規制に関する歴史
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2005年現在において、日本では同年2月には45本発売されるなど(PC Angel2005年5月号による)多数のアダルトゲームが発売されている。『ナイトライフ』(1982年、光栄マイコンシステム)が始祖とされるこれらのゲームには、業界共通の性的描写に関するガイドラインは存在せず、性的描写は各企業の裁量に任されていた。なお、ナイトライフ自体はどちらかと言うと「夫婦生活をサポートする」ためのユーティリティ的なソフトウェアであり、直接的な性的興奮を目的としたコンピュータゲームではなかった。しかし同作品のヒット以降、着実に性的興奮を目的としたコンピュータゲームが、当時表現力が次第に向上した8ビットパソコン向けに盛んに販売されるようになった。 これら成人指定の性的描写を含むコンピュータゲームの多くは、個人でもソフトウェア開発環境を揃え易いパーソナルコンピュータ向けの作品となっており、当初の市場はマニア・おたく向けの微々としたものであった。このため一般からは特殊な再生媒体によるポルノ作品としてのみ扱われ、1980年代末までのこれらゲームに対する一般の販売店での扱いは極めて無頓着なもので、販売店によっては商品であるこれらソフトウェアのパッケージは「店の入り口からでも見えるような位置」に堂々と陳列されていたり中高生ですらこれを購入することになんら制限は見られなかったほどである。社会一般での認知度も「ほぼ無視ないし無名」といった状態であった。 だが、次第にアダルトゲームは問題視されるようになる。1986年には、刑法177条(強姦罪)からタイトルを取った『177』(マカダミアソフト=デービーソフトの一部門)が、草川昭三により国会で取り上げられた。そして1988年に起こった東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件や、それに端を発した有害コミック騒動によってポルノ業界そのものへの批判が強くなっていく。 1991年成人向けゲームを万引きした中学生が補導されたことを発端に、成人向けゲームへの非難が高まり、製作会社の社長が京都府警に逮捕される事件が起きた。のちに沙織事件と呼ばれるものである。国会にも取り上げられたこともあり、業界全体に事態を重大に捉える動きが生まれた。翌 1992年には、業界団体の社団法人日本パーソナルコンピュータソフトウェア協会(JPSA)が18禁シールを作成し、希望する企業への販売を開始した。一方、『電脳学園』(1989年、ガイナックス)が宮崎県における青少年の健全な育成に関する条例に基づき有害図書指定される。 沙織事件や宮崎県での有害指定をうけ、自主規制団体の必要性が叫ばれるようになり、1992年10月に自主規制団体のコンピュータソフトウェア倫理機構が設立された。他の分野では1990年にコミックマーケットが幕張メッセを使用できなくなる事件、それに伴いコミックマーケットでの性的表現自主規制が強化される事件が発生し、非実写性表現のあり方を問われた時代でもあった。 1996年には『子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議』がストックホルムで開催された。この会議で日本人によるアジアでの児童買春と、日本国内で大量につくられる児童ポルノに対して非難が起きる。これに対して日本は法整備、取り締まりの強化を表明した。これらでは当時の日本においておたく向けの商業作品群に、いわゆる「アニメ風の女の子(→萌え絵)」を使っての性的興奮を煽ることを目的とした物が多く見られ、市場もそれら作品の傾向に寛容であったことも同規制による議論の対象に挙げられている。特にアダルトゲームは、かなりの比率をこの「アニメ風女の子」を使った作品が占めている。 1999年は超党派の国会議員によって『児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律案』が提出され、成立した。法案段階では『児童ポルノ』の範疇に「絵」が含まれていたことから、業界筋やユーザー筋でも大きな論争になった。修正され『絵』は対象外になったが、3年後に見直しを行うことを明記した。 2005年4月には、自由民主党の野田聖子の呼びかけにより、『少女アダルトアニメ及び同シミュレーションゲームの製造・販売に関する勉強会』が行われたが、この勉強会自体は大きな話題になることはなかった。 2006年4月10日に日本テレビはNNN NewsリアルタイムおよびNNNきょうの出来事において、「アニメやインターネットに溢れる性や暴力に関る情報が、子供を標的にした事件に結びついている可能性がある」として警察庁が新たな規制に動き出したことを報道した。 2008年に入り、日本ユニセフ協会を中心にアニメ、漫画、ゲームソフトおよび18歳以上の人物が児童を演じるものを含む児童の性的な姿態や虐待などを写実的に描写したものを「準児童ポルノ」として違法化することなどを柱とした「なくそう!子どもポルノ」キャンペーンが開始された。国会では児童ポルノの規制強化を目的として、性表現色の濃い漫画・アニメ・ゲームといったフィクション作品の単純所持をも規制対象に含める改正案を検討し始めた。 2008年には、「漫画、アニメーション、コンピュータを利用して作成された映像、外見上児童の姿態であると認められる児童以外の者の姿態を描写した写真等であって児童ポルノに類するもの」を「児童ポルノに類する漫画等」とした上で児童の権利を侵害する行為との関連性に関する調査研究を推進することを附則に盛り込んだ児童ポルノ禁止法改正案が提出されたが、2009年7月21日に衆議院が解散されたため、廃案となった。 2009年に入ると『レイプレイ』(2006年、ILLUSION)が英国国会で取り上げられ、ニューヨーク市議会でボイコット運動が起きた。5月にはアメリカのラディカル・フェミニズム団体の「イクオリティ・ナウ」が抗議活動を始めるなど日本国外でアダルトゲームが問題視された。この動きは日本にも波及し『レイプレイ』の発売元が取り扱いを中止した。公明党が秋葉原での販売形態を視察した ほか当時与党であった自民党が「性暴力ゲームの規制に関する勉強会」 を立ち上げ、罰則規定を含む法体制の整備を提言する など政治の動きが活発になった。 コンピュータソフトウェア倫理機構は、このような状況の下6月に開催された会合で「レイプなどの性暴力を扱うゲームソフト」の製造・販売を禁止 パッケージに日本国内専売の明記 などの規制の強化を決定した。また、minoriなどいくつかのブランドは公式サイトへの日本国外からの接続を切断した。 2014年には、2008年に提出された児童ポルノ禁止法改正案の附則と同様に、「漫画、アニメーション、コンピュータを利用して作成された映像、外見上児童の姿態であると認められる児童以外の者の姿態を描写した写真等であって児童ポルノに類するもの」を「児童ポルノに類する漫画等」とした上で児童の権利を侵害する行為との関連性に関する調査研究を推進することを附則に盛り込んだ児童ポルノ禁止法改正案が提出されたが、与野党の合意により成立した改正法からはその部分は削除された。なお、同法により、児童ポルノの「性的好奇心を満たす目的での」単純所持が禁止された。
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