第二章 国民の権利および義務
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/06 07:36 UTC 版)
「大韓民国憲法」の記事における「第二章 国民の権利および義務」の解説
第2章では国民の義務と権利、事後法の禁止や一事不再理の原則を規定している。日本と大きく異なる内容として、第39条で国防の義務が明記されており、徴兵制の基礎となっている点が挙げられる。また、第12条で緊急逮捕が明文化されていることも特徴である。 第10条全ての国民は人間としての尊厳と価値を有し、幸福を追求する権利を有する。国家は個人が有する不可侵の基本的人権を確認し、これを保障する義務を負う。 第11条全ての国民は法の前に平等である。何人も性別、宗教または社会的身分により政治的、経済的、社会的、文化的生活のすべての領域において差別を受けることはない。 社会的特殊階級の制度はこれを認めず、如何なる形態であってもこれを創設することはできない。 勲章などの栄典はこれを受けた者にのみ効力を有し、如何なる特権もこれに伴わない。 第12条全ての国民は身体の自由を有する。何人とも法律によらない逮捕、拘束・押収・捜索または審問を受けることはなく、法律と適法な手続によらない処罰、保安処分または強制労役を受けることはない。 全ての国民は拷問を受けることはなく、刑事上自分に不利な陳述を強要されることはない。 逮捕、拘束、押収または捜索をする場合は、適法な手続に基づく検事の申請によって裁判官が発付した令状を提示しなければならない。ただし、現行犯の場合及び3年以上の刑にあたる罪を犯し、逃亡または証拠隠滅の恐れがある場合には事後に令状を請求することができる。 何人も逮捕または拘束にあった場合、直ちに弁護人の助力を受ける権利を有する。ただし、刑事被告人が自ら弁護人を求めることができない場合は法律が定めるところにより国家が弁護人を付ける。 何人も逮捕または拘束の理由と弁護人の助力を受ける権利の告知を受けること無くして逮捕または拘束されることはない。逮捕または拘束された者の家族など法律が定める者に対しては、その理由と日時、場所が遅滞なく通知されなければならない。 何人も逮捕または拘束された場合には、その適否の審査を裁判所に請求する権利を有する。 被告人の自白が拷問、暴行、脅迫、拘束の不当な長期化または欺罔その他の方法により、自らの意思による陳述でないと認められる場合、または正式な裁判において被告人の自白がその不利な唯一の証拠である場合には、これを有罪の証拠とし、これを理由として処罰することはできない。 第13条全ての国民は行為時の法律により犯罪を構成しない行為で訴追されることはなく、同一の犯罪に対して重ねて処罰を受けない。 全ての国民は遡及立法により参政権の制限を受け、財産権を侵害されることはない。 全ての国民は自分の行為ではない親族の行為に基づいて起因する不利益な処遇を受けない。 第14条全ての国民は居住移転の自由を有する。 第15条全ての国民は職業選択の自由を有する。 第16条全ての国民は居住の自由の侵害を受けない。住居に対する押収や捜索を行う場合、検事の申請に基づき裁判官が発行した令状を提示しなければならない。 第17条全ての国民は私生活の秘密と自由の侵害を受けない。 第18条全ての国民は通信の秘密の侵害を受けない。 第19条全ての国民は良心の自由を有する。 第20条全ての国民は宗教の自由を有する。 国教はこれを認めず、宗教と政治は分離される。 第21条全ての国民は言論・出版の自由と集会・結社の自由を有する。 言論・出版に対する許可や検閲と、集会・結社に対する許可は認めない。 通信・放送の施設基準と新聞の機能を保障するために必要な内容は法律で定める。 言論・出版は他人の名誉や権利または公衆道徳や社会倫理を侵害してはならない。言論・出版が他人の名誉や権利を侵害した場合、被害者はこれに対する被害の賠償を請求できる。 第22条全ての国民は学問と芸術の自由を有する。 著作者、発明家、科学技術者と芸術家の権利は法律で保護する。 第23条全ての国民の財産権は保障される。その内容と範囲は法律で定める。 財産権の行使は公共の福利に適合するようにしなければならない。 公共の必要による財産権の収用、使用または制限及びそれに対する補償は法律に基づいて行い、正当な補償を支給しなければならない。 第24条全ての国民は法律が定めるところにより選挙権を有する。 第25条全ての国民は法律が定めるところによる公務担任権を有する。 第26条全ての国民は法律が定めるところによる国家機関に対し文書による請願を行う権利を有する。 国家は請願に対して審査する義務を負う。 