青春編(第37回〜第86回)
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「おしん」の記事における「青春編(第37回〜第86回)」の解説
第一次世界大戦の大戦景気に沸く大正5年(1916年)おしんが加賀屋へ奉公に来て7年の歳月が過ぎた。16歳になったおしんは女中として家事、裁縫(和裁)の他、くにに茶道や帳場の手伝いまで仕込まれながら忙しく働いていた。一方、加代は「加賀屋は小夜が継げばいい」と、自分は絵描きを目指す自由奔放な女に成長し女学校を辞めようとしていた。そんな折、おしんに縁談が持ち込まれる。相手は相場で儲けた酒田の成金大店(おおだな)、桜木家の凡庸な息子であったが貧乏の辛さを知るおしんはくにの紹介でもあり話を受け入れる。 ある日、おしんはみのに頼まれ、日本海の絵を描くために砂浜に出かけた加代を呼びに行き、そこで警察に追われる高倉浩太(たかくらこうた)を助けることになった。加代は浩太を好きになる。ところが浩太はおしんの方を気に入り、何かと用を頼む。浩太は地主の息子でありながら小作争議に命をかける男だった。おしんはそれを知り、浩太に心惹かれるようになる。浩太は過去に奉公人との悲恋がありそれが今の運動をするきっかけだという。浩太は酒田を去るが、加代に内緒でおしんが浩太と会ったことが加代に知られる。おしんは縁談と浩太の間で揺れる。 ふじが加賀屋に口利きしてもらい、女丁持になる。加代はおしんへの浩太の手紙を盗み読みしてショックを受け、画材だけを持って家を飛び出し、酒田で再びおしんと待ち合わせている浩太の下へ行く。加代はおしんに縁談があることを浩太に告げ、「私を東京に連れて行って下さい」と強引に二人で上京する。おしんは桜木の家に手伝いに行くが、酔って絡んできた婚約者である桜木の息子を池に突き落とし、縁談は破談になる。おしんは縁談を破談にしたこと、加代と浩太のことを加賀屋の人間に隠していることに耐えられず加賀屋から暇を貰い帰郷する。 おしんの戻った実家に、奉公先の製糸工場で肺病を患い、瀕死の姉はるが帰ってくる。おしんははるが密かに好意を寄せていた製糸工場の監督員平野にはるの見舞いに来てもらう。作造が口入れ屋勝次を連れてきておしんの料亭奉公を決めるが、はるは勝次が製紙工場の女工を騙して女郎部屋に若い娘を売っていた女衒と気づき、おしんに自分が髪結いになるために行く予定だった東京の髪結いの師匠の所書きと手持ちの銭を渡し、故郷から逃げるように言い含めて19歳の生涯を閉じる。おしんはふじの協力で家を抜け出し上京。浅草の髪結い長谷川たかの下へ向かった。 おしんはたかの店・髪結長谷川まで来るが、姉・はるの所書きを見せても人を入れる余裕がないと言われる。おしんは店の裏手に回り、消えかけの竈火を熾し台所や店を手伝った。おしんの働きぶりに、たかは様子を見ることにする。だが奉公人の中で一番若い下働きりつはおしんに仕事を取られ文句をつける。翌日、おしんはりつに迷惑がかかるなら諦めるとたかに申し出るが、たかはやる気があるなら何人でも置くつもりだと言う。それからおしんはりつを立て、自分は裏方に回る。髪結いは12、13歳で弟子入りし3年下働きののち、それからやっとすき手になりまた何年も奉公し、一人前になるまでに7 - 10年もかかるという。一年で一番忙しい年末年始、たかはおしんにすき手をやらせる。だが先輩奉公人のおけい、お夏は、おしんが1年も満たない内にすき手になったことが納得できず辞めると言い出す。おしんは自分が辞めるからと引き留め、ことは収まったが、たかはおしんには意気地がないと、以降客の髪を触らせなかった。それ以来、おけい、お夏もおしんに心を閉ざしてしまう。 おしんが下働きのまま2年が経つ。大正7年(1918年)になると髪結いの主流が洋髪になりつつあった。おしんにふじから手紙が届く。おしんが加賀屋で子守をしていた小夜が肺炎で亡くなったという。おしんは暇を貰い久しぶりに帰郷、加賀屋を弔問する。悲しみにくれるみのはおしんは実の娘と同じであり、ずっと加賀屋にいて欲しいと引き留めるが、くにに諭され諦める。くには東京で加代に会ったらどうか助けてやってくれとおしんに頼む。帰京したおしんは日比谷公園での米騒動を聞きつけ、浩太の姿を求めて日比谷公園に向かい検挙されてしまう。翌日、たかが身元引き受け人となり、おしんは店に戻る。たかはおしんほどの娘が2年も下働きをさせられて嫌になったのかと労うが、逮捕されたことが噂になり、先輩奉公人らの風当たりも強くなる。 それから十日ほどたった夜、たかはおしんを呼び出す。たかは最近客が減ったのはおしんのせいではなく、日本髪を結う客が減ったからだと言い、おしんに将来洋髪で一本立ちすることを勧め、まず日本髪の基礎を教える。おしんは下働きの合間に他の髪結いを見学し、洋髪を独学で習得する。ある日店に神田のカフェ「アテネ」の女給・染子が訪れ、洋髪を頼む。たかはおしんを呼び出し、長谷川として初めて洋髪を結わせる。