吉展ちゃん誘拐殺人事件とは? わかりやすく解説

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吉展ちゃん誘拐殺人事件

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/08 02:27 UTC 版)

吉展ちゃん誘拐殺人事件(よしのぶちゃんゆうかいさつじんじけん)とは、1963年昭和38年)3月31日東京都台東区入谷町(現在の松が谷)で起きた身代金目的の誘拐殺人事件。吉展ちゃん事件とも呼ぶ。


注釈

  1. ^ 事件発生当時、日本電信電話公社は「通信の守秘義務」を理由として逆探知を認めず、電話の録音も当初は被害者家族が機材を用意して自主的に実施していた[3]。発生から約1ヶ月後に警視庁の強い要請により、郵政大臣の通達で公社が逆探知に協力することとなった[3]。正式に閣議で「受信者の了解があり、脅迫者を当局が突きとめるための逆探知であれば、通信の秘密をおかすことにならない」という見解が示されたのは同年の10月4日で、その4日後に当事件の被害者宅にいたずらで脅迫電話をかけた27歳の男性が、「電話逆探知による逮捕者第一号」となった[4]
  2. ^ 鬼春人は1965年2月に刊行した著書『吉展ちゃん事件の犯人 その科学的推理』(弘文堂)の中で、犯人の出身地を茨城・福島・栃木の3県が境界を接する地帯とし、その中には小原の出身地である石川郡も含まれていた[8]。さらに、話し方の特徴から、成人後も東北各地を転々としたり、東京下町に長期間居住もしくは出入りしたことを指摘したが、これも小原の経歴に重なっていた[8]
  3. ^ 文化放送はこれを含めた一連の事件報道により、日本民間放送連盟の第14回民放大会賞において、「番組活動賞揚部門」の「ラジオ報道活動」の部で最優秀賞を受賞している[12]
  4. ^ 小原はワラポッチで野宿したのは3回であると供述していた。
  5. ^ 平塚は後述の録音テープでは、「土蔵の屋根を昭和36年に瓦葺きに吹き替えた際に、土蔵の土台が腐っていたために戸が曲がり、鍵がかからない状態になっていた」と小原に問いただしている。
  6. ^ 平塚は『刑事一代 平塚八兵衛の昭和事件史』の聞き書きの中で「命令違反を承知で、オレのクビをかけた調べを(した)」「30分ぐらいはいちおう録音をとったかな。腹の中が煮えくりかえるんだ。『もうやめろ』ってスイッチを切ってな、調べを始めちまったんだ。命令違反の"証拠"を残しちゃまずいからな」(新潮文庫版、p.72)と述べているが、NHKスペシャルの説明とは合致しない(録音テープはその後も残っている)。
  7. ^ 本田靖春の『誘拐』では、この日は当初FBIに送る音声を収録するための会話をしていたが、後述の「日暮里大火」につながる発言を聞いた後に、平塚が本庁の係長に電話で「録音はとりました。これからやつをちょいと絞めてみたいんですがね、どうでしょう」と承認を求め、「君に任せるよ」という回答を得て、小原の故郷で調べた内容を聞かせたとなっている[14]
  8. ^ 録音テープによると、この供述は小原の方から「東京へ帰ってきたのは(4月)3日だったってことになってるでしょう」(平塚が「いく日なんだい」と聞いて)「火事の日なんです」と切り出している。平塚は『刑事一代 平塚八兵衛の昭和事件史』で、取り調べの中で悪党だとなじられた小原が「いいこと(親類の家で小火を消し止めた)もした」と抗弁した際に「だけど日暮里の火事みたいに大きくなったら、ちょっと手が出ませんよ」と口にしたことを聞き逃さず(「4月2日の日暮里大火を『山手線の中で見た』とゲロった」と少し後ろにある)、しばらくしてからアリバイの矛盾をまくし立てた後、平塚の調べた内容がウソだと答えた小原に「日暮里の大火を、オマエは見たといったな。あれは四月二日だ。それもウソか」とたたみかけてから「わたしがこれまでいってきたことは、ウソです」と認めたと述べている(新潮文庫版、pp.74 - 75)が、この内容はNHKスペシャルの説明および紹介された録音テープには出てこない。