介護保険 財源

介護保険

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/25 07:42 UTC 版)

財源

介護給付費の財源は、税収や国債などの政府や自治体の直接収入である公費と40歳以上の国民が納付する介護保険料で賄われ、その比率は50%ずつである[17]

公費

財源の内訳のうち、公費負担部分については以下の通り。

  • 国の負担は在宅介護および予防給付の20%・施設介護および予防給付の15%(第121条)に加えて、要介護となるリスクが高い後期高齢者数の割合や市町村ごとの高齢者所得格差による収入減を調整し、市町村間の財政力の差を解消する目的の調整交付金5%(第122条)を含めた、25%および20%である。自治体関係団体は調整交付金を25%の外枠にするように求めている。
    • 国は#地域支援事業である、介護予防・日常生活支援総合事業に要する費用の額の20%(第122条の2第1項)に加えて調整交付金として5%(第122条の2第3項)を、介護予防・日常生活支援総合事業以外の地域支援事業に対して50%(第122条の2第4項)を市町村に交付する。
  • 都道府県の負担は在宅介護および予防給付は12.5%・施設介護および予防給付は17.5%である(第123条第1項)。
    • また、介護予防・日常生活支援総合事業に要する費用の額12.5%を(第123条第3項)、特定地域支援事業支援額の25%を市町村に交付する(第123条第4項)。
  • 市区町村の負担は一般会計において在宅介護および予防給付・施設介護および予防給付とも12.5%である(第124条第1項)。
    • また、介護予防・日常生活支援総合事業に要する費用の額12.5%を(第124条第3項)、特定地域支援事業支援額の25%を負担する(第124条第4項)。
公費負担の内訳
在宅 施設 介護予防・日常生活支援総合事業 その他地域支援事業
25% 20% 25% 50%
都道府県 12.5% 17.5% 12.5% 25%
市町村 12.5% 12.5% 12.5% 25%

一方で市町村には特別会計があり、所得の少ない第1号被保険者の減額された保険料の総額に基づいて算定した額が繰り入れられる(第124条の2条第1項)。 国はこの繰入金の50%(第124条の2条第2項)を、都道府県は25%(第124条の2条第3項)を負担する。

保険料

保険料負担部分は、令和3年度から令和5年度までの3年度においては第1号被保険者保険料(以下「第1号保険料」)は23%、第2号被保険者保険料(以下「第2号保険料」)は27%である(令和3年1月22日政令第9号)。

第1号被保険者の保険料

市町村は介護保険事業に要する費用(財政安定化基金拠出金の納付に要する費用を含む。)に充てるため、第1号被保険者から保険料を徴収しなければならない(第129条第1項)。

第1号被保険者の保険料は市町村民税の課税状況等に応じて、段階別に設定されていて、保険料率が原則9段階ある(施行令38条)が、市町村はこれをさらに細分化することや保険料率を変更することができる(施行令39条)。

介護保険第1号保険料
保険料額
第1期 2,911円
第2期 3,293円
第3期 4,090円
第4期 4,160円
第5期 4,972円
第6期 5,514円
第7期 5,869円
第8期 6,014円

現在の全国平均月額(第8期、2021年度〈令和3年度〉 - 2023年度〈令和5年度〉)は6,014円である[18]。第1号被保険者の介護保険料は3年に1度策定される介護保険事業計画における介護サービスの供給量等に基づき、保険者毎に基準の保険料が設定され、被保険者の所得状況等に応じて、課せられる[17]。保険料率は、保険給付に要する費用の予想額等に照らし、おおむね3年を通じ財政の均衡を保つことができるものでなければならない(第129条第3項)[19]

第1号被保険者の場合、受給する公的年金の総額が18万円以上の場合、介護保険料は公的年金[注釈 4]からの天引き(特別徴収)、それ以外の第1号被保険者は市町村から送付される納付書や口座振替によって納付する(普通徴収)(第131条)。

  • 介護保険料と国民健康保険・後期高齢者医療制度との保険料の合算額が当該年金受給額の2分の1を超える場合、国民健康保険・後期高齢者医療制度の保険料は特別徴収されなくなるが、介護保険料については特別徴収となる。
  • 普通徴収の場合、第1号被保険者の属する世帯の世帯主や第1号被保険者の配偶者も保険料を連帯して納付する義務を負う。保険料に過誤納があって徴収すべき保険料額を超えて徴収した場合、市町村は過誤納額を当該第1号被保険者に還付しなければならないが、当該第1号被保険者の未納に係る保険料その他介護保険法の規定による徴収金があるときは、当該過誤納額をこれに充当することができる(第139条)。

