も・る
モル【(ドイツ)Mol】
読み方:もる
国際単位系(SI)の基本単位の一で、物質量の単位。1モルは、6.02214076×1023個の分子・原子・イオン・電子などの粒子、またはその集合体で構成された系の物質量として定義される。記号mol
[補説] 初め、1モルは12グラムの炭素12の中に存在する原子の数と等しい要素粒子の物質量として定義されたが、2019年5月20日以降、アボガドロ定数を用いた新定義が適用された。
モル【MOL】
も・る【▽守る】
も・る【漏る/×洩る】
も・る【盛る】
モル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/02/26 07:35 UTC 版)
モル mole |
|
---|---|
記号 | mol |
系 | 国際単位系 (SI) |
種類 | 基本単位 |
量 | 物質量 |
定義 | 6.02214076×1023(アボガドロ定数) の要素粒子又は要素粒子の集合体(組成が明確にされたものに限る)で構成された系の物質量[1][2] |
由来 | その物質の分子量の数字にグラムをつけた質量に含まれる物質量 |
語源 | ドイツ語 Molekül(分子) |
モル(英語: mole /məʊl/, フランス語: mole, 記号: mol)は国際単位系 (SI) における物質量の単位である。1971年の第14回国際度量衡総会(CGPM)の決議によって、国際単位系の基本単位として導入された[3]。
定数
モルは本来は、全ての物質は分子よりできているとの考えの元に、その物質の分子量の数字にグラムをつけた質量に含まれる物質量を 1 モルと定義した。例えば酸素分子の分子量は 32.0 なので、1 mol の酸素分子は 32.0 g となる。物質量という概念は19世紀の近代化学発祥のころから使われているものであり、この単位は当初はグラム原子、グラム分子などと呼ばれていた。
しかし、イオン結合や金属結合には分子と呼べるものがないことがわかり、共有結合の場合でも単純な分子が存在しないものがあることもわかってきた。そこで、物質を表す化学式で示される元素の原子量の和を化学式量と呼び、それにグラムをつけた質量に含まれる物質量を 1 mol と定義することとした。これにより、1 mol の塩化ナトリウムは 58.5 g、鉄は 55.85 g と表せるようになった。
1 モルに含まれる要素粒子の数は、要素粒子の種類にかかわらず一定であって、6.02214076×1023 個である[10]。この数を「アボガドロ数」という。アボガドロ数は、前記のように24桁の整数であり、また無次元量である点で「アボガドロ定数」とは異なる。
また 1 モルの理想気体は、標準状態 (STP: standard temperature and pressure) では同じ体積(約22.41396954 L(リットル))を占める[11]。このように、モルは化学の分野では基本となる重要な単位である。
1913年頃から、原子の中には質量数の異なる数種の原子(同位体)があることがわかってきた。長年、モルの定義には酸素分子を使用し、酸素分子 32 g を 1 mol としてきたが、酸素原子には天然のものでも質量数 16 のほか 17, 18 のものがあることがわかった。すなわち、それまでは質量数 16, 17, 18 の酸素原子が混ざった状態のものでモルを定義していたことになる。それがわかってから、物理学の分野では質量数 16 の酸素だけを分離して(完全に分離するのは困難なので、分離できたと仮想して)、質量数 16 の酸素による酸素分子 32 g の物質量を 1 mol と再定義した。しかし、化学者たちはそれまで通りのモルの定義を使い続けた。
物理学と化学とで異なるモルを使い続けるのは不都合があるため、1960年に国際純粋・応用物理学連合 (IUPAP) と国際純正・応用化学連合 (IUPAC) が協議して、共通的に炭素12に原子量 12 の値を与えることとした。ここから、1 mol は 12 g の炭素12の物質量という旧定義が導き出せる。炭素12が選ばれたのは、これが天然の炭素の大部分を占めているためである。 炭素原子によるモルの定義を「炭素スケール」とよび、それまでの酸素基準と分けて呼ぶこともある。
モルをSI基本単位とすることおよびその定義は、1971年の国際度量衡総会 (CGPM) で採択された[12]。
1980年に国際度量衡委員会(CIPM)により以下の補則が加えられていた。これはモルの定義の一部であった[9]。
:補則:この定義の中で、炭素12は結合しておらず、静止しており、基底状態にあるものを基準とすることが想定されている。
2019年5月20日からアボガドロ定数を定義値とする現行の定義になった。
この定義により、モルはキログラムの定義に依存しないものになった。 なお、新定義では、アボガドロ定数を正確に6.02214076×1023 /molとすることによりモルを定義したので、1モルの炭素12の質量は、12 gではなくなり、11.9999999958(36) gという実験値となった[13]。
日本の法令上は、計量法第3条の規定[14]に基づく計量単位令(平成4年政令第357号)が、計量単位令の一部を改正する政令(令和元年5月17日政令第6号)により改正され、2019年5月20日に施行することにより変更された。
批判
1971年にモルが国際単位系に採用されて以来、モルをメートルや秒と同等の単位として扱うことに対する多くの批判が生じている。
- 所与の量の物質に含まれる分子の数は固定の無次元量であり、明確な基本単位を必要とせず、単純に数として表現することができる[15][16]。
- モルは、時代遅れの連続体的な物質の概念(完全な原子論的ではない)に基づいている[17]。
- SIにおける熱力学的モルは分析化学とは無関係であり、先進経済に回避可能なコストをもたらす可能性がある[18]。
- モルは真の計量単位というより「パラメトリック」な単位であり、物質量は「パラメトリック」な基本量である[19]。
- SIでは、実体の数を次元「1」の量として定義しており、「実体」と「連続量の単位」の間の存在論的な区別を無視している[20]。
