結婚の障害
★1.敵対する二つの家族(あるいは二つの集団)に属する男と女。
『ウエスト・サイド物語』(ワイズ) ニューヨークのウエスト・サイド地区では2つの不良グループ、ジェット団とシャーク団が対立していた。かつてジェット団にいたトニーは、ダンス大会でマリアと出会い、2人は恋に落ちる。しかしマリアは、敵対するシャーク団のリーダー、ベルナルドの妹だった。マリアを巡って両グループは決闘し、トニーもベルナルドも死ぬ。
『ロミオとジュリエット』(シェイクスピア) ヴェローナの街の名門、モンタギュー家とキャピュレット家は、長年不和だった。モンタギュー家のロミオはキャピュレット家の舞踏会に仮面をつけて乗り込み、ジュリエットと出会うが、敵対する両家の1人息子と1人娘では、結婚は許されるはずもない。しかも、ジュリエットにはすでに求婚者がいた。ロミオとジュリエットは駆け落ちを試みるものの、手違いとロミオの早合点とによって、結局2人とも自死する。
*左大臣家の婿・光源氏と、右大臣家の六の君→〔扇〕1の『源氏物語』「花宴」。
『旅愁』(横光利一) 第2次大戦前夜。西洋文化実見のため渡欧した矢代耕一郎は、カソリック教徒・宇佐美千鶴子と知り合う。帰国後、矢代は千鶴子との結婚を考えるが、矢代の母は法華信者であり、また矢代家の先祖が、カソリック大名・大友宗麟に滅ぼされたという因縁もあって、思い悩む。矢代は、「一切の対立を認めず、他宗を排斥せぬ」という日本の古神道に拠り所を求めて、千鶴子と婚約する。
*永野トセは、息子の嫁がクリスチャンであることを知り、「日本古来の神仏があるのに、毛唐の神を拝む必要はない」と言って離縁する→〔離縁・離婚〕7の『塩狩峠』(三浦綾子)。
『招かれざる客』(クレイマー) 新聞社を経営するマットは白人であるが、黒人への差別撤廃運動を長年続けてきた。彼の感化で、愛娘ジョーイは人種的偏見を持たずに育ち、ある日、恋人である黒人男性ジョンを家に連れて来て、「結婚したい」と言う。マットはこれまでの自分の主張とはうらはらに、異人種間の結婚を認めることができない。しかし妻クリスチーナ、友人ライアン神父、ジョンの両親たちと話し合ううちに、マットは自らの青春時代の情熱を思い出し、若い2人の勇気をたたえ結婚を祝福する。
★4.病気。
『黒い雨』(井伏鱒二) 広島の原爆投下から数年後。閑間(しずま)重松の姪・矢須子は、市内で被爆したと噂され、そのため縁談がまとまらない。実際は矢須子は爆心地から離れた郊外にいたので、重松は、矢須子が当時つけていた日記を清書して示し、矢須子が被爆者でないことを証明しようと考える。しかし、矢須子は直接被爆はしなかったものの、黒い雨にうたれていた。日記清書が終わりに近づいた頃、矢須子に原爆病の症状があらわれた〔*雑誌「新潮」連載開始時の題は『姪の結婚』。途中で『黒い雨』と改題された〕。
★5.結婚の妨害。娘が父と再婚相手の仲を裂くため、策略を用いて、父の心を別の女に向けさせる。
『悲しみよこんにちは』(サガン) プレイボーイの父レエモンと理知的な女性アンヌの再婚を、17歳の娘セシルは、妨げようとする。アンヌがセシルの気ままな生き方を批判し、セシルと恋人シリルの仲を裂いたからだった。セシルは、父のもと愛人エルザとシリルを恋人どうしのようにしたて、父の競争心と嫉妬心をあおり、父とエルザを再び結びつけようと計画する。計画は成功し、ある日、父はエルザを抱き接吻する。それを見たアンヌは1人で去って行く→〔死因〕6。
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