五苓散
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/09/24 20:36 UTC 版)
五苓散(ごれいさん、Wǔlíng sǎn)は、漢方薬における代表的な方剤(処方)のひとつである。出典は『傷寒論』『金匱要略』に収載される古典的処方である。医療用医薬品と、薬局等で販売している一般用医薬品がある。浮腫に対して良く使われる。主に体内の水分代謝を調整し、利水作用を示すことから、むくみ・口渇・頭痛・めまいなど「水滞(すいたい)」と呼ばれる状態に用いられる。
構成生薬
五苓散は、 「水辺の草の根・2種類のきのこ・胃腸を助ける草の根・シナモンの枝」 の組み合わせ
- 沢瀉(たくしゃ)
- サジオモダカという水辺の植物の根っこのかたまり(塊茎)。
(水を出すはたらきがある)
- 茯苓(ぶくりょう)
- マツの根に寄生して育つサルノコシカケの仲間(きのこの一種)のかたまり。
(お腹を助けて、水のめぐりを整える)
- 猪苓(ちょれい)
- チョレイマイタケというキノコのかたまり。
(おしっこを出やすくする)
- 白朮(びゃくじゅつ)
- オオバナオケラというキク科の植物の根っこ。
(胃腸を元気にして、むくみを防ぐ)
- 桂枝(けいし)
- シナモン(ニッケイ)の木の若い枝の皮。
(体をあたためて、巡りをよくする)
五苓散は以下の5種類の生薬から構成される。
| 漢方薬名 | 構成生薬 | 詳細 | 画像 |
|---|---|---|---|
| 五苓散 | 沢瀉(たくしゃ、Alismatis Rhizoma) | サジオモダカ(Alisma orientale)の塊茎。利尿作用により体内の余分な水分を排出する。 | |
| 茯苓(ぶくりょう、Poria) | マツホド(Wolfiporia cocos)の菌核。利水滲湿作用により水分停滞を改善し、消化機能を補助する。 | ||
| 猪苓(ちょれい、Polyporus) | チョレイマイタケ(Polyporus umbellatus)の菌核。利尿作用を担い、排尿を促す。 | ||
| 白朮(びゃくじゅつ、Atractylodis Rhizoma Alba) | オオバナオケラ(Atractylodes macrocephala)の根茎。脾胃を補い、水の停滞を防ぐ。 | ||
| 桂枝(けいし、Cinnamomi Cortex) | シナニッケイ(Cinnamomum cassia)の若枝の皮。身体を温めて気血の巡りを促し、水滞の改善を助ける。 |
| ラテン生薬名 | 名称 | 分量(g) |
|---|---|---|
| Poria | 茯苓(ぶくりょう) | 180 |
| Rhizoma Alismatis | 沢瀉(たくしゃ) | 300 |
| Polyporus | 猪苓(ちょれい) | 180 |
| Cortex Cinnamomi | 桂皮(けいひ) | 120 |
| Rhizoma Atractylodis macrocephalae | 白朮(びゃくじゅつ) | 180 |
効能・効果
- 体力に関わらず使用でき、喉が渇いて尿量が少ないもので、めまい、吐き気、嘔吐、腹痛、頭痛、浮腫などのいずれかを伴う次の諸症:水様性下痢、浮腫、ネフローゼ、二日酔い、急性胃腸カタル、悪心、嘔吐、めまい、胃内停水、頭痛、尿毒症、暑気あたり、浮腫、糖尿病。
- 水毒(水滞)を改善するとされる。
- これまで五苓散においてその薬理作用は十分解明されていなかったが、近年、五苓散がアクアポリン(水チャネル)の阻害作用を有することが明らかとなった[3]。
五苓散は「利水滲湿」を主作用とし、次のような効能を持つ。
- 体内の余分な水分を排出し、むくみを改善する。
- 水分代謝を整えて、口渇や尿量減少を改善する。
- 水滞による頭痛、めまい、吐き気などを軽減する。
- 暑気あたり、二日酔い、水あたりなどにも応用される。
臨床応用
現代医学的には、以下の症状や病態に用いられることが多い。
- 浮腫、尿量減少、頻尿
- 胃腸炎、下痢、水様便
- 乗り物酔い、めまい、頭痛
- 夏バテ、脱水を伴う状態
- 二日酔い
関連する方剤
関連項目
脚注
固有名詞の分類
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