符号位置
記号 | Unicode | JIS X 0213 | 文字参照 | 名称 |
---|---|---|---|---|
㏖ | U+33D6 |
- |
㏖ ㏖ |
モル |
Unicodeには、モルを表す上記の文字が収録されている。これはCJK互換用文字であり、既存の文字コードに対する後方互換性のために収録されているものであるので、使用は推奨されない[21][22]。
脚注
注釈
- ^ 国際単位系における正式の言語はフランス語である。ここでの定義は英語及びこれを日本語に翻訳したものである。正式な本文の確認が必要な場合又は文章の解釈に疑義がある場合はフランス語版を確認する必要がある。
出典
- ^ a b 計量単位令 別表第1、項番6、物質量の欄
- ^ a b 計量単位令の一部を改正する政令案新旧対照条文 改正案、別表第一(第二条関係)、「六 物質量 モル」の欄
- ^ <国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版 pp.56-57、産業技術総合研究所、計量標準総合センター、2020年4月
- ^ 計量単位規則 別表第2、物質量の欄
- ^ Wilhelm Ostwald (1893). Hand- und Hilfsbuch zur Ausführung Physiko-Chemischer Messungen. Verlag von Wilhelm Engelmann, Leipzig.. p. 119
- ^ 国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版 pp.139-140、産業技術総合研究所、計量標準総合センター、2020年4月
- ^ 国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版 p.98、産業技術総合研究所、計量標準総合センター、2020年4月
- ^ 国際単位系(SI)第 9 版(2019) p.102、産業技術総合研究所、計量標準総合センター、2020年3月
- ^ a b 国際文書 国際単位系 (SI) 第 8 版日本語版 (2006)、p. 26、2.1.1.6 物質量の単位(モル)。
- ^ Avogadro constant CODATA2014
- ^ molar volume of ideal gas (273.15 K, 101.325 kPa) The NIST Reference on Constants, Units, and Uncertainty. US National Institute of Standards and Technology. 2019-05-20. 2018 CODATA recommended values
- ^ 国際文書 国際単位系 (SI) 第 8 版日本語版 (2006)、p. 20。
- ^ molar mass of carbon-12 The NIST Reference on Constants, Units, and Uncertainty. US National Institute of Standards and Technology. 2019-05-20. 2018 CODATA recommended values
- ^ 第三条 前条第一項第一号に掲げる物象の状態の量のうち別表第一の上欄に掲げるものの計量単位は、同表の下欄に掲げるとおりとし、その定義は、国際度量衡総会の決議その他の計量単位に関する国際的な決定及び慣行に従い、政令で定める。
- ^ de Bièvre, Paul; Peiser, H. Steffen (1992). “'Atomic Weight' — The Name, Its History, Definition, and Units”. Pure and Applied Chemistry 64 (10): 1535–43. doi:10.1351/pac199264101535 .
- ^ Giunta, C. J. (2015) "The Mole and Amount of Substance in Chemistry and Education: Beyond Official Definitions" J. Chem. Educ. 92: 1593-1597, doi:10.1021/ed2001957.
- ^ Schmidt-Rohr, K. (2020). "Analysis of Two Definitions of the Mole That Are in Simultaneous Use, and Their Surprising Consequences" J. Chem. Educ. 97: 597-602, doi:10.1021/acs.jchemed.9b00467
- ^ Price, Gary (2010). “Failures of the global measurement system. Part 1: the case of chemistry”. Accreditation and Quality Assurance 15 (7): 421–427. doi:10.1007/s00769-010-0655-z.[1].
- ^ Johansson, Ingvar (2010). “Metrological thinking needs the notions of parametric quantities, units, and dimensions.”. Metrologia 47 (3): 219–230. Bibcode: 2010Metro..47..219J. doi:10.1088/0026-1394/47/3/012 .
- ^ Cooper, G; Humphry, S (2010). “The ontological distinction between units and entities”. Synthese 187 (2): 393–401. doi:10.1007/s11229-010-9832-1.
