十句観音経
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『十句観音経』(じっくかんのんぎょう)は、仏教経典の一[1]。別名を『延命十句観音経』(えんめいじっくかんのんぎょう)とも言うが、「延命」の二字を付け加えたのは江戸時代の臨済宗中興の祖といわれる白隠である(後述)[2]。
注釈
- ^ a b 然るに此御經、世の人多く怪む者多し、大凡五時八時の間には、華嚴部か、阿含部か、方等 般若 法華部か、五千四十八巻の中、何れを尋ねさがして終ひに正しき出所なし。如何様是は必ず僞經ならんと、眉を皺むる人ある由、何者にせよ甚だ無知の穿鑿なり[4]。汝知らずや、此經は漢土にては、觀世大士法師の形を現じ玉ひ、孫敬徳と云ひし者に口づから授け玉ひ、我朝にては北野の御神正しくも沙門の形を現じ面のあたり授け玉ふ、豈疑ひの有るべきや、熟々考ふるに、彼北野の御神も、内密は即ち菩薩行本地十一面觀世大士の御化身なる由、蟠桃稿と云へる双紙の面に分明なり、僞にせよ眞にせよ斯ばかり靈驗ましまして、世上を利益し玉ふからには、近松文佐が作にもせよ、至道軒が説にもせよ、随分信仰申し晝夜に讀誦し、此御經の利益に依りて在家は家業繁榮し、火難盗難水難等を逃れ、萬事目出度浮世を渡らば上もなき吉兆ならずや、出家は次第に信心堅固大道の淵源に徹し、常に勤めて大法施を行じ、大菩提を成就せん事皆此經の功徳ならずや、武士は晝夜に忠勤を励みまし、武術を精錬する間も片時も更に間斷無く、勤めで竊に此經文を秘誦し、武運を養ひ頴氣を増し、君を堯舜の君にし、民を堯舜の民にし、子孫は次第に繁榮し、王位を守護し萬民を安撫し、御當家御代長久萬々歳を祈らば、之に過ぎたる大忠節は是有るべからず。譬へば彼の、人蔘、黄祇、忍冬、莎蔘等の如き大妙藥の出所正しからず來由明らかならずと云ひて之を棄擲して可ならんや、只彼の功能の難治の重症を治し、人の病苦を救ふを以て貴としとすらくのみ、如何なる愚夫か彼の出所を尋ね來由を問ふに暇あらんや。
- ^ 「仏法僧縁」につくるのは日本の書物のみで、来歴に掲げる中国伝承の『太平広記』『太平御覧』『仏祖統紀』は「仏法相縁」につくる。
- ^ 『太平広記』は「常楽我情」につくる。
- ^ a b 白隠慧鶴『延命十句観音経霊験記』は「念念」を「念々」につくる。(明治28年 経世書院刊 末尾掲載の経文)
- ^ 『太平御覧』は「念仏不離心」につくる。[1]
- ^ こばやし しょうせい(1876年 - 1937年)茨城県古川市出身。明治 - 昭和前期の真言宗僧侶。
- ^ 一切衆生は如来の智慧徳相を有し(仏の種を有す)、一切衆生は実在せる一切の諸仏と縁を持つ[5]。
- ^ 「仏法相縁」であれば「仏法の相(認識されるもの即ち「境」が「認識されたすがた形」)は常楽我浄の悟へとつながります」となろう。
- ^ 『談藪』の原文は確認できない。
- ^ 〔 延命十句と佛教大綱 〕[8] 此の『延命十句觀音經』は人皇百十二代靈音天皇が御位を譲られて法皇として佛教御研鑽の時、比叡山の靈空律師に、『文句の最も短くて、其の功徳の最も大きいお經を選び出せよ』との御仰せがあつたので、律師は普く一切經を探して支那の南北朝時代の王玄謨といふ人の誦したこの經を得て上覽に供せられたといふ言ひ傅へのある最も簡單な御經でありまして句は十句、字數は僅かに四十二字でありますが、これに佛経の大要が悉く含まれて居ると申しても差支へないのであります。
- ^ ただし白隠は読誦による功徳と現世利益に関して[13]「如上逐一枚擧する所の限りも無き十句經の靈驗、正眼に看來れば唯是世間住相有爲夢幻空華の談論取るに足らず。茲に一段眞正最妙最玄最も第一なる底の大靈驗有り、乞ふ試に之を論ぜん」と述べ[14]、「座禅しつつ十句観音経を念誦することで悟りに進め」と説く[15]。
出典
- ^ a b 観音さま入門 1981, p. 148.
- ^ 観音さま入門 1981, p. 150.
- ^ 原田祖岳 1947, p. 12第一節 十句観音経と一切の佛教
- ^ 白隠広録(2) 1902, p. 184原本76-77頁
- ^ 原田祖岳 1947, pp. 44–46.
- ^ 宋書 卷七十六 列傳第三十六 朱修之宗愨王玄謨
- ^ 原田祖岳 1947, p. 21第三節 十句観音経の由来
- ^ 修養大講座(10) 1940, p. 204原本395頁
- ^ 『延命十句観音経霊験記』(明治28年 経世書院刊 p.12-13)
- ^ 観音さま入門 1981, p. 149.
- ^ 原田祖岳 1947, pp. 13–20第二節 十句観音経と白隠禅師
- ^ 『延命十句観音経霊験記』(明治28年 経世書院刊 pp.13-14)
- ^ 観音さま入門 1981, p. 151.
- ^ 白隠広録(2) 1902, p. 202原本113頁
- ^ 原田、十句観音経霊験記 1979, pp. 81–82.
- ^ a b c 観音さま入門 1981, pp. 160–162.
- 1 十句観音経とは
- 2 十句観音経の概要
- 3 関連文献
- 4 外部リンク
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