本田靖春の『誘拐』では、「録音」のための会話の中で、福島から帰ってきてから4月7日まで何をしていたかと問われた際に、4月3日に王子の親戚の家近くで起きた小火を消し止めたが「いつだったかおれが電車の上から見た日暮里の大火事みたいになったらたいへんだったろうな」と口にし、その後平塚がアリバイの矛盾点を伝えた中で「おまえは四月三日まで福島にいたというけど、おれの調べじゃ三月三十日までしかいねえ」と述べ、平塚と小原のどちらが嘘かはっきりさせようと迫ると、小原が自分の供述が嘘だと認め、そのあとに平塚が「日暮里大火は四月二日のことなんだぞ。四月三日に帰って来たというのも嘘か?」と問いかけたとなっている[15]
  9. ^ 録音テープは小原が「4月3日の帰京」が嘘だと認めたあと、刑事たちが追及しているところで終わっているが、当時の担当刑事の一人はNHKスペシャルの中で「それから(金が事件と関係があるものだと自供するまで)2時間かからなかったのではないか」と述べている。
  10. ^ 平塚は『刑事一代 平塚八兵衛の昭和事件史』で、小原が(日暮里大火の件を追及されて)それまでの供述がウソだと認めた直後に「わたしがやりました」と話したと述べている(新潮文庫版、p.75)が、NHKスペシャルの説明とは一致しない。本田靖春の『誘拐』では、NHKスペシャル同様、しばらくしてから金が事件と関係があると供述したところでその日の取り調べが終わったとしている[17]
  11. ^ 小原の記憶違いにより、最初は隣の寺を捜索し、遺体が見付からなかった。
  12. ^ 同日9時30分、福原弘夫東京拘置所長は所在地である葛飾区区長に対し、小原が区内で死亡した旨を報告[20]。小原の生家がある福島県石川郡石川町の町役場は、葛飾区長からの連絡を受け、翌1972年(昭和46年)1月5日付で小原の戸籍を抹消した(抹消日付:1971年12月23日)[20]
  13. ^ 『刑事一代 平塚八兵衛の昭和事件史』で平塚は、自分が小原を自供に追い込まなければこのようにならなかったのかもしれない、いや裁いたのは自分ではないといった「いろんな気持ち」が混じったと述べ「わかんめえよ。あんたらには、この気持ち」と結んでいる[22]
  14. ^ 「土偶短歌会」は、長期療養者や回復者、その家族を同人とする短歌会で、小原は獄中で読んだ総合歌誌『短歌研究』でその存在を知った[1]。小原の入会には異論もあったが、最終的には入会が認められた[1]
  15. ^ 「福島誠一」の由来は、「福島」(小原の郷里)+「誠一筋に生きたい」という意味[1]
  16. ^ この当時は、死刑囚に対して執行前日以前に執行日が告知されていた[24]
  17. ^ 同事件は1977年に加害者少年の死刑が確定[27]。第一審の論告求刑では、東京地方検察庁の検察官が「同事件(正寿ちゃん誘拐殺人事件)は雅樹ちゃん誘拐殺人事件や、本事件と並ぶ三大凶悪事件」と陳述している[28]
  18. ^ この番組の放映開始直前の同日早朝、被害者の遺体が発見された。
  19. ^ 当時のレコードジャケットのタイトル表記は「ボニージャックス(キング)かえしておくれ今すぐに」、「ザ・ピーナッツ(キング)かえしておくれ今すぐに」、「フランク永井(ビクター)返しておくれ今すぐに」、「市川染五郎(コロムビア)返しておくれ今すぐに」、「芦野宏(東芝)かえしておくれ今すぐに」となっている。これらの中ではザ・ピーナッツ版が複数回にわたってCD化されており、比較的入手が容易となっている。
  20. ^ レコード・ジャケットには、ジェームズ・ボンドに扮したショーン・コネリー(本事件とは無関係)の写真が使用されている[35]
  21. ^ 芦田が演じた堀塚刑事には、主任刑事であるだけでなく、容疑者を自白に追い込むという、平塚八兵衛刑事の要素も含まれている[36]。また、後年制作された『戦後最大の誘拐』には、芦田、ならびに市原悦子(役柄も容疑者の愛人で同一)が、本作に引き続き出演している。