染子はおしんの洋髪が気に入らず激怒して長谷川を立ち去るが、周囲から似合うと言われて上機嫌になり、おしんにあらためて髪結いを頼みにくるが、たかが長谷川では洋髪は出来ないと断り、おしん単独での出髪(出張結髪)に行くように命じる。修行中で料金を取らず腕のいいおしんは、他の女給にも髪を頼まれるようになる。さらにおしんは女給たちの恋文の代筆や着物の仕立てまでこなした。恋文の宛先はすべて田倉竜三という男だった。たかはおしんに独り立ちするよう言い渡す。 ある日、おしんは竜三から染子を介して依頼された銀座の高級カフェに出髪に行くが、アテネに出入りしていた髪結いのつると鉢合わせてしまう。つるは自分の客を奪っていくおしんに自分の縄張りを主張するが、おしんが抵抗。カフェの用心棒に出髪はつるに決まっていると言われ、叩き出される。騒ぎを聞きつけて店から飛び出してきた竜三は用心棒を制止し、倒れたおしんをひとりの女給が介抱するが、その女給は行方不明になっていた加代だった。加代はその場を逃げ出すがおしんが追いかけ、二人はようやく再会。加代は絵の勉強もままならず、カフェの女給をしながら、東京に寄り付かない浩太を散らかり放題の下宿で一人待ち続けていた。おしんは小夜の死を告げ、加賀屋に戻るよう懇願。加代は酒田に一時期のつもりで帰郷する。 おしんは髪結いとして独り立ちし、たかの店の近くの老夫婦の家に下宿する。竜三は自分が出髪を依頼したせいで迷惑をかけたとして、おしんに高価な鏡台を贈る。 加賀屋ではくにらが加代の男(浩太)からひと月も連絡がないことに見切りをつけ、家柄のいい帝大出の政男を婿に決める。加代は上京しようとするが、くにが倒れる。浩太を諦めきれない加代はおしんに連絡を取り、下宿に浩太が来たら知らせて欲しいと依頼する。加代の下宿に浩太があらわれ、おしんは加代の想いを改めて浩太に伝えるが、小作争議のために逃げ回る浩太は自分に会ったことは言わないで欲しいと言う。おしんは酒田に行き浩太のことを伝えぬまま、祝言を挙げる加代の文金高島田を結う。 加代は加賀屋の跡取りになる覚悟を決め、祝言を挙げる。おしんは、りきからふじが苦労していると聞き、実家に帰る。小作の生活はあいかわらず苦しく、庄治、作造はふじに当たり散らす日々。おしんはふじのためにも再び仕送りを始める。東京に戻ったおしんは、加代の下宿で浩太を追っていた刑事に連行されてしまうが、竜三のお蔭で釈放される。佐賀から上京していた母・清(きよ)に見合いを勧められた竜三は、おしんと結婚したいと言い出し、清と源右衛門(源じい)は激怒。求婚されたおしんもきっぱり断る。おしんの実家の借金返済や、庄治が嫁をもらうための家を建てるため、作造は手紙でおしんにさらに仕送りを無心する。おしんは仕送りの無理が祟り過労と心臓脚気で倒れ入院する。竜三はおしんに付きっきりで看病する。清は病室に押しかけ勘当すると言い渡すが、竜三は田倉と縁を切り店も出ていくと言い返す。 退院後、仕送りが途絶えたおしんの様子を見に作造が上京する。仕送りをせびる作造に嫌気がさしたおしんは、思わず「田倉さんのところに嫁にいく」と口走る。逆上した作造は田倉羅紗店に怒鳴り込み、源じいと激しく口論してしまう。作造はおしんに結婚しないよう言い含め帰郷する。翌日、おしんと竜三は互いの想いを打ち明け結婚を決める。大正10年(1921年)の春であった。神社で二人だけの祝言を挙げ、竜三は源右衛門の理解を得る為におしんを田倉羅紗店に同居させる。結婚に反対していた源右衛門はおしんが身につけている礼儀作法や商才、人柄、手際の良さに感服する。佐賀にいる竜三の父大五郎が上京する。おしんは素晴らしい女性であり、竜三と一緒にしてやって欲しいと書いた手紙を源右衛門から送られていた大五郎は二人の結婚を認める。源右衛門は自分は用無しなので大五郎と一緒に佐賀に帰ると言うが、おしんは「私を嫌いでなかったらここにいて」と引き止めるので源右衛門をは店に留まる。 その矢先、作造危篤の報が入りおしんは帰郷する。新居に住む庄治と嫁のとらは冷ややかで、作造は古家に寝ていた。作造は死の床でおしんに感謝し、また謝罪する。おしんが祝言を挙げたことを告げるとこれを喜び、体を起こして作造危篤の報に接して集合したおしんの姉弟達と祝いの酒を飲んで息を引き取った。葬儀の後、新居には小作争議のために小作人が集まっていた。その寄り合いに来た浩太と再会したおしんは結婚したことを告げ、自らの初恋の想いに区切りをつける。 おしんは帰路、酒田の加賀屋に作造の葬式と自身の結婚の報告に上がる。加代は浩太への未練と政男の不貞に悩んでおり家を出たいと言うが、おしんは加代は我儘だと嗜める。帰宅した政男は加代、みの、おしんの前で落籍した芸者の妾が妊娠したので産ませて認知すると宣言。泣き崩れる加代におしんはなす術が無かった。 東京に戻ったおしんは竜三と一緒にたかの下へ結婚の挨拶に行くが戦後恐慌もあり、日本髪を結う客がめっきり減って長谷川はたかとりつだけになっていた。
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