狩猟 狩猟の概要

狩猟

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/10 15:39 UTC 版)

イノシシ狩りを描いた絵画
世界遺産イベリア半島の地中海沿岸の岩絵。新石器時代のディアーハンティング英語版の様子
インド象の上からの虎狩英語版 著:Thomas Williamson, 1808
鹿を仕留める源経基を描いた『貞観殿月』(月岡芳年「月百姿」)

捕獲後の目的(殺傷して利用、保護、タグ付けリリース)とは関係なく、捕獲行為を言う。

概要

漁労採集活動と並んで、人間社会の最初期から存在する生業とされている。

狩猟の最も本来的な目的は、食料や物資といった人間の個別集団の生活に不可欠な必需品を野生動物から獲得することにある。その目的となる食料や物資の典型例は、皮革油脂羽毛である。その行われる地域も世界の各地で行われてきた。

狩猟の歴史は古く、農耕牧畜が普及しない時代から今日に至るまで行われている。時代が下るにつれ牧畜業が発達した地域においては、食糧を得る目的での狩猟は減少した。

生活の必需品を得る目的に代わって、特に近代産業資本主義が興隆し貨幣経済が発達してからは、商品価値の高い資材の獲得を目的に大規模な狩猟が行われてきた。その狩猟の目的となった資材には、象牙アザラシヒョウ毛皮といったものが含まれている。このため、狩猟によって特定の種が絶滅したり生息数が激減するなどの生態系への深刻な影響が顕在化してきた。これに応じて、狩猟が行われる地域の法規や、絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(ワシントン条約)が整備され、狩猟には一定の制限が加えられたり禁止されている場合がある。ただし、密猟も後を絶たず実効性が上がっていないとの指摘もある。

狩猟の方法

アフリカ熱帯雨林に暮らす人々や、日本における銃を用いた大型獣の狩猟などは、集団によって行われる。

日本のシカやイノシシ猟を例にとると、グループの中で獲物を追い立てる役と、獲物の逃げ道沿いに待ち伏せをして銃を構えている役とに分かれて狩猟する。熊を狩るときも集団を組むのは基本である。

このように集団で捕った獲物は、狩猟の参加者あるいは村落全体で配分されるという事例が日本の他に、サン人ムブティ族などアフリカにおいてもみられる。

方法の一覧
  • 持久狩猟英語版 - 原人は獲物が疲れて動けなくなるまで追い詰めて狩る狩猟を行い持久走を行う進化を遂げた。
  • 罠猟
  • 猟犬
  • 鷹狩
  • 巻狩
  • ラップヤクトドイツ語版 ‐ ドイツでオオカミを追い込むのに利用した狩猟法。布を垂れ下げて、獲物の逃げる方法を誘導する。

目的

食糧の獲得
基本中の基本は食糧・食材の獲得である。現在でも、フランスでは狩猟で得た野生動物の肉をジビエ: gibier)と呼び、独特の風味のある高級料理として食している。
様々な物資の獲得
もうひとつの基本としては、皮革毛皮)・油脂(つの)・羽毛などを得るために狩猟がおこなわれてきた歴史がある。
野生動物管理
狩猟は人間の生活環境にとって不都合な影響を及ぼす動物を排除する駆除のためにも行われてきた。また、野生動物の個体数を調整するという自然保全上の大きな役割も担っている[1]

こうした狩猟には主に以下のケースがある。

  • 直接的に人間や住居を襲う動物を撃退し生命の安全を確保すること
  • 飼育している動物や栽培している植物を捕食する動物を駆除し、生活資源を保全すること
  • 従来は存在しなかった外来種が侵入するなど、生態系が乱されることを防止するため、または乱されてしまった生態系を原状に回復させるため、その外来種の動物等を選択的に駆除すること
  • 人間が特定の動物種の個体数を意図的に増加・減少させてしまった結果、その生態系のバランスが崩れ、それを修正するために動物種を狩猟すること

いずれの形態であっても、捕獲した鳥獣が副次的に資材を得るために用いられる場合がある。


注釈

  1. ^ 米国では、弓矢としては、「コンパウンド・ボー」と呼ばれる、滑車つきのアーチェリーがさかんに使われている。
  2. ^ 一休とんち話に殺生を禁ずる寺院において仏具に獣皮が使われていることを皮肉る挿話がある。
  3. ^ ハーフライフル銃身のサボット弾専用散弾銃。

出典

  1. ^ a b 鳥獣保護管理と狩猟”. 野生鳥獣の保護管理. 環境省. 2012年9月4日閲覧。
  2. ^ トゥーサン=サマ 1998, pp. 70–72.
  3. ^ a b c 『野生動物管理のための狩猟学』pp.34-42
  4. ^ a b c d 『野生動物管理のための狩猟学』pp.42-52
  5. ^ a b 『野生動物管理のための狩猟学』pp.61-69
  6. ^ 『野生動物管理のための狩猟学』pp.69-76
  7. ^ 消えゆくゾウたち - アフリカゾウの危機(Elephants in the Dust-The African Elephant Crisis)』トラフィックイーストアジアジャパン 2015年6月15日閲覧。
  8. ^ U.S. Fish and Wildlife Service (2011年). “2011 National Survey of Fishing, Hunting, and Wildlife-Associated Recreation” (PDF). 2012年9月4日閲覧。
  9. ^ 『野生動物管理のための狩猟学』pp.52-61
  10. ^ a b 『野生動物管理のための狩猟学』p.6
  11. ^ 『野生動物管理のための狩猟学』p.7
  12. ^ 『野生動物管理 -理論と技術-』p.11
  13. ^ a b 『野生動物管理のための狩猟学』p.8
  14. ^ 『暮らしと生業 ひと・もの・こと 2』p.162
  15. ^ 『野生動物管理のための狩猟学』p.9
  16. ^ 『野生動物管理のための狩猟学』p.10
  17. ^ 『野生動物管理のための狩猟学』pp.11-13
  18. ^ 田口洋美「マタギ―日本列島における農業の拡大と狩猟の歩み―」『地学雑誌』第113巻第2号、2004年、191-202頁。 
  19. ^ 『野生動物管理のための狩猟学』p.14
  20. ^ 暴発狩猟 山仕事は命がけ 負傷、大半は住民 しいられる自衛策 資格きびしくしたい 警察庁『朝日新聞』1970年(昭和45年)11月10日 12版 23面
  21. ^ TWINとは?”. The Women In Nature. 2013年3月27日閲覧。
  22. ^ 大日本猟友会 2012.
  23. ^ ワシ類の鉛中毒対策について”. 環境生活部 自然環境課. 北海道庁. 2012年12月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年3月27日閲覧。
  24. ^ スー・ドナルドソン、ウィル・キムリッカ『人と動物の政治共同体』尚学社、2017年。 
  25. ^ 『動物の権利入門』 88頁






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