くどき【口説き】
口説き
口説き(くどき)
原型はすでに中世の「平曲」にあるとされ、近世の謡曲・浄瑠璃で大きく発展し、盆踊りにも取り入れられた。
盆踊りでは、音頭取りが短い節にのせて、7・5ないし7・7の単純な形式を繰り返して、長い物語を歌っていく。踊り子は文句の合間に簡単な囃子詞を返すことが多い。えんえんと歌いつづけることができるため、夜を徹して踊る盆踊りの際に重宝した。
歌詞の内容はいわゆる長編叙事詩で、「鈴木主水口説き」「那須与一口説き」などが全国的にポピュラー。その物語の多くは、江戸時代の流行芸能である浄瑠璃から移植されたものである。
口説きは、小唄より遅れて江戸時代に入ってから発達したものと考えられる。特に江戸後期の江州音頭の登場とともに登場した「口説き祭文」が有名で、現在の河内音頭の源流となった。
地域的分布は西日本を中心とし、郡上踊りなど中部地方あたりでも見られる。栃木県の八木節、東京の佃島盆踊りなども口説き形式であるが、源流は関西由来のものと考えられる。
クドキ

クドキ(くどき)は、浄瑠璃や歌舞伎のクライマックスで俳優と浄瑠璃とで演じる個所。「口説き」ともいう。元来は平曲や謡曲あるいは説経節で登場人物の悲しみを歌う演出であったものが、近世以降各種の口承文芸の演出も加わり多様化した。
概要
口説く=「繰り返し説く」という動詞が名詞化したもので、元来、平曲や謡曲で登場人物の悲しみを歌う演出であったものが、近世になり祭文、歌念仏、説教などの口承文芸の演出も加わり、浄瑠璃では抒情的な詞と旋律からなる「クドキ」として完成された。浄瑠璃の歌舞伎狂言化にともない、舞踊の要素なども加わって多様化した。また、「クドキ」は新内、長唄、常磐津などの他の音曲や各地の民謡にも波及していった。
平曲・謡曲におけるクドキ
平曲で、素声(しらごえ)に近い単純な旋律をもつ曲節、また、それによって演奏される部分を「クドキ」と称する。
謡曲では、拍子に合わない語りの部分を「クドキ」と称し、多くの場合、慕情や傷心などの心情が吐露される。
説経節におけるクドキ
古説経(初期の説経節)のテキストにおける節譜として、「コトバ(詞)」「フシ(節)」「クドキ(口説)」「フシクドキ」「ツメ(詰)」「フシツメ」の6種が確認されている[1][2]。説経節は基本的に「コトバ」「フシ」を交互に語ることで物語を進行させていったものと考えられるが、「コトバ」は日常会話に比較的近い言葉であっさりとした語り、「フシ」は説経独特の節回しで情緒的に、歌うように語ったものと考えられる[2][3]。これに対し、「クドキ」は沈んだ調子で哀切の感情を込めて語り、「フシクドキ」はそれに節を付けたものと考えられ、節譜への登場はわずかであるが、そこでは「いたはしや」「あらいたはしや」の語が語られるのを大きな特徴としていた[1][3][注釈 1]。
人形浄瑠璃・歌舞伎におけるクドキ
中世の芸能において悲哀を歌う演出であった「クドキ」は、浄瑠璃では抒情的な詞と旋律からなるものとして完成され、悲嘆・恋慕・恨みなどの心情を切々と訴えるようになり、劇中最大の聞かせどころとなった。浄瑠璃が歌舞伎狂言化されると、俳優と床の竹本との共演によって構成されることで、より印象強いクライマックスが演出され、浄瑠璃と台詞との技巧的な掛け合いや舞踊の要素も加わって多様化していった。
なかでも、『絵本太功記・十段目』、『近頃河原建引・堀川』、『艶容女舞衣・酒屋』、『伽羅先代萩・御殿の段』などにおけるクドキが著名である。
長唄におけるクドキ
長唄における「クドキ」は、楽曲のなかで詠嘆的な心情表現をする構成単位である。
口説き歌/江州音頭におけるクドキ
口説き歌とは、民謡などで、長編の叙事歌謡を同じ旋律の繰り返しにのせて歌われるものであり、盆踊りに歌う「踊り口説き」、木遣に歌う木遣り口説きなどがある。なお、口説き歌が江戸時代に日本から琉球王国(沖縄県)に伝わったものを「クドキ」または「クドゥチ」といい、多くは舞踊をともなう。
江州音頭は棚音頭と座敷音頭(敷座)の2種類があるが、独立した舞台芸として演じられることもあり、そのときは「クドキ」と称される。
口説き節
クドキから生じた俗曲の1ジャンルが口説き節であり、市井の情話などを長編の歌物語にしたものである。瞽女などが歌って江戸時代後期に流行した。すなわち、瞽女の歌う瞽女唄のレパートリーに「くどき(口説き節)」があり、これは浄瑠璃から影響を受けた語りもの音楽であるが、義太夫節よりも歌謡風になっている[4]。主な演目に『鈴木主水』や『八百屋お七』などがある。
脚注
注釈
出典
- ^ a b 荒木「解説・解題」(1973)pp.319-321
- ^ a b 室木「解説」(1977)pp.414-416
- ^ a b 壺齋散人(引地博信). “『日本語と日本文化』「説経の節回し(哀れみて傷る)」”. 2014年3月9日閲覧。
- ^ 吉川(1990)pp.40-44
参考文献
- 荒木繁 著「解説・解題」、荒木繁、山本吉左右校注 編『説経節(山椒太夫・小栗判官他)』平凡社〈平凡社東洋文庫〉、1973年11月。ISBN 4582802435。
- 吉川英史 著「語りもの」、山川直治 編『日本音楽の流れ』音楽之友社、1990年7月。ISBN 4-276-13439-0。
- 室木弥太郎 著「解説」、室木弥太郎校注 編『説経集』新潮社〈新潮日本古典集成〉、1977年1月。ASIN B000J8URGU。
「口説き」の例文・使い方・用例・文例
- 英語で女性の口説き方を教えてください。
- 英語で女性を口説きたい。
- あなたは彼女を口説きたいですか?
- 私はあなたを口説きに来ます。
- トムはメアリーを口説きおとすことができなかった。メアリーはトムのデートの要求を突っぱねたから。
- 私はうまく口説き落とされて, その書類にサインしてしまった.
- 女は男に口説かれてなびいた(口説き落とされた)
- 女を口説き落とそうとする
- あれは容易に口説き落とせる女じゃない
- 彼は手を換え品を換えてとうとう口説き落とした
- 彼は女将を口説きおったのだ
- 彼は口説き上手だ
- 彼女は、彼の口説き文句を拒んだ
- 彼は口説きの才能がある
- 口説き落とされる
- 口説き歌という叙事歌謡
- 口説き節という,江戸時代の通俗的な曲
- 歌舞伎で,口説き模様という,女が恋人に対して意中を訴える節回し
- (相手を)口説き落とす
- 口説き落とすことができる
口説きと同じ種類の言葉
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