また市町村は、条例で定めるところにより、特別の理由がある者に対し、保険料を減免し、又はその徴収を猶予することができる(第142条)。

第2号被保険者の保険料

第2号被保険者の保険料は、市町村が徴収するのではなく(第129条第4項)、医療保険者が第2号被保険者が加入している医療保険の保険料と併せて徴収する(第150条第2項)。そして医療保険者は徴収した保険料を介護給付費・地域支援事業支援納付金として社会保険診療報酬支払基金に納付する(第150条第1項)。社会保険診療報酬支払基金はこの納付金を介護給付費交付金として(第125条第4項)、また地域支援事業支援交付金として(第126条第2項)市町村に交付され、介護保険に関する特別会計に繰り入れられる。

保険料率は、全国の給付状況に基づき、国が各医療保険者毎の総額を設定し、それに基づき医療保険者毎に保険料率を設定する[17]

  • 具体的には、国民健康保険の場合は毎月の保険料に介護保険料が加算される。協会けんぽ船員保険の場合は被保険者の標準報酬月額に所定の介護保険料率を乗じて保険料を算出し、給与から天引きされる(負担割合は労使折半[注釈 5])。健康保険組合の場合も基本的に協会けんぽと同様であるが、規約で定めることにより事業主の負担割合を増やしたり、厚生労働大臣の承認を受けた組合では定率制に代えて定額制の介護保険料を設定できる。
  • 被扶養者の場合は保険料の負担はなく(制度全体で被扶養者に必要な費用を負担する形となる)、被扶養者の有無で被保険者の保険料額に変化はない。なお、健康保険組合の場合は、被保険者本人が介護保険第2号被保険者でない場合であっても、当該被保険者に介護保険第2号被保険者である被扶養者がある場合には、規約で定めることにより、当該被保険者に介護保険料額の負担を求めることができる。

納付金については、これまでは医療保険者に所属する第2号被保険者数に応じての負担とされてきたが、令和2年度から全面総報酬割を導入することとし、各医療保険者の財政力が反映される仕組みとなる。総報酬割への移行は平成29年8月 - 平成31年3月までは2分の1、平成31年度は4分の3と段階的に実施される。

財政安定化基金

第1号および2号被保険者より徴収した保険料では不足すると見込まれる場合、介護保険の財政の安定のために都道府県が設置する財政安定化基金が不足金額の2分の1に相当する額を交付または保険料の収納状況を勘案して算定した額の貸し付けを行う(第147条第1項)。

そのため、都道府県は市町村から財政安定化基金拠出金を徴収し(第147条第3項)、市町村はこれの納付義務を負う(第147条第4項)。一方で都道府県は市町村から徴収した金額の財政安定化基金拠出金の総額の3倍に相当する額を財政安定化基金に繰り入れ(第147条第5項)、国は都道府県が繰り入れた額の3分の1に相当する額を負担する(第147条第6項)。つまり、国・都道府県・市町村の負担割合はそれぞれ3分の1である。

また市町村は介護保険の財政の安定化を図るため、その介護保険に関する特別会計において負担する費用のうち介護給付及び予防給付に要する費用、地域支援事業に要する費用、財政安定化基金拠出金の納付に要する費用並びに基金事業借入金の償還に要する費用の財源について、他の市町村と共同して、調整保険料率に基づき、市町村相互間において調整する事業を行うことができる。これを市町村相互財政安定化事業という(第148条第1項)。市町村がこの事業を行う場合、議会の議決を経てする協議により規約を定め、これを都道府県知事に届け出なければならない(第148条第2項)。都道府県は当該市町村相互財政安定化事業に係る調整保険料率についての基準を示す等必要な助言又は情報の提供をすることができる(第149条第2項)。


注釈

  1. ^ 厚生労働省が広域化を勧めてきたことから、広域連合一部事務組合で運営されているケースも多い。
  2. ^ 後期高齢者医療広域連合はここでいう「医療保険者」には含まれていない。
  3. ^ 生活保護法による医療扶助を受けている場合など
  4. ^ ここでいう「公的年金」とは、老齢基礎年金のみならず障害基礎年金障害厚生年金遺族基礎年金遺族厚生年金も含むが、老齢厚生年金は含まない(老齢厚生年金は老齢基礎年金又は障害基礎年金と併給されるため、老齢厚生年金から天引きされることは無い)。
  5. ^ 船員保険の場合は被保険者負担分の料率を控除できるとされ、実際には事業主負担の割合が高くなっている。