- ^ “CJK Compatibility” (2015年). 2016年2月21日閲覧。
- ^ “The Unicode Standard, Version 8.0.0”. Mountain View, CA: The Unicode Consortium (2015年). 2016年2月21日閲覧。
参考文献
- [2] BIPM 著、産業技術総合研究所 計量標準総合センター 訳『国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版』産業技術総合研究所 計量標準総合センター、2020年3月。
- [3] 計量単位令. e-GOV. (1992)
関連項目
モル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/27 23:40 UTC 版)
「SI基本単位の再定義 (2019年)」の記事における「モル」の解説
モルの定義は根本的に変更された。旧定義はキログラムに関連づけられていたが、新しい定義では系に含まれる構成要素の数を定義値とすることで定義される。この変更により、モルはキログラムの定義に依存しないものになった。 また、以下の値は不確かさのある実験値となる。 12Cのモル質量。旧定義では正確に12 g/molであった。新定義では、11.9999999958(36) g/molである モル質量定数 。旧定義では正確に1 g/molであった。新定義では、0.99999999965(30) g/molである。 0.012 kgの12Cの物質量。旧定義では正確に1 molであった。 次の値は、旧定義でも新定義でも、不確かさのある値である。 0.012 kgの12Cに含まれる原子の数。旧定義ではアボガドロ定数に不確かさがあるため。新定義ではアボガドロ定数と無関係になるため。 統一原子質量単位(ダルトン)の定義は、現行どおり12Cの質量の.mw-parser-output .sfrac{white-space:nowrap}.mw-parser-output .sfrac.tion,.mw-parser-output .sfrac .tion{display:inline-block;vertical-align:-0.5em;font-size:85%;text-align:center}.mw-parser-output .sfrac .num,.mw-parser-output .sfrac .den{display:block;line-height:1em;margin:0 0.1em}.mw-parser-output .sfrac .den{border-top:1px solid}.mw-parser-output .sr-only{border:0;clip:rect(0,0,0,0);height:1px;margin:-1px;overflow:hidden;padding:0;position:absolute;width:1px}1/12のままである。よって、以下の値は変化しない。 ダルトンで表したときの12Cの質量。新しいSIの定義でも、現行どおり正確に12 ダルトンである。キログラムで表したときに不確かさのある値となることも、現行どおりである。 ダルトンで表したときの原子質量定数 。現行どおり正確に1 ダルトンである。キログラムで表したときに不確かさのある値となることも、現行どおりである。 旧定義 1. The mole is the amount of substance of a system which contains as many elementary entities as there are atoms in 0.012 kilogram of carbon 12; its symbol is “mol”.2. When the mole is used, the elementary entities must be specified and may be atoms, molecules, ions, electrons, other particles, or specified groups of such particles.日本語訳:1. モルは、0.012 kg の炭素12に含まれる原子と等しい数の構成要素を含む系の物質量である。2. モルを使うときは、要素粒子が指定されなければならないが、それは原子、分子、イオン、電子、その他の粒子またはこの種の粒子の特定の集合体であってよい。 新定義 The mole, symbol mol, is the SI unit of amount of substance. One mole contains exactly 6.02214076×1023 elementary entities. This number is the fixed numerical value of the Avogadro constant, NA, when expressed in the unit mol−1 and is called the Avogadro number.The amount of substance, symbol n, of a system is a measure of the number of specified elementary entities. An elementary entity may be an atom, a molecule, an ion, an electron, any other particle or specified group of particles.日本語訳:モル (mol) は物質量の単位である。1 モルは正確に 6.02214076×1023 の要素粒子を含む。この数値は単位 mol−1 による表現でアボガドロ定数 NA の固定された数値であり、アボガドロ数と呼ばれる。物質量 (n) は指定された要素粒子の数を表す尺度である。要素粒子は、原子、分子、イオン、電子、その他の粒子またはこの種の粒子の特定の集合体であってよい。
※この「モル」の解説は、「SI基本単位の再定義 (2019年)」の解説の一部です。
「モル」を含む「SI基本単位の再定義 (2019年)」の記事については、「SI基本単位の再定義 (2019年)」の概要を参照ください。
モル
「モル」の例文・使い方・用例・文例
- モルトウイスキー
- その末期患者はモルヒネを大量に与えられた
- 先生がサケのスモルトを見せてくれた。
- 絵画統覚テストはハーヴァード大学のアメリカ人心理学者ヘンリー・マレーとクリスチアナ・モルガンにより考案された。
- モルドバの通貨はレウだ。
- そのモルフォチョウは私のてのひらほどの大きさだった。
- JPモルガン社がJPモルガン世界国債指数を発表した。
- 彼らのひとりがモルモン教徒だと言うことが分かった。
- 今日は私のモルディブ旅行での出来事について話します
- 1モルの氷を水にするときと、1モルの水を水蒸気にするとき、より多くのエネルギーが必要なのは?
- 彼女はモルヒネ注射によって無痛の状態になった。
- さらにインド洋のモルジブ諸島の中には、完全に水没する島も出ることが予想される。
- モルヒネは習慣性が強い.
- レンガをモルタルに固定する.
- 水硬セメント[モルタル].
- 彼はぶどう酒貯蔵室に何種類ものすばらしいモルトウイスキーを貯蔵している.
- モルトウイスキー.
- モルヒネやコデインは今でも鎮痛剤として処方される.
- モルヒネ中毒
- モルヒネ注射
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