両生類 生理

両生類

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/27 23:35 UTC 版)

生理

  • 変温動物であり、体温は周囲の気温とともに変化する。温帯から寒冷地に住む種は冬眠を行う。
  • 心臓は、2心房1心室より構成されるが無尾類と有尾類では若干構造が違い、心房中隔が無尾類では完全だが有尾類では隙間があるという違いがある[注釈 2][4]
    肺循環体循環の区別があるが、心室中隔がないので動脈血静脈血が心室で混じり合って体全体および呼吸器の双方に送られる。ただし大動脈と肺皮動脈(哺乳類で言う肺動脈)の付け根に「らせん弁」というものがあり、心室の収縮時に入ったときの位置関係から動脈血はらせん弁で隠された肺皮動脈にはほぼ入らず、逆に静脈血は大半が肺皮動脈に流れる(一部は左大動脈にも流れる)[5]。また、皮膚呼吸への依存が大きいため体循環側でもガス交換が行われているほか、無尾類では肺循環側(肺皮動脈)からも体表側に通じる血管が存在しており、成体になると鰓に行く血管(腹大動脈から分岐)が退化する代わりに肺皮動脈から皮下動脈が分岐し、心臓から直接こちらに血液が送られるように成って皮膚呼吸の効率を高めている[6]
  • 生息域は一般に、川、沼、湖などの淡水およびその周辺であることから、海水魚からではなく、淡水魚から派生して誕生した動物群であると考えられている。実際に、両生類の体は塩分に対する耐性が低く、海産の種も確認されていない。(汽水域に生息する種はいる:カニクイガエル)ただし化石種には海に住むものも存在した。
  • 現生種・化石種を含め、完全な植物食の種は知られていない[7]
  • アミノ酸の代謝などによって生ずるアンモニアは、両生類にとっても有害な物質である。このアンモニアの排泄を行う方法も生育環境で大きく異なり、無尾目同士でも普通のカエルの場合は幼生(オタマジャクシ)の時は鰓からアンモニアのまま大半を排出する[8]が、変態後はアンモニアを尿素に変えて腎臓から排出する[8]方が主流となるのだが、生涯を水中ですごす種類の場合は幼生・成体共にアンモニア排出のままになる。これも、水を潤沢に利用できる[注釈 3]のか、そうではないのかが関係しているものと見られている。
普通のカエルと生涯水棲のゼノパス(ツメガエル)の窒素排出物の構成比の違い[注釈 4][9]
種類 アンモニア 尿素
カエル(幼生) 75 10
カエル(成体) 3.2 91.4
ゼノパス(幼生) 78 22
ゼノパス(成体) 75 25

注釈

  1. ^ メキシコジムグリガエルなど乾燥地帯に生息する種類もいるが、これも湿った地中に住むもので繁殖も雨季の水たまりを利用するなど、結局は水に依存している。
  2. ^ なお鰓呼吸をする幼体でも心臓の構造はそのままであり、1心房1心室の普通の魚類(魚類でも肺魚類は2心房1心室で心房中隔の構造は有尾類に近い構造をしている)とは異なる。
  3. ^ アンモニアは尿素より有毒なので溜めておけず、薄い状態で排出する必要がある(=同じ量の窒素分を捨てるのに大量の水がいる)。
  4. ^ 単位及び普通のカエルの属名が不詳なのは原文ママ。
  5. ^ 魚類でも肺魚類やポリプテルス類の幼魚は例外的に外鰓を持つ
  6. ^ このグループも幼生期には肺の原器があるので二次的に肺が退化したと推測されている。
  7. ^ アカガエル科のウシガエルRana catesbeianaリオグランデヒョウガエルRana barlandieriミナミヒョウガエルRana sphenocephala、スキッパーガエルEuphlyctis cyanophlyctis。アマガエル科のコーラスガエルPseudacris triseriata、ピパ科のアフリカツメガエルXenopus laevisコンゴツメガエルHymenochirus boettgeri。スキアシガエル科のプレーンスキアシガエルScaphiopus bombifrons。の8種類は2002年時点で田中邦明が文献で幼体時の肺呼吸の報告を確認済み。

出典

  1. ^ 長谷川政美、『系統樹をさかのぼって見えてくる進化の歴史』p126、2014年10月25日、ベレ出版、ISBN 978-4-86064-410-9
  2. ^ 新撰理科書 2上 訂2版』 - 国立国会図書館デジタルコレクション
  3. ^ 新撰普通動物学 訂正増補3版』 - 国立国会図書館デジタルコレクション
  4. ^ 代表・内田亨「脊椎動物とはどんなものか」、『原色現代科学大事典 5-動物II』、株式会社学習研究社、昭和43年、P7図4。
  5. ^ 荒木忠雄「4-生命の保持」『原色現代科学大事典 7-生命』吉川秀男・西沢一俊代表、株式会社学習研究社、昭和44年、P385図3「両生類のらせん弁」
  6. ^ 【質問】両生類の幼生の血液循環のしくみについて日本動物学会一般向けページ、「動物学会 Q&A ~高等学校の先生方へ~」2014.2.23掲載。
  7. ^ 松井正文、『両生類の進化』p3、東京大学出版会、1996年
  8. ^ a b 内山実, 今野紀文, 兵藤晋、「尿素を利用する体液調節:その比較生物学, 比較内分泌学」 2009年 35巻 134号 p.175-189, doi:10.5983/nl2008jsce.35.175, 日本比較内分泌学会
  9. ^ 荒木忠雄「4-生命の保持」『原色現代科学大事典 7-生命』吉川秀男・西沢一俊代表、株式会社学習研究社、昭和44年、P397表1「後生動物の窒素排出物の組成」
  10. ^ 『原色現代科学大事典 5動物II』、宮地伝三郎(責任編集者)、株式会社学習研究社、昭和43年(1968年)、p.163・181。
  11. ^ (田中2002)p.4
  12. ^ (田中2002)p.3-4
  13. ^ 『原色現代科学大事典 5動物II』、宮地伝三郎(責任編集者)、株式会社学習研究社、昭和43年(1968年)、p.181。
  14. ^ ロナルド・ルイス・ボネウィッツ著、青木正博訳『ROCK and GEM 岩石と宝石の大図鑑』誠文堂新光社 2007年 349ページ
  15. ^ (田中2002)p.5
  16. ^ Schoch, Rainer R.; Werneburg, Ralf; Voigt, Sebastian (2020). “A Triassic stem-salamander from Kyrgyzstan and the origin of salamanders”. Proceedings of the National Academy of Sciences 117 (21): 11584–11588. doi:10.1073/pnas.2001424117. PMC 7261083. PMID 32393623. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7261083/. 
  17. ^ Pardo, Jason D.; Small, Bryan J.; Huttenlocker, Adam K. (2017-07-03). “Stem caecilian from the Triassic of Colorado sheds light on the origins of Lissamphibia” (英語). Proceedings of the National Academy of Sciences 114 (27): E5389–E5395. doi:10.1073/pnas.1706752114. ISSN 0027-8424. PMID 28630337. http://www.pnas.org/content/114/27/E5389. 





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