出典

  1. ^ 日本社会保障資料Ⅳ(1980-2000) (Report). 国立社会保障・人口問題研究所. (2005-03). Chapt.16 老人福祉. http://www.ipss.go.jp/publication/j/shiryou/no.13/data/kaidai/16.html. 
  2. ^ 介護保険制度の仕組み”. 政策について > 分野別の政策一覧 > 福祉・介護 > 介護・高齢者福祉 > 介護保険制度の概要 > 介護保険とは. 厚生労働省. 2013年8月4日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2013年5月20日閲覧。
  3. ^ 厚生労働白書 2017, p. 393.
  4. ^ 厚生労働白書 平成28年版 (Report). 厚生労働省. (2013). 資料編p235. https://www.mhlw.go.jp/toukei_hakusho/hakusho/. 
  5. ^ a b c d 厚生労働白書 2013, 資料編p.229.
  6. ^ a b c 総務省>統計局(e-STAT:政府統計の総合窓口)>国勢調査>年度別国勢調査データ 1920年~2015年
  7. ^ a b c 総務省>統計局(e-STAT:政府統計の総合窓口)>国勢調査>2015年>「日本の人口・世帯」統計表 人口等基本集計(男女・年齢・配偶関係,世帯の構成,住居の状態など)>13 年齢(各歳),男女別人口及び人口性比-全国(大正9年,昭和35年,45年,55年,平成2年~27年)
  8. ^ a b c d e f 厚生労働省>統計情報・白書>各種統計調査>厚生労働統計一覧>介護保険事業状況報告>結果の概要>平成27年度 介護保険事業状況報告(年報)
  9. ^ a b c d e f 厚生労働省>統計情報・白書>各種統計調査>厚生労働統計一覧>介護保険事業状況報告>結果の概要>平成27年度 介護保険事業状況報告(年報)>全国計 PDF版 > 第4-1表
  10. ^ 厚生労働白書 2017, p. 397.
  11. ^ a b 介護保険制度の概要”. 厚生労働省. 2015年10月11日閲覧。
  12. ^ 厚生労働白書 2013, 資料編pp.228-229.
  13. ^ 介護保険サービスに係る利用料(厚生労働省)
  14. ^ a b c 地域支援事業の実施について (Report). 厚生労働省老健局長. (2006-06-09). https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb6317&dataType=1&pageNo=1 2021年10月2日閲覧。. 
  15. ^ 在宅医療・介護連携推進事業の手引き Ver.3 (Report). 厚生労働省老健局老人保健課. (2020-09). https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000666660.pdf 2021年10月1日閲覧。. 
  16. ^ 認知症対策等総合支援事業の実施について (Report). 厚生労働省老健局長. (2011-06-06). https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000035rce-att/2r98520000035rgf_1_1.pdf 2021年10月9日閲覧。. 
  17. ^ a b c 厚生労働白書 2013, 資料編p.228.
  18. ^ “第8期介護保険事業計画期間における介護保険の第1号保険料及びサービス見込み量等について” (プレスリリース), 厚生労働省, (2021年5月14日), https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_18164.html 2021年6月9日閲覧。 
  19. ^ 介護費用と保険料の推移”. 政策について > 分野別の政策一覧 > 福祉・介護 > 介護・高齢者福祉 > 介護保険財政. 厚生労働省. 2013年5月20日閲覧。
  20. ^ “ウオッチ!2015介護報酬改定小規模デイは基本報酬引き下げへ”. 日経メディカル. (2014年11月15日). http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/201411/539477.html 
  21. ^ 特別養護老人ホームにおける待機者の実態に関する調査研究 (PDF)”. 社会保障審議会-介護給付費分科会 > 平成24年5月17日の資料. 厚生労働省. 2013年5月19日閲覧。
  22. ^ “療養病床の再編成と円滑な転換に向けた支援措置について” (PDF) (プレスリリース), 厚生労働省, (2008年3月), https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/hoken/dl/seido01.pdf 2013年5月20日閲覧。 
  23. ^ a b 2011年2月23日朝日新聞朝刊6面






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