介護保険 介護保険の概要

介護保険

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/25 07:42 UTC 版)

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日本では公的介護保険と民間介護保険があり、民間介護保険の保障内容には介護一時金や介護年金などがある。

本記事では、社会の高齢化に対応し、平成9年(1997年)の国会で制定された介護保険法に基づき、平成12年(2000年4月1日から施行された日本社会保険制度について記述する。以下、介護保険法については条数のみ、介護保険法施行規則については施行規則、介護保険法施行令については施行令と記す。

設立経緯

介護保険法が設立される以前の日本の公的介護制度は、老人福祉法による福祉の措置として、やむを得ない事由による行政措置の範疇に留まっていた[1]。平成に入ってから、それに代わる新たな制度が議論され、ゴールドプランなどの政策と合わせて、おおむねドイツの介護保険制度をモデルに介護保険制度が導入された[2]。介護保険料については、新たな負担に対する世論の反発を避けるため、導入当初は半年間徴収が凍結され、平成12年(2000年)10月から半額徴収、平成13年(2001年)10月から全額徴収という経緯をたどっている。

目的等

介護保険法は、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者等について、これらの者が尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うため、国民の共同連帯の理念に基づき介護保険制度を設け、その行う保険給付等に関して必要な事項を定め、もって国民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的とする(第1条)。

介護保険制度では、以下の点にねらいがある。

  • 市町村による行政措置から、社会保険制度への転換
  • 要介護者の家族を介護負担と介護費用負担から解放し、社会全体の労働力と財源で介護する
  • 要介護者が本人や家族の所得や財産にかかわらず、要介護者本人や家族が望む必要で十分な介護サービスを介護事業者から受けられる
  • 多様な事業者によるサービスを提供し、専門的サービス産業としての介護産業を確立する。
  • 医療と介護の役割分担を明確化し、急性期や慢性期の医療の必要がない要介護者を介護サービスにより介護し、介護目的の入院を介護施設に移す。

介護保険制度を適切に運用するため、

  • 要介護状態等の軽減又は悪化の防止
  • 医療との連携に十分配慮
  • 被保険者の選択に基づき、適切な保健医療サービス及び福祉サービスが、多様な事業者又は施設から、総合的かつ効率的に提供されるよう配慮
  • 可能な限り、その居宅において、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるように配慮

されなければならない(第2条第2項 - 4項)。

そして国民の努力及び義務として介護保険制度は

  • 要介護状態となることを予防するため、加齢に伴って生ずる心身の変化を自覚して常に健康の保持増進に努める
  • 要介護状態となった場合においても、進んでリハビリテーションその他の適切な保健医療サービス及び福祉サービスを利用することにより、その有する能力の維持向上に努める
  • 共同連帯の理念に基づき、介護保険事業に要する費用を公平に負担する

ことを求めている(第4条)。

介護サービスの利用者は在宅サービスを中心に着実に増加し、2000年4月には149万人であったサービス利用者数は、2015年(平成27年)4月には511万人と、約3.4倍になっている[3]

保険者

保険者は原則として市町村及び特別区(以下、特に断らない限り「市町村」と略す)であり[注釈 1]、介護保険に関する収入及び支出について、政令で定めるところにより、特別会計を設けなければならない(第3条)。厚生労働大臣の定める基本方針に即して、市町村は保険給付の円滑な実施について「市町村介護保険事業計画」を3年を1期として定める(第117条)。

保険者が小規模であるほど、予防による財政効果が目に見えやすいが、安定した経営が難しい。このため、介護保険事業は保険者たる市町村を国や都道府県、及び医療保険各法による医療保険者(全国健康保険協会健康保険組合国民健康保険組合、都道府県、市町村(特別区を含む。)、共済組合[注釈 2])が重層的に支える仕組みとなっている。すなわち、

  • 国は、介護保険事業の運営が健全かつ円滑に行われるよう保健医療サービス及び福祉サービスを提供する体制の確保に関する施策その他の必要な各般の措置を講じなければならない(第5条第1項)。
  • 都道府県は、介護保険事業の運営が健全かつ円滑に行われるように、必要な助言及び適切な援助をしなければならない(第5条第2項)。
  • 国及び地方公共団体は、被保険者が、可能な限り、住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、保険給付に係る保健医療サービス及び福祉サービスに関する施策、要介護状態等となることの予防又は要介護状態等の軽減若しくは悪化の防止のための施策並びに地域における自立した日常生活の支援のための施策を、医療及び居住に関する施策との有機的な連携を図りつつ包括的に推進するよう努めなければならない(第5条第3項)。
  • 国及び地方公共団体は、被保険者に対して認知症に対する国民の関心及び理解を深め、認知症である者への支援が適切に行われるよう、認知症に関する知識の普及及び啓発に努めなければならない。国及び地方公共団体は、被保険者に対して認知症に係る適切な保健医療サービス及び福祉サービスを提供するため、認知症の予防、診断及び治療並びに認知症である者の心身の特性に応じたリハビリテーション及び介護方法に関する調査研究の推進並びにその成果の活用に努めるとともに、認知症である者を現に介護する者の支援並びに認知症である者の支援に係る人材の確保及び資質の向上を図るために必要な措置を講ずることその他の認知症に関する施策を総合的に推進するよう努めなければならない(第5条の2)。
  • 医療保険者は、介護保険事業が健全かつ円滑に行われるよう協力しなければならない(第6条)。