第27条全ての国民は憲法と法律が定める裁判官により法律に基づいた裁判を受ける権利を有する。 軍人または軍属ではない国民は大韓民国の領域の中においては、重大な軍事上の機密、哨兵、哨所、有毒飲食物供給、捕虜、軍用物に関する罪の中で法律が定めた場合及び非常戒厳が宣布された場合を除き軍事裁判所の裁判を受けない。 全て国民は迅速な裁判を受ける権利を有する。刑事被告人は相当な理由がない限り遅滞なく公開裁判を受ける権利を有する。 刑事被告人は有罪判決が確定する以前は無罪と推定される。 刑事事件の被害者は法律が定めるところにより当該事件の裁判過程で陳述を行うことができる。 第28条刑事被疑者または刑事被告人として拘禁された者が法律が定める不起訴処分を受けた場合、または無罪判決を受けた場合、法律が定めるところにより国家に正当な補償を請求することができる。 第29条公務員の職務上の不法行為により損害を受けた国民は、法律が定めるところにより国家または公共団体に対し正当な賠償を請求することができる。この場合公務員自身の責任を免除されない。 軍人、軍属、警察公務員その他法律で定める者が戦闘、訓練など職務執行と関連して受けた損害に対しては法律が定める報償以外に国家または公共団体に公務員の職務上の不法行為による賠償は請求することはできない。 第30条他人の犯罪行為により生命、身体に対する被害を受けた国民は法律が定めるところにより国家から救助を受けることができる。 第31条全ての国民は能力に従い均等に教育を受ける権利を有する。 全ての国民はその保護下にある子女に対し少なくとも初等教育と法律が定める教育を受けさせる義務を負う。 義務教育は無償とする。 教育の自主性、専門性、政治的中立性及び大学の自律性は法律が定めるところによって保障される。 国家は社会教育を振興させなければならない。 学校教育及び社会教育を含む教育制度とその運営、教育財政及び教員の地位に関する基本的な事項は法律によって定める。 第32条全ての国民は勤労の権利を有する。国家は社会的、経済的な方法により勤労者の雇用促進と適正賃金の保障に努力しなければならず、また法律が定めるところにより最低賃金制を施行しなければならない。 全ての国民は勤労の義務を負う。国家は勤労の義務の内容と条件を民主主義的原則により法律によって定める。 勤労条件の基準は人間の尊厳性を保障するよう法律により定める。 女子勤労は特別な保護を受けて、雇用、賃金及び勤労条件に於いて不当な差別を受けない。 年少者の勤労は特別な保護を受ける。 国家有功者・傷痍軍警及び戦没軍警の遺族は法律が定めるところにより優先的に勤労の機会を与えられる。 第33条勤労者は勤労条件の向上のため自主的な団結権、団体交渉権及び団体行動権を有する。 公務員である勤労者は法律が定める者に限り団結権、団体交渉権及び団体行動権を有する。 法律が定める主要防衛産業体に従事する勤労者の団体行動権は法律が定めるところによりこれを制限あるいは認めない場合がある。 第34条全ての国民は人間らしい生活をする権利を有する。 国家は社会保障、社会福祉の向上に努力する義務を負う。 国家は女子の福祉と権利の向上のために努力しなければならない。 国家は老人と青少年に対する福祉向上のための政策を実施する義務を負う。 身体障碍者及び疾病、老齢その他の事由で生活能力のない国民は法律が定めるところにより国家の保護を受ける。 国家は災害を予防し、その危険から国民を保護するために努力しなければならない。 第35条全ての国民は健康で快適な環境の下で生活する権利を有し、国家と国民は環境保全のために努力しなければならない。 環境権の内容と行使に関しては法律で定める。 国家は住宅開発政策などを通し、全ての国民が快適な住居生活が送れるべく努力しなければならない。 第36条婚姻と家族生活は個人の尊厳と両性の平等を基礎として成立し維持されなければならず、国家はこれを保障する。 国家は母性の保護のために努力しなければならない。 全ての国民は保健に関して国家の保護を受ける。 第37条国民の自由と権利は憲法に列挙されない理由により軽視されてはならない。 国民の全ての自由と権利は国家安全保障、秩序維持または公共の福祉のため必要な場合に限って法律により制限することができるが、制限を行う場合も自由と権利の本質的な内容を侵害することはできない。 第38条全ての国民は法律が定めるところにより納税の義務を負う。 第39条全ての国民は法律が定めるところにより国防の義務を負う。 何人も兵役義務の履行により不利益な処遇を受けない。
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