戦中の中岡家の近隣
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/11 01:36 UTC 版)
「はだしのゲンの登場人物」の記事における「戦中の中岡家の近隣」の解説
朴(ぼく) 中岡家の隣に住んでいた朝鮮人の男性。ロイド眼鏡が特徴。徴用のため、朝鮮に妻と子供を残し、父親と朝鮮から広島に移り住む。朝鮮人であることで周囲から差別を受けていたが、分け隔てなく親切に接する中岡家の人々には好感を抱いている。また、非国民と迫害されても戦争に反対する大吉を尊敬し、大吉が警察の拷問から帰ってきた時には祝いの米を贈るなど、近所では朝鮮人の朴だけが中岡家の味方だった。 原爆投下の際にはほぼ無傷で助かり、パニックに陥った君江を諭してゲンと一緒に避難させた。一方で重傷を負った父親を見つけ救護所で治療を懇願してまわるも、朝鮮人であるがゆえに差別されて人間らしい手当てを施されることなく、もがき苦しむ父親の臨終を見届けた。これを境にそれまでの穏和な性格は一変し、日本人を激しく憎むようになる(怒りの度合いは、父親の荼毘の際、原爆投下後に初めて訪ねてきたゲンにも怒りをぶつけたほど)。しかし、父親の荼毘を手伝ったゲンへの好意は失わず、その後も中岡家への協力を惜しまなかった。 数年後、闇市で財を成し、ナス型サングラスをかけた強面の人物としてゲンの前に再び現れたことから、驚かれる。以後はゲンの依頼を引き受ける商店主として時折登場するが、ゲンが「人に甘えず自力で解決したい」と援助を断った際にはその気持ちを忘れないようにと激励した。また、故郷の朝鮮が南北に分断して対立する朝鮮戦争が起こったことを嘆いていた。アニメ版では「近所の人の好いおじさん」といった雰囲気の端役で、原作での彼の背負う苦悩は一切描かれなかった。また テレビドラマ版では現在の慣習に合わせ、苗字を日本語読みの「ぼく」から朝鮮語読みの「パク」と読み方を変更し、「永甫」という名前が新たに設定された。 現実の中沢家の近所にも朴という朝鮮人一家が真裏に住んでいた。老人と夫婦と娘という家族構成で、娘が中沢と同年代だったことからよく遊びに行き、おやきをご馳走になるなど優しく可愛がってもらった。現実の朴一家の家は強制疎開で壊されてしまい、以後会えなくなったという。 鮫島 伝次郎(さめじま でんじろう) 原爆投下前は町内会長を務めていた俗物な戦争支持者。作中では、最後まで改心することなく悪事を貫いた人物として描かれている。市内の竹槍訓練の際に大吉が戦争反対を訴えたことを契機に、戦争に反対する中岡家を非国民として忌み嫌い、大吉を危険思想の持ち主だとして警察に突き出したり、徒党を組んで中岡家が大切に育てた麦畑を荒らすなど多くの嫌がらせ行為を行う。その後、原爆投下の際、息子の竜吉と共に家屋の下敷きとなり、通りかかったゲンに懇願したことで渋々ながらも救出され、今までの嫌がらせから掌を返すかのようにゲンにお礼を言ったものの、逆にゲンから大吉・英子・進次の救出への協力を頼まれたときには、押し寄せる炎より我が身可愛さから逃亡した。 5巻にて講演会をしているのをゲンがたまたま発見した形で再登場し、戦後は軍の倉庫などから盗みを働いたり、ヤクザと結託したりして悪事を行いながら闇市で資産を蓄え、更には商店会会長に就任したが、講演中にゲンを目にした際にはずっと死んでいたものと思っていた為に「お前生きていたのか」と言いながら驚き、過去の自身を唯一知っていたゲンの口から過去が明かされることを恐れて彼を追い出す。その後はゲンの放火によって講演会を妨害される。6巻では隆太が賭場荒らしの際の宿でヤクザや医師の倉田と共に賭博に興じる。9巻ではその後市会議員を経て県会議員となっている事が判明し、自らを戦時中からの戦争反対派・平和の戦士であったと偽って講演会を開いていた。戦争に喜んだ過去がありながら政治を動かそうとする面の皮の厚さに憤ったゲンや隆太、ムスビによって看板を破壊された。 鮫島 竜吉(さめじま りゅうきち) 鮫島伝次郎の息子。国民学校6年生。