漢方薬 生薬・民間薬と漢方薬

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漢方薬

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/28 16:36 UTC 版)

生薬・民間薬と漢方薬

桂枝加芍薬湯エキス剤

人が生薬を使い始めたときは1種類(いわゆる単味)の生薬を用いていた[15]。これらは例えば柴胡は熱を下げる、杏仁は咳を止めるといった簡単な知識の集積となった[15]。しかし、漢書『芸文志』ですでに指摘されているように、病気は、季節、気候、風土、体質などの遺伝的要因の影響を受け、他の病と併発するなど複雑化することもある[15]。そこで2種類以上の生薬を組み合わせて用いられるようになった[15]。2つ以上の生薬の組み合わせを薬対という[16]。薬対は任意の生薬の組み合わせではなく、歴代の医薬専門家によって蓄積された臨床的治療効果の知識に基づく基本単位である[16]

漢方薬は一般的に複数の生薬をあらかじめ組み合わせた方剤をさす。この方剤により、効能が大きく変わる。甘草湯(かんぞうとう)のように甘草だけの方剤もあるが、これは希な例外である。

また漢方薬は東洋医学の理論に基づき処方されるのに対し、民間薬経験的な民間伝承によるものである点で両者は異なるとされる[17]。民間薬は多くの場合が単一の薬草で原料生薬の配合比率が厳格に決まっているわけではない[5]。その効果は漢方薬においては比較的に限定的正確に働くのに対し、民間薬の効果は全般的で漠然と働くものが多いとされる[17]

漢方薬=生薬」という解釈をしている人も多いが、上記からわかるように、これは誤解である。日常的に、「漢方薬ではない生薬」の例は非常に多い。ゲンノショウコセンブリドクダミなどを煎じて、症状の詳細も体質も考慮せずにただ飲むだけであれば、それを漢方(薬)と呼ぶことは決してできない[注釈 1]

なお、日本の漢方薬では、似て非なる生薬がしばしば混同されていることがある[要出典]。例として白朮蒼朮の混同、桂皮(肉桂)と桂枝の混同などがあり、生姜乾姜の中国医学と日本漢方との定義揺れなどの問題もある。


注釈

  1. ^ なお、近代以降に考案された方剤の中にはアスピリンのような合成薬品を含むものも存在する。
  2. ^ 高橋晄正はその著作『漢方薬Q&A』(1990年(平成2年))、『漢方薬は危ない』(リュウブックス 1992年(平成4年))、『漢方薬は効かない』(ワニの本 1993年(平成5年))などで副作用(及び伝統中国医学全般)を指摘・批判している。

出典

  1. ^ 花輪寿彦 2003, pp. 286–288.
  2. ^ a b その「漢方ダイエット」、高いお金を払う価値はある?|新米医師こーたの駆け出しクリニック”. 時事メディカル. 2021年10月25日閲覧。
  3. ^ a b c 花輪寿彦 2003, pp. 350–353.
  4. ^ 日本医師会 1992, p. 29.
  5. ^ a b c d e f g h 漢方ですこやか生活 日本漢方製薬製剤協会、2019年9月21日閲覧。
  6. ^ 溝部宏毅, 新井信, 佐藤弘, 代田文彦, 小幡弘「(シンポジウム 東洋医学の新たな展開 : 基礎と臨床から)東京女子医科大学附属東洋医学研究所の現状と展望」『東京女子医科大学雑誌』第63巻第5号、東京女子医科大学学会、1993年5月、452-456頁、CRID 1050564286201094528hdl:10470/8540ISSN 0040-9022 
  7. ^ クラシエ医療用漢方エキス製剤品質ポリシーと製造管理(クラシエ)
  8. ^ 多紀元胤『難経疏証』萬笈堂〈九大コレクション〉、1819年。doi:10.20730/100271636hdl:2324/4705995 
  9. ^ [LEADERS]伝統の漢方 独自の技術革新…ツムラ社長 加藤照和氏 55読売新聞』朝刊2019年3月5日(経済面)2019年4月24日閲覧。
  10. ^ 漢方の歴史日本東洋医学会ホームページ(2019年4月24日閲覧)。
  11. ^ 花輪寿彦 2003, p. 322.
  12. ^ 慶應義塾大学医学部漢方医学センター センターの概要、2020-01-22閲覧
  13. ^ Shang, Aijing; Huwiler, Karin; Nartey, Linda; Juni, Peter; Egger, Matthias (06 2007). “Placebo-controlled trials of Chinese herbal medicine and conventional medicine-comparative study”. International Journal of Epidemiology 36 (5): 1086-1092. doi:10.1093/ije/dym119. ISSN 0300-5771. https://doi.org/10.1093/ije/dym119 2023年9月1日閲覧。. 
  14. ^ Chinese Herbal Medicine Passes FDA Phase II Clinical Trials”. ayback Machine. 2012-04-02 at the Wayback Machine閲覧。[リンク切れ]
  15. ^ a b c d 陳維華ほか原著、木村郁子ほか翻訳『薬対論』南山堂、2019年、2頁
  16. ^ a b 陳維華ほか原著、木村郁子ほか翻訳『薬対論』南山堂、2019年、3頁
  17. ^ a b 『現代商品大辞典 新商品版』 東洋経済新報社、1986年、396頁
  18. ^ セロトニン受容体拮抗作用とBDNF発現への関与を示唆
  19. ^ 白木公康「4 感冒に対する葛根湯の作用機序」『治療学』第40巻第4号、ライフサイエンス出版、2006年、413-416頁。  (要購読契約)
  20. ^ 漢方薬のトレーサビリティ確立に挑む、ツムラが対峙する中国産生薬の安全
  21. ^ 「漢方のエビデンス集積/日漢協 将来ビジョン策定」日刊工業新聞』2018年7月26日(ヘルスケア面)2018年9月30日閲覧。
  22. ^ 日本医師会 1992, p. 30.
  23. ^ a b 日本医師会 1992, pp. 20–22.
  24. ^ 花輪寿彦 2003, p. 305.
  25. ^ a b 花輪寿彦 2003, p. 302.
  26. ^ 日本医師会 1992, pp. 20–31.
  27. ^ 大塚恭男 1996, p. 104.






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