漢方薬 漢方薬の概要

漢方薬

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/28 16:36 UTC 版)

漢方薬は、中国伝統学を中華人民共和国が統一化した中医学で用いられる生薬製剤「中医薬、中成薬」や韓医学で用いられる「韓薬」と共通するものも多いが、一般的に漢方薬といった場合には、日本の漢方医学で用いられる生薬製剤を意味する。ただし中国でも「中国漢方」などと言った言い方がされることがある。これは主に日本人観光客を対象に日本人になじみが無い「中薬、中成薬」では無く分かりやすく売りやすいいいかたとして「中国漢方」というのであって、学問的には一応区別される。

古代の中医薬学においては、複数の生薬を組み合わせることにより、薬理作用が強く倍増することが発見された。さらに、その薬理作用は減衰することができ、優れた生薬の組み合わせによって、西洋薬と比べると医療目的への指向性は強化されているのが最大の特徴である[1]葛根湯などの「方剤」が後世に伝えられたが、副作用が無いと誤解されていて、西洋薬と同様に定期的な診断が必要である[2]

中国の中医薬学や日本の漢方医学は同様に人体を診るところにあり、「」という概念を持っている[3]。証は主に体質を表す[3]。この点で西洋医学とは大きく異なる。漢方診療は「証に随って治療する(随証治療)」が原則であり、体全体の調子を整えることで結果的に病気を治していく[3]。このため、症状だけを見るのでなく体質を診断し、重んじる(ホーリズム)。西洋医学が解剖学的見地に立脚し、臓器組織に病気の原因を求めるのとは対照的である。

同様に、漢方薬も「証」に基づき、患者一人ひとりの体質を見ながら調合される。西洋医薬は体の状態が正常でも異常でも一定の作用を示すが、漢方薬は病理状態で初めて作用を示す[4]


注釈

  1. ^ なお、近代以降に考案された方剤の中にはアスピリンのような合成薬品を含むものも存在する。
  2. ^ 高橋晄正はその著作『漢方薬Q&A』(1990年(平成2年))、『漢方薬は危ない』(リュウブックス 1992年(平成4年))、『漢方薬は効かない』(ワニの本 1993年(平成5年))などで副作用(及び伝統中国医学全般)を指摘・批判している。

出典

  1. ^ 花輪寿彦 2003, pp. 286–288.
  2. ^ a b その「漢方ダイエット」、高いお金を払う価値はある?|新米医師こーたの駆け出しクリニック”. 時事メディカル. 2021年10月25日閲覧。
  3. ^ a b c 花輪寿彦 2003, pp. 350–353.
  4. ^ 日本医師会 1992, p. 29.
  5. ^ a b c d e f g h 漢方ですこやか生活 日本漢方製薬製剤協会、2019年9月21日閲覧。
  6. ^ 溝部宏毅, 新井信, 佐藤弘, 代田文彦, 小幡弘「(シンポジウム 東洋医学の新たな展開 : 基礎と臨床から)東京女子医科大学附属東洋医学研究所の現状と展望」『東京女子医科大学雑誌』第63巻第5号、東京女子医科大学学会、1993年5月、452-456頁、CRID 1050564286201094528hdl:10470/8540ISSN 0040-9022 
  7. ^ クラシエ医療用漢方エキス製剤品質ポリシーと製造管理(クラシエ)
  8. ^ 多紀元胤『難経疏証』萬笈堂〈九大コレクション〉、1819年。doi:10.20730/100271636hdl:2324/4705995 
  9. ^ [LEADERS]伝統の漢方 独自の技術革新…ツムラ社長 加藤照和氏 55読売新聞』朝刊2019年3月5日(経済面)2019年4月24日閲覧。
  10. ^ 漢方の歴史日本東洋医学会ホームページ(2019年4月24日閲覧)。
  11. ^ 花輪寿彦 2003, p. 322.
  12. ^ 慶應義塾大学医学部漢方医学センター センターの概要、2020-01-22閲覧
  13. ^ Shang, Aijing; Huwiler, Karin; Nartey, Linda; Juni, Peter; Egger, Matthias (06 2007). “Placebo-controlled trials of Chinese herbal medicine and conventional medicine-comparative study”. International Journal of Epidemiology 36 (5): 1086-1092. doi:10.1093/ije/dym119. ISSN 0300-5771. https://doi.org/10.1093/ije/dym119 2023年9月1日閲覧。. 
  14. ^ Chinese Herbal Medicine Passes FDA Phase II Clinical Trials”. ayback Machine. 2012-04-02 at the Wayback Machine閲覧。[リンク切れ]
  15. ^ a b c d 陳維華ほか原著、木村郁子ほか翻訳『薬対論』南山堂、2019年、2頁
  16. ^ a b 陳維華ほか原著、木村郁子ほか翻訳『薬対論』南山堂、2019年、3頁
  17. ^ a b 『現代商品大辞典 新商品版』 東洋経済新報社、1986年、396頁
  18. ^ セロトニン受容体拮抗作用とBDNF発現への関与を示唆
  19. ^ 白木公康「4 感冒に対する葛根湯の作用機序」『治療学』第40巻第4号、ライフサイエンス出版、2006年、413-416頁。  (要購読契約)
  20. ^ 漢方薬のトレーサビリティ確立に挑む、ツムラが対峙する中国産生薬の安全
  21. ^ 「漢方のエビデンス集積/日漢協 将来ビジョン策定」日刊工業新聞』2018年7月26日(ヘルスケア面)2018年9月30日閲覧。
  22. ^ 日本医師会 1992, p. 30.
  23. ^ a b 日本医師会 1992, pp. 20–22.
  24. ^ 花輪寿彦 2003, p. 305.
  25. ^ a b 花輪寿彦 2003, p. 302.
  26. ^ 日本医師会 1992, pp. 20–31.
  27. ^ 大塚恭男 1996, p. 104.






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