継子殺し
『絵本百物語』第17「二口女」 下総国千葉に継母があって、先妻の子供に食物を与えず、飢え死にさせてしまった。子供の四十九日の日、夫が薪を割ろうとして振り上げた斧が、妻(=継母)の後頭部に当たって、そこに口ができた(*→〔口〕9)。その口がひそひそ物を言うので、聞き耳を立てると、「我が心得違いより、先妻の子を殺せり。あやまてり、あやまてり」と言っていた。
『びゃくしんの話』(グリム)KHM47 継母が継子(男児)に、「箱の中のりんごを出してお食べ」と言う。継子がりんごを取ろうと箱の中へ身をかがめた時、継母はいきおいよく箱の蓋をしめ、継子の首を切断して殺す→〔人肉食〕4a。
『あしびき』(御伽草子) 民部卿得業(とくごふ)の後妻は、自分の実の娘かわいさに、「継子の稚児を殺そう」と考える。夫得業の留守中に後妻は、娘婿の鬼駿河来鑒(おにするがらいかん)に、「稚児を夜討ちせよ」と命ずる。しかし、稚児の思い人である侍従の君がこれを知って、部下の法師らとともに奮戦し、来鑒たちを返り討ちにした。帰宅した得業は後妻の悪計を知り、後妻と娘を追放する→〔稚児〕1。
『岩屋の草子』(御伽草子) 継母が腹心の佐藤左衛門に、「対の屋の姫君を海に沈めよ」と命ずる。左衛門は姫を殺すにしのびず、海中の大岩に姫を置きざりにして戻る。姫は海士夫婦に保護され、岩屋に住む→〔二人夫〕7a。
『今昔物語集』巻2-20 継母が少年ハクラを憎み、焼けた鍋の上にハクラを置いたり、煮えた釜の中に入れたりするが、ハクラは無事だった。継母は怒ってハクラを河へ突き落し、ハクラは大魚に呑まれる→〔魚の腹〕4。
『今昔物語集』巻19-29 山陰中納言の子が、継母によって海に突き落とされる。しかし、かつて山陰が放生した大亀が現れ、子を甲羅に乗せて救う(『長谷寺験記』下-13に異伝)。
『今昔物語集』巻26-5 陸奥介の後妻が、夫の財産を自分の娘に相続させるために、継子の若君をなきものにしようと考える。継母の意を受けた郎等が、若君を野原に連れ出して生き埋めにする。
『神道集』巻2-7「二所権現の事」 継母が、常在御前を放れ島に捨てたり土牢に入れたりするが、彼女は亡母の霊や妹霊鷲御前に助けられる。継母は、常在御前を旦特山の麓に連れて行き、千本の剣を底に立てた深い穴に突き落す→〔母の霊〕4。
*継母が、継娘に毒入りの弁当を持たせる→〔毒〕8の『まま母の悪計(わるだくみ)』(沖縄の民話)。
*継母が、自分より美しい白雪姫の命をねらう→〔にせもの〕5・〔りんご〕2の『白雪姫』(グリム)KHM53。
*継母が、継娘ヴァランティーヌの毒殺をはかる→〔仮死〕1の『モンテ・クリスト伯』(デュマ)。
『今昔物語集』巻30-6 乳母が出入りの女に継子(女児)を渡し、どこかに捨てて犬に喰わせよ、と言う。しかし継子は、長谷観音に子宝を願う夫婦の手に渡り、養育される。
『舜子変』(敦煌変文) 舜は、継母のみならず実の父・瞽叟(こそう)からも命を狙われる。倉の中に入って修理をしている時には火をかけられ、井戸の中に入って泥浚えをしている時には大石を落とされるが、舜は脱出し、歴山にこもって耕作をする→〔開眼〕1。
『米埋め糠埋め』(昔話) 継子と実子(じっし)と、2人ともやんちゃだったので、継母が2人をこらしめる。実子の方は、米の中へちょっと埋めた。米は食えるから。継子の方は、糠の中へ埋めた。しばらくして見に行ったら、実子は、米が冷たいので死んでいた。継子は、糠が暖かいので生きていた(滋賀県愛知郡愛知川町市)。
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