 ハニ・シャディード アラブ首長国連邦アブダビ出身のアラビア人男性。28歳。いちいち痰を切るかのような、アラビア訛りの英語を用いる。語順を無視して単語を並べて話し、英語の語彙に乏しく、感情的になると同じ単語を連呼する。 宣教師の両親に連れられ世界各国を渡り歩いて育ち、キリスト教団体の支援を受けながら、カリフォルニア州S市の下町で外国人留学生向けアパートを経営していた。一家揃って敬虔な宗教者というわけではなく、各宗教団体の好意を食い物にするいわゆる「宗教ゴロ」である。 浅黒い肌を保ち、つぶらな瞳や整えられた髭など顔は美しいが、アンバランスに短い体躯をしており、一目でわかる底上げの靴を履いている。ナルシストかつ同性愛の傾向を持ち、人格転移に乗じて「自らの肉体を強姦する」という奇行に走る。 割り振られた『自我牢』の番号は1番。 アラン・パナール フランスパリ出身の白人男性。20歳。フランス語講師を務める父の仕事の都合から日本の横浜で長く暮らしており、母国語であるフランス語の他に日本語が堪能。日本の学校に籍を置く学生で、英語は日常会話未満のごく初歩的なものしか話せず、語学留学のため渡米した。カリフォルニア州S市に着いてからまだ3日のところで人格転移を起こす事となった。 背が高く痩せぎすで、茶色の髪を短く刈り込んでいる。同じ英語学校に通う、日本語で会話する事のできる窪田綾子と会ったその日に親しくなり、恋人のように親密に行動を共にしていたが、女性に対して軽薄なところがあり誠実な態度ではなかった。父の不倫相手である美女を脅してあわよくば肉体関係を持とうと企んでおり、その美女と容姿が似ているジャクリーンを見間違えて綾子の前で口説きにかかるほどだった。 割り振られた『自我牢』の番号は6番。 窪田綾子(くぼた あやこ) 関西出身の日本人女性。19歳。関西の大学に籍を置き、語学留学のため10月からカリフォルニア州S市に住んでいた。日常会話未満のごく初歩的な英語しか話せない。 小柄で、丸顔で細い釣り目のいかにもモンゴロイドといった平坦な顔立ちをしている。カールしたショートヘア。英語学習の成果は芳しくなく現地人の友人をつくる事は叶わず、かといって遥々訪れた異国でまで日本人とつるむ事を嫌い、周囲に溶け込めず不登校気味であった。話せる相手のいない孤独に耐えられず妥協の結果、同じ英語学校に通う、日本語が堪能な白人のアランと親しくなった。地震があったその日にアランと知り合ったばかりであったが、「白人の友人が出来た」ということに強い優越感を抱いていた。白人への憧憬の裏返しとして、白人以外の人種に対し差別的な意識がやや強い。『チキンハウス』内では、どうせ周囲には日本語がわからないだろうと高をくくり、黒人のボビィ、アラビア系のハニ、ついでに見るからにブルーカラーのランディの悪口を声高にアランに対して語っていた。 『入れ替わりの環』へ通じる地下階段の途中で死亡しているのを、地震発生後に駆けつけた関係者らに発見され、現場検証から殺人の疑いが浮上した。身につけていた長いマフラーを引っ張られ首を絞められた上で、落下してきたコンクリート片に頭部を潰された事が直接の死因となった。混乱の中でたまたま誰かがマフラーを掴んでしまっただけという不幸な事故とも考えられたが、江利夫は、綾子が店内で発した日本語の悪口を理解できてしまった者が自分とアラン以外にも誰かいて、その恨みから殺されたのではと推察した。
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