注釈

  1. ^ 厚生労働省が広域化を勧めてきたことから、広域連合一部事務組合で運営されているケースも多い。
  2. ^ 後期高齢者医療広域連合はここでいう「医療保険者」には含まれていない。
  3. ^ 生活保護法による医療扶助を受けている場合など
  4. ^ ここでいう「公的年金」とは、老齢基礎年金のみならず障害基礎年金障害厚生年金遺族基礎年金遺族厚生年金も含むが、老齢厚生年金は含まない(老齢厚生年金は老齢基礎年金又は障害基礎年金と併給されるため、老齢厚生年金から天引きされることは無い)。
  5. ^ 船員保険の場合は被保険者負担分の料率を控除できるとされ、実際には事業主負担の割合が高くなっている。

出典

  1. ^ 日本社会保障資料Ⅳ(1980-2000) (Report). 国立社会保障・人口問題研究所. (2005-03). Chapt.16 老人福祉. http://www.ipss.go.jp/publication/j/shiryou/no.13/data/kaidai/16.html. 
  2. ^ 介護保険制度の仕組み”. 政策について > 分野別の政策一覧 > 福祉・介護 > 介護・高齢者福祉 > 介護保険制度の概要 > 介護保険とは. 厚生労働省. 2013年8月4日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2013年5月20日閲覧。
  3. ^ 厚生労働白書 2017, p. 393.
  4. ^ 厚生労働白書 平成28年版 (Report). 厚生労働省. (2013). 資料編p235. https://www.mhlw.go.jp/toukei_hakusho/hakusho/. 
  5. ^ a b c d 厚生労働白書 2013, 資料編p.229.
  6. ^ a b c 総務省>統計局(e-STAT:政府統計の総合窓口)>国勢調査>年度別国勢調査データ 1920年~2015年
  7. ^ a b c 総務省>統計局(e-STAT:政府統計の総合窓口)>国勢調査>2015年>「日本の人口・世帯」統計表 人口等基本集計(男女・年齢・配偶関係,世帯の構成,住居の状態など)>13 年齢(各歳),男女別人口及び人口性比-全国(大正9年,昭和35年,45年,55年,平成2年~27年)
  8. ^ a b c d e f 厚生労働省>統計情報・白書>各種統計調査>厚生労働統計一覧>介護保険事業状況報告>結果の概要>平成27年度 介護保険事業状況報告(年報)
  9. ^ a b c d e f 厚生労働省>統計情報・白書>各種統計調査>厚生労働統計一覧>介護保険事業状況報告>結果の概要>平成27年度 介護保険事業状況報告(年報)>全国計 PDF版 > 第4-1表
  10. ^ 厚生労働白書 2017, p. 397.
  11. ^ a b 介護保険制度の概要”. 厚生労働省. 2015年10月11日閲覧。
  12. ^ 厚生労働白書 2013, 資料編pp.228-229.
  13. ^ 介護保険サービスに係る利用料(厚生労働省)
  14. ^ a b c 地域支援事業の実施について (Report). 厚生労働省老健局長. (2006-06-09). https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb6317&dataType=1&pageNo=1 2021年10月2日閲覧。. 
  15. ^ 在宅医療・介護連携推進事業の手引き Ver.3 (Report). 厚生労働省老健局老人保健課. (2020-09). https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000666660.pdf 2021年10月1日閲覧。. 
  16. ^ 認知症対策等総合支援事業の実施について (Report). 厚生労働省老健局長. (2011-06-06). https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000035rce-att/2r98520000035rgf_1_1.pdf 2021年10月9日閲覧。. 
  17. ^ a b c 厚生労働白書 2013, 資料編p.228.
  18. ^ “第8期介護保険事業計画期間における介護保険の第1号保険料及びサービス見込み量等について” (プレスリリース), 厚生労働省, (2021年5月14日), https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_18164.html 2021年6月9日閲覧。 
  19. ^ 介護費用と保険料の推移”. 政策について > 分野別の政策一覧 > 福祉・介護 > 介護・高齢者福祉 > 介護保険財政. 厚生労働省. 2013年5月20日閲覧。
  20. ^ “ウオッチ!2015介護報酬改定小規模デイは基本報酬引き下げへ”. 日経メディカル. (2014年11月15日). http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/201411/539477.html 
  21. ^ 特別養護老人ホームにおける待機者の実態に関する調査研究 (PDF)”. 社会保障審議会-介護給付費分科会 > 平成24年5月17日の資料. 厚生労働省. 2013年5月19日閲覧。
  22. ^ “療養病床の再編成と円滑な転換に向けた支援措置について” (PDF) (プレスリリース), 厚生労働省, (2008年3月), https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/hoken/dl/seido01.pdf 2013年5月20日閲覧。 
  23. ^ a b 2011年2月23日朝日新聞朝刊6面






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