日本の比較広告
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1966年のトヨタ・カローラの広告で「プラス100CCの余裕」というキャッチコピーが使われ、日産・サニーに対する優位性を主張し、一方で日産も1970年の「サニー1200」の広告で「隣のクルマが小さく見えます」というキャッチコピーを使い、カローラに対する優位性を主張した ように、他社との比較は昔から行われてはいた。しかし、日本に於いては、誹謗のおそれがあることや景品表示法の不当表示に抵触する恐れがあるため、具体的な相手名を名指しするような行為は忌避されていた。 1980年代に入り、外資系企業から自由な広告営業への圧力が強まると、1987年に公正取引委員会から俗に言う「比較広告ガイドライン」が発表された。このガイドラインで、景品表示法において比較広告は禁じられていないことが確認され、内容が客観的に実証されていることと、その事実を正確かつ適正に示すことが求められるようになり、これを受けて一部の業種で比較広告が行われるようになった。 ペプシコ・ジャパン(現・サントリー食品インターナショナル)が、「ペプシチャレンジ」と称した比較広告を展開した後、コカ・コーラとの比較広告でラップ歌手のM.C.ハマーなどを起用して、極めて欧米型の比較広告を展開した。さらにクレームが寄せられた後も、コカ・コーラのロゴに大袈裟なモザイクをかけて放送し続けるなど、視聴者に更なるインパクトを残すことに成功している。なお、同社は、CM放送終了後に視聴者アンケートを実施し、感想の回答者全員に無修正版のCMとアメリカ本国で放送している別の比較CM2本を収録したVHSビデオテープをプレゼントするという企画を実施した。 相手への攻撃と取られないように、客観的なデータの提示を行うものも多い。代表的な例が、後発電話会社(いわゆる新電電)の広告で、ある地域にかける固定電話料金について、NTTグループの料金と比較した優位性をアピールするものである。 日本では前記のペプシコ・ジャパンやApple Japan、バーガーキング などのように主に外資系企業で比較広告を行っていることが多いが、日本企業でも比較広告を展開したことがある。 1990年、セガ・エンタープライゼス(家庭用ビデオゲーム事業部。現・セガ)が携帯型ゲーム機のゲームギアを発売した際、前年の1989年に発売して大ヒットしていた、任天堂のゲームボーイに対抗し、イッセー尾形を起用したTVCMで、「ヨウヘイ君は白黒なの?つまんないね」「やっぱゲームはカラーじゃないとつまんないね」と語ったりと、対抗機種であるゲームボーイを強く意識した比較広告を展開していた。後に同社も、セガサターンとPlayStationの第5世代据え置き型ゲーム機のトップシェア争いが激しかった頃の1996年に制作され、セガサターン側にセガール、PlayStation側にアンソニーというチンパンジーを起用したTVCMもあり、ゲーム内容に飽きて投げ出すアンソニーを尻目にゲームに熱中するセガールで締めるという結末だった。 2000年代に入り、東海道新幹線の品川駅開業(2003年)と高速化による利便性向上に対抗するために日本航空(JAL)が「のぞみへ。先に、行ってるね(ハートマーク)」「空は、速い。空は、安い。JALで飛ぼう」と飛行機での優位性をアピールしたキャッチコピーを展開し、後に東海道新幹線を運行している東海旅客鉄道(JR東海)が「東海道新幹線のCO2排気量は航空機の約10分の1。」「地球温暖化防止のために、できること。新幹線でECO出張」と新幹線が環境に優しい移動手段であることをアピールして反撃したことがある。 2009年には、3代目トヨタ・プリウス 対 2代目ホンダ・インサイト が販売・広告両面において血で血を洗う争いを繰り広げた。ZE2インサイトのTVCMは、デビュー当時現行型だったNHW20プリウスの価格が230〜330万円程度だった 中でベースグレードが200万円を切るという「低価格」を売りにしたものであった。しかし、その直後に販売したNHW30プリウスにおけるカタログで、他社ハイブリッド車(当時“他社の市販車”はHonda IMA(インサイトとシビックHV)しか無かったので、すぐに分かる)に対する優位性を強調したものがあった。しかしあまりにも露骨かつ蔑ました内容(自車の優位性を自転車に例えてトヨタはアスリート2人、“他社”の方は普通のお父さんと子どもが漕いでいるというもの)のため、ホンダ側の申し入れにより刷り直し分からは、特に通知もなく削除された。そして、2009年冬頃になると、今度はホンダがプリウスの価格やエコカー補助金締め切りにも間に合わない納車時期の遅さに当てつけるかのように「お手頃なハイブリッドは?」「インサイトです!」「新年はハイブリッドで…」「それも、インサイトです!」というCMで反撃した。なお当時はまだHVの選択肢が少なかったためこのようなことが起こったが、そもそもフィットをベースとしたZE2(1.3L)/ZE3(1.5L)はカローラやアベンシスなどと基本構造を共有するZVW30(1.8L)より明確に格下のクラスに属する車両であり、直接比較するのは不適当である。 エコカーの広告に関しては、その後も後述のSKYACTIV(マツダ)やダイハツ・ミライースなど、いわゆる「第3のエコカー」が、純粋な内燃機関車であることのメリットを打ち出したり、ハイブリッドに関しても、ホンダの「ハイブリッドは、エコで終わるな(CR-Z)」「もっと選ばれる理由が必要だ。(フィットシャトル)」「環境のことだけで、ハイブリッドを選んでいませんか(シビック)」「(エコカーといえど)操る楽しさや心地よさまで放棄したクルマを、Hondaはつくりたくなかった。(インサイト)」、日産・エクストレイル「X-TRAILがヤワなハイブリッドの時代を終わらせる。」、フォルクスワーゲン・ゴルフGTEの「燃費だけのハイブリッドは、もう古い。」「退屈なハイブリッドに、終わりを告げる。」など、攻撃的ともとれるキャッチコピーを採用することが間々ある。 政治においては、2009年の第45回衆議院議員総選挙で、自由民主党による「保守色」を前面に押し出したウェブサイト、アニメCM他での民主党への比較広告作戦が展開されたが、選挙戦では敗北した。 西友のCMの中には、時にダブルミーニングや比較広告的な構成をとるものがある。 バッタリ篇 - 2009年放映。登場人物の姓が「やまださん」「こじまさん」「ビックさん」「たかたさん」と、ヤマダ電機・コジマ・ビックカメラ・ジャパネットたかたといった家電販売大手を連想させるかのような設定になっている。 新生活のうた篇 - 2010年放映。CM曲が表向きは「西友にとりあえず行けや」と歌っているのだが、その区切り方から「まずは西友、その次にニトリ、そしてIKEA」と言う内容に聞こえる。 パチイチ中学生篇 - 2014年放映。当時西友が実施していた「81円(税抜)キャンペーン」のCMの一つ。「160円のノーブランド品自販機ドリンクを買おうとした男子学生3人組が、気がついたら西友の店内におり、彼らの手にはコカ・コーラ等の有名メーカー品が握られていたと同時に税抜81円で買えることが示される」というもの。このCMは登場人物が男子学生であることや「こづかい節約」と言うフレーズが登場することなど、一般的にスーパーのCMがターゲットとしないことが多い学生層にアピールするものである。
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