出典

  1. ^ a b c d e f g h 毎日新聞』1972年3月16日東京朝刊第14版第一社会面23頁「吉展ちゃん事件 小原保、昨年暮れに処刑 「歌」に託し償いの日々 同人誌に“直前”まで投稿」(毎日新聞東京本社) - 『毎日新聞』縮刷版 1972年(昭和47年)3月号475頁
  2. ^ 『読売新聞』2000年12月31日東京朝刊特集B面23頁「データで振り返る20世紀 事件に見る日本の100年=特集」(読売新聞東京本社)
  3. ^ a b 本田『誘拐』、『本田靖春集1』p.32
  4. ^ 本田『誘拐』、『本田靖春集1』pp.119 - 121
  5. ^ 関連記事 - 鈴木法科学鑑定研究所。「午後は○○おもいっきりテレビ」出演時に「当時の警察では声紋鑑定をしていない事実を説明」したとある。
  6. ^ 朝日新聞1963年4月26日14頁。この記事で金田一は犯人像について「教養の低い人と見られるにもかかわらず(中略)高圧的な言葉遣いをしている」ことから「戦前に軍隊に籍を持ち、下士官づとめをしていた人ではないかと思わせる」と述べているが、こちらは実際の犯人には当てはまらなかった。
  7. ^ 本田『誘拐』、『本田靖春集1』pp.128 - 129)
  8. ^ a b 本橋信宏『60年代郷愁の東京』主婦の友社、2010年、pp.34 - 35)
  9. ^ a b c 後述のNHKスペシャルによる。[出典無効]
  10. ^ 本田『誘拐』、『本田靖春集1』pp.101 - 108
  11. ^ ニュースパレード - 全国ラジオネットワーク
  12. ^ 表彰番組・事績 - 日本民間放送連盟
  13. ^ a b c d e f 1990年4月8日放映のNHKスペシャル「声~吉展ちゃん事件取り調べテープ~」の内容による。この番組では平塚の自宅に現存していた小原の取り調べを録音したテープや平塚の捜査メモを元に、その内容を再現した。
  14. ^ 本田『誘拐』『本田靖春集1』pp.185 - 186
  15. ^ 本田『誘拐』『本田靖春集1』pp.187 - 188
  16. ^ 本田『誘拐』、ちくま文庫版、pp.308 - 309。
  17. ^ 本田『誘拐』『本田靖春集1』pp.188 - 189
  18. ^ テレビ東京解禁!暴露ナイト」2013年9月27日放送分(TVでた蔵による採録)
  19. ^ 『毎日グラフ』別冊「事件記者百年」pp.86 - 87、1967年毎日新聞社
  20. ^ a b 朝日新聞』1972年3月17日東京朝刊第13版第二社会面22頁「吉展ちゃん事件 小原すでに刑死 昨年末戸籍まっ消」(朝日新聞東京本社
  21. ^ “「吉展ちゃん」社会が共振”. 日本経済新聞. (2022年3月7日) 
  22. ^ a b c 『刑事一代 平塚八兵衛の昭和事件史』p.88
  23. ^ 赤瀬川原平(監修)『生き方の鑑 辞世のことば』講談社〈講談社+α文庫〉、2009年
  24. ^ “ある朝、突然死刑台に”. 西日本新聞. (2020年12月22日). https://www.nishinippon.co.jp/item/n/675748/ 2022年2月5日閲覧。 
  25. ^ 毛利, 文彦「第五章 刑事警察の特殊部隊」『警視庁捜査一課特殊班』角川書店、2002年。ISBN 978-4043762019 
  26. ^ 仙台地方裁判所 昭和39年(わ)417号 判決 - 大判例
  27. ^ 読売新聞』1977年12月20日東京夕刊第4版第一社会面9頁「正寿ちゃん誘かい殺人 「K」の死刑確定」(読売新聞東京本社
  28. ^ 『毎日新聞』1972年2月5日東京夕刊第4版第二社会面8頁「正寿ちゃん殺しに死刑を求刑」(毎日新聞東京本社) - 『毎日新聞』縮刷版 1972年(昭和47年)2月号160頁
  29. ^ 『毎日新聞』1969年9月11日東京夕刊第4版一面1頁「正寿ちゃん誘拐かい殺人 犯行、一週間前から計画 すぐ殺すつもり ビニール袋まで用意 少年が自供」(毎日新聞東京本社) - 『毎日新聞』縮刷版 1969年(昭和44年)9月号321頁
  30. ^ 引田惣弥『全記録 テレビ視聴率50年戦争―そのとき一億人が感動した』講談社、2004年、2頁、222頁。ISBN 4062122227
  31. ^ 週間高世帯視聴率番組 > 過去の視聴率 > 全局高世帯視聴率番組50 株式会社ビデオリサーチ。
  32. ^ 志賀信夫『テレビ人間考現学』1970年毎日新聞社[要ページ番号]
  33. ^ 石橋春海著『封印歌謡大全』(2007年4月三才ブックス)P.66 - 67。
  34. ^ 三原茂『出逢いおもしろ人生 こぼれギターの流れ旅』馬三企画、1992年、83〜92頁。ISBN 4-88854-151-5
  35. ^ 『思い出のバカレコード大全』オークラ出版、2017年、13頁。ISBN 978-4-7755-2699-6
  36. ^ キネマ旬報』1966年7月下旬号(No.419)掲載『一万三千人の容疑者』シナリオ pp.83 - 103(キネマ旬報社)。
  37. ^ 戦後最大の誘拐・吉展ちゃん事件 - テレビドラマデータベース
  38. ^ 恩地日出夫・著『「砧」撮影所とぼくの青春』pp.264 - 270。1999年文藝春秋ISBN 4163552502
  39. ^ 映画秘宝2018年11月号、pp.69 - 71「『実録・昭和の事件シリーズ』の世界」。恩地日出夫監督、オフィス・ヘンミ(当時)の中村和則プロデューサーへのインタビューを中心に構成。
  40. ^ 『日本一の色男』本編を収録したDVDを付属した『東宝 昭和の爆笑喜劇DVDマガジン』第6号(2013年・講談社)本誌に掲載された、泉麻人のコラム『ソコモド!!(6) - 番台脇の「吉展ちゃん」』より。


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