父親同様戦争に反対する中岡家を快く思わず英子、ゲン、進次の3姉弟を執拗にいじめるが、英子に濡れ衣を着せた際、謝罪後に大吉やゲンから「陰で人をおとしいれる行為をした」ことで殴られるなど、とあるごとにしっぺ返しを喰らわされる。原爆投下後は父親と一緒にゲンに助けられるが、父親と同じく中岡家を助けることなく逃亡する。ドラマ版では、英子への前述のことで、大吉に問い詰められた際、嘘を白状して素直に謝罪するなど原作に比べて人間性が良くなっており、正直に謝罪したことに免じて、大吉にその勇気を認められると同時に許された。その後の消息については原作・映画・テレビドラマ版でも描写は無く不明。実写映画版、テレビドラマ版では名前を「たつきち」と読む。 伝次郎の妻 竜吉の母親。伝次郎や竜吉とは対照的な良識者であり、原爆投下前には「中岡さんをいじめない方がいい」「中岡さんが言っていることが正しいような気もする」「戦争は何一つ私達に良い事をしてくれない」などと述べ、伝次郎を諌めた。原爆投下以後の登場はない。 堀川(ほりかわ) 原爆投下前、ゲンの近所に住んでいたガラス屋。自身は徴兵されて戦地で地雷を踏んで右足を失い、愛息も予科練に志願して戦死、妻も病気がちという苦難の一家で、戦傷が原因で充分な仕事ができず借金に苦しんでいた。自分を助けようとする目的(店の売り上げを増やす目的)で他人の家のガラスを割っていたゲンに感激し、予科練に志願して戦死した息子の物だった形見の軍艦模型をゲンにプレゼントする。原作では原爆投下後の消息は不明。実写映画版では原爆投下時には無傷で生還するが、妻は重傷を負った後亡くなり、ゲンと一緒にその亡骸を荼毘に付す。テレビドラマ版には登場せず、軍艦の模型も登場していない。 土橋(どばし) 原爆投下前、町内に住んでいた男。中岡家を非国民として忌み嫌い、中岡家が大切に育てた麦畑を荒らした。鮫島伝次郎とは将棋を指す仲。その後の消息については原作・映画・テレビドラマ版でも描写は無く不明。 木島(きじま) 原爆投下前、ゲンの通っていた国民学校の教師であり、ゲンのクラスの担任。兵隊に出す手紙で戦争反対の内容を書いたゲンを殴った。盗みの濡れ衣を着せられた英子を疑ったため、大吉に殴られる。その後の消息については原作・映画・テレビドラマ版でも描写は無く不明。 沼田(ぬまた) 原爆投下前、ゲンの通っていた国民学校の教師であり、英子のクラスの担任。盗みの濡れ衣を着せられた英子を疑い裸にして調べさせため、大吉に殴られるが、その後も盗みの真偽に関係なく中岡家を泥棒に仕立てようとしており、正直に言った竜吉を殴った。その後の消息については原作・映画・テレビドラマ版でも描写は無く不明。 国民学校の校長 原爆投下前、ゲンの通っていた国民学校の校長。中岡家を非国民と見ているかは不明(テレビドラマ版では中岡家を非国民扱いしており、竜吉の自供後、沼田とともに大吉に殴られる)。中立的な立場であり、沼田達を殴る大吉を止めたり、疑った沼田達にこれ以上問題を起こすなと注意する。その後の消息については原作・映画・テレビドラマ版でも描写は無く不明。 鯉を飼っている男性 原爆投下前、自宅の池で鯉を飼っていた男性。一見すると厳格だが、根は茶目っ気があり優しく、体格の良い中年である。君江の病気を治すために鯉を盗ろうとしたゲンと進次を殴りつけたが理由を知り、自らも親孝行できないまま母親を亡くした過去から鯉を譲った。その後の消息についての描写は原作・映画・テレビドラマ版では描写は無く不明。アニメでは先端がへの字に曲がったようなヒゲを生やした坊主頭の男性と全く別人に描かれているが、原作以上に優しい性格で、中岡家に行き原作では面識のない大吉に事情を説明した後ゲンと進次を「親孝行ないい息子さん」と賞賛し、草餅を贈った(原作の堀川の役割も兼任しているといえる)。また、原爆投下時には爆風で頭部が吹き飛ばされて即死するシーンが描かれている。テレビドラマ版では鯉を盗まれっぱなしであるため、ゲンたちを殴りつけていなかった。
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