社会システム・コスト
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 02:20 UTC 版)
積極・賛成論消極・反対論社会的損失・経済的損失・コスト・利便性 江上敏哲(情報学者)らは、職業上、氏の変更が業績の連続性や信用、キャリアにとって損害となる場合もある、と主張している。井戸田博史(法史学者)は、現在の制度において、長年月社会生活を行ってきた者が姓を変えることは、多大の社会的損失ならびに個人的損失をもたらす、とする。氏の変更の際の様々な手続きは面倒でコストがかかる(朝日新聞)、などの指摘もある。 三浦義隆(弁護士)は、姓は変わらない方が便利とする。 宮内義彦(オリックス シニア・チェアマン)は、社会で活躍している女性などが結婚によって姓を変更するときに周囲に与える混乱を指摘する。 奥野正寛(経済学者)は、結婚しても旧姓を選択できれば、女性の国際的な活躍の場を広げられるとする。 旧姓を用いていた期間は晩婚化によって以前よりも長く、共働き家庭も増えており、損失はより大きくなっている。1997年にはすでに、共働き世帯の数が専業主婦世帯の数よりも多くなっており、2014年時点では共働き世帯が1077万世帯、男性雇用者と専業主婦からなる世帯は720万世帯、と共働き世帯が大幅に専業主婦世帯を上回っている。 青野慶久(ソフトウエア開発会社社長)は、ビジネスにおいて名前はブランドであり、変えると経済的にも損失と述べている。 安里睦子(ナンポー代表取締役社長)は、制度を変えない限り「女性で役員や経営者になる人ほど、ビジネスの場で壁にぶつかる」としている。 小川淳子(ゴルフライター)は、プロアスリートにとっても、改姓のデメリットがあるとしている。 八幡彩子(熊本大教授・教育学)は、名刺、戸籍名だけでは結婚前と同一人物の論文だと理解してもらえず、使い分けは煩雑、と述べる。 岩田規久男(経済学者)は、夫婦別氏を選択できるようになることによって、ほかの人が不利益をこうむることはない、と主張している。 牟田和恵(大阪大学)は、現実の不便や苦労を感じなくても良い人々が反対するのはおかしい、と主張している。 山口一男(社会学者・シカゴ大学教授)は、選択的夫婦別姓制度の導入はパレート改善的であり、自由主義的社会制度設計の基本概念にかかわるもので、自由至上主義者、社会民主主義者などの立場に関係なく支持できるとしている。 串田誠一(政治家)は、「夫婦が同姓同名だった場合、不動産登記簿謄本はどうなるのか。強制執行したときに、夫のものだと思ったら妻のものだったということもあり、家庭内の問題ではなく、社会的な混乱」と主張した。 黒岩幸子(岩手県立大教授・外国語教育学者)は、女性の自立や男女平等といったことではなく、人生の途中で姓が変わるのは不便であり、単に選択的夫婦別姓の方が合理的、としている。 八木秀次(日本教育再生機構理事長・新しい歴史教科書をつくる会元会長)は、職業上の不便も各業界や組織・団体、あるいは個別法規の改正で足り、民法改正の必要性とするには足りない、と主張している。小谷野敦は、導入には反対し、簡易に氏名変更できるようにする方が先決、としている。 倉本圭造(経営コンサルタント)は、「別立ての制度」を通して当事者の「具体的な困りごと」を解消することが重要だと主張している。 旧姓通称使用をめぐる問題 朝日新聞は、社説において、旧姓通称使用は中途半端で限界があり、住民票などのシステム改修だけで自治体に176億円の補助を行うのは税金の無駄遣いとして、選択的夫婦別氏導入を主張している。 青野慶久(ソフトウエア開発会社社長)は、「旧姓との使い分けに日々無駄なコストを払うのは社会全体にとっても非効率。法的根拠を与えればそれだけで済む」と主張、「マイナンバーカード等に旧姓を併記できるようにする」ためのシステム改修に100億円の予算を取るという総務省発表について、戸籍法上の不備があるために、国民が税金として納付した公金を100億円も支出せざるを得なくなった事態は国家的損失としか表現できない、と国家にも不利益とする。また「サイボウズ社の契約を結ぶ時、必ず法務部に確認をして、通称名である「青野」か、婚姻の姓で署名すべきか区別した上で、契約書作成をする必要がある。このタイムラグが迅速な経済活動が求められる株式会社において大きなロス」とする。 稲田朋美(政治家)は、2018年に、「通称使用で2つの姓を用いるのは混乱を招く」と主張。 冷泉彰彦(作家)は、パスポートの旧姓併記について、トラブルがおきないように運用するのは困難であり、選択的夫婦別姓を導入するのが現実的、と指摘している。 関口礼子(元図書館情報大学教授・旧姓通称使用訴訟原告)は、旧姓通称使用について「根本的に、女性を一人の人間として認めるというものではない。中途半端な修正でお茶を濁すというものでしかない」とし、「これでは、優秀な女性たちが海外に出てしまうか、結婚しようとしないかで、日本の将来にかかわってくるのが目にみえている」とする。 森沢恭子(政治家)は、旧姓では場合によっては選挙の立候補ができないなどハードルがある、としている。 鬼丸かおる(元最高裁判事)は、「通称を名乗ることを認められていても、通称はあくまで通称であって、本当の名前ではない。かえって、通称を認めるということは税金や年金などの公的制度を利用する度に複雑な手続きが要求される」としている。 日本弁護士連合会は、通称使用の不便を解消する方法として、戸籍に通称を記載し運転免許証や日本国旅券等にも通称を使用できるようにする、徹底した通称使用制度も観念上は考えられなくはないが、選択的夫婦別姓制度による解決が合理的、としている。 日本会議は、旧姓使用拡大で不利益は解消できる、と主張している。 山谷えり子は旧姓の通称使用拡大で十分と主張している。 少子化問題 山田昌弘(社会学者)は、家名存続のために選択的夫婦別姓を求める声も多いことからもわかるように、夫婦同姓強制は婚姻の障害になっており、少子化の一因となっていると指摘している。板本洋子(全国地域結婚支援センター代表)は、婚姻率が下がっていることが少子化の大きな原因であり、選択的夫婦別姓を認めることは婚姻率を高める可能性が高く、少子化対策として非常に有効な施策と考えられ、特に農村などでは特に跡取り男女の未婚者も多く夫婦同姓の規定は結婚の障害となっている、とする。 小笠原泰(明治大学教授)、渡辺智之(一橋大学教授)は、出生率を改善するには、選択的夫婦別姓制度すら認めないような家族観は抜本的に見直す必要があると主張している。 冷泉彰彦(作家)は、制度導入が必要な理由の一つとして、「『嫁入りして家長の姓に合わせる』という価値観が男尊女卑につながり、結果として家事や育児の共同分担が遅れ、非婚少子化を招いているという深刻な問題に重なっている」ことを挙げている。 夏野剛(ドワンゴ代表取締役社長)は、選択的夫婦別姓を実現したり、子育てのセーフティネットを手厚くすることで出生率の2が見えてくる、と主張している。 勝間和代(評論家・株式会社監査と分析取締役)は、少子化を食い止めるには、選択的夫婦別氏を含む少子化対策や男女共同参画社会の推進に役たちそうなものはすべて実施すべきと主張。 松田茂樹(中京大学教授)は、同姓・別姓問題は婚姻数の増減、ひいては少子化解消に対し中立的であり、もし別姓が認められる方向に動いたとしても、それが少子化という社会的課題の解消に結びつくことはほとんどない、と主張している。
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