不当労働行為の種類とは? わかりやすく解説

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不当労働行為の種類

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/13 01:11 UTC 版)

不当労働行為」の記事における「不当労働行為の種類」の解説

労働組合法は、使用者不当労働行為のみを規定している。しかし、団結権団体行動権影響与えからといって、かかる使用者行為のすべてを禁止しているのではない。即ち、それは使用者正当な行為禁ずるものではなくまた、労働者側の不当な行為までも保護するものではない(昭和32年1月14日発労第1号)。 以下の使用者行為が、不当労働行為とされる第7条各号)。 労働者労働組合組合員であること、労働組合加入し若しくはこれを結成しようとしたこと若しくは労働組合正当な行為をしたことの故をもって、その労働者解雇し、その他これに対して不利益な取扱いをすること又は労働者労働組合加入せず、若しくは労働組合から脱退することを雇用条件とすること。ただし、労働組合特定の工場事業場雇用される労働者過半数代表する場合において、その労働者がその労働組合組合員であることを雇用条件とする労働協約締結することを妨げるものではない。前段いわゆる不利益取扱後段黄犬契約不当労働行為として扱う旨の規定である。「不利益取扱」とは、解雇転勤降給降格減給出勤停止譴責等、労働者にとって経済的精神的に不利益な取扱であって法律行為のみならず事実行為をも含み作為たると不作為たるとを問わない何が不利益取扱であるかについては、個々場合実情即して判断すべき問題である(昭和32年1月14日発労第1号)。 但書は、労働協約によって、その労働組合組合員であることを雇用条件とすること(特にユニオン・ショップ協定)は不当労働行為はしない旨を規定する採用拒否は、三菱樹脂事件示され企業の「採用の自由」を重視する考えから、特段事情がない限り不利益取扱該当しないとするのが現行の最高裁立場であるが(JR北海道事件、最判平成15年12月22日)、学説はこの判決批判的である。 使用者雇用する労働者代表者団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと。団体交渉拒否不当労働行為として扱う旨の規定である。また、単に交渉応じるだけでなく、誠実に交渉を行う義務がある。 労働者労働組合結成し若しくは運営することを支配し若しくはこれに介入すること、又は労働組合運営のための経費支払につき経理上の援助与えること。ただし、労働者労働時間中に時間又は賃金を失うことなく使用者協議し、又は交渉することを使用者が許すことを妨げるものではなく、かつ、厚生資金又は経済上の幸若しくは災厄防止し若しくは救済するための支出実際に用いられる福利その他の基金対す使用者寄附及び最小限広さ事務所供与を除くものとするいわゆる支配介入経理援助不当労働行為として扱う旨の規定である。本来労働組合任意に決めるべきである、組合員資格範囲限定や、上部団体加入対す妨害は、不当労働行為となる。もっとも、労働者のうち誰が組合員であるかを使用者調査することは、一般的に直ち支配介入に当たるものではない(最判平7.9.8)。労働組合#便宜供与参照。 「支配」及び「介入」とは、いずれも労働組合内部意思干渉する行為であるが、「支配」はその結果労働組合意思左右することをいい、「介入」とは左右する程度にまで至らないものをいうのであり、使用者労働協約定めところに従い組合費天引を行うこと(チェック・オフ)は「支配」「介入」にならないことはいうまでもない昭和24年8月1日富山県経済部長あて労働省労政労働法規課長通知)。 使用者交渉又は協議の為使用者意思により労働組合代表者交渉地に参集求めた場合においても、その交渉地に赴くための旅費宿泊費等を使用者支給することは「経理上の援助」に該当する昭和24年8月3日労収第6128号)。 就業時間中に組合活動をした場合事故欠勤的な取扱とせず勤怠成績影響なきものとするか否か例え勤続年数によつて昇任昇給なされるとき、組合活動をした日数をこの勤続年数算入するか否かは、使用者労働組合との間で自主的決定せらるべき問題であって勤続年数算入しても「経理上の援助」にはならない就業時間中になした組合活動時間中の賃金実際に支払わない労働基準法平均賃金健康保険法報酬又は雇用保険法賃金等について便宜上差し引かない計算すること自体は、労働組合法においては直ちに「経理上の援助ということはできないが、業務災害発生し、その傷病者労働者災害補償保険法によって災害補償を受ける場合には、かかる便宜扱による平均賃金によっては、補償費の支給は受けることはできないであって実際に支払われ賃金に基き平均賃金算定し、その正当な平均賃金によつてのみ補償費が支給せられる。従つて右の便宜扱による虚偽平均賃金告知報告等が事業主又は労働者等によつてなされた場合においては保険給付の制限及び罰則適用を受けるばかりでなく、場合によっては刑法上の犯罪として処罰せられることがある、又、雇用保険法にあつては、申告した保険料について更正がなされ、実際に支払われ賃金と異ることを知り乍ら異った賃金に基いて申告したときは、罰則適用を受けることがあるのであるから注意せられたい(昭和24年8月8日労収第5553号)。組合の非専従者である労働者会社の業務従事災害を蒙った場合災害補償費の算定基礎となる平均賃金は、会社よりその労働者に対して支払った賃金額についてこれを計算するであって、この場合労働組合より支払受けたものは平均賃金算定基礎とはならない昭和24年11月11日労収第8377号)。 専従職員社宅供与することは、その社宅供与現物給与性格をもつものであれば経理上の援助」に該当し福利厚生施設性格をもつものであれば経理上の援助」には該当しない昭和24年8月15日労収第6294号)。 労働組合専従役職員でない労働者労働委員会委員衆議院議員等の公職に就く場合は、この者は労働組合運営のための業務を行うものでないから、使用者がこの者の保険料支払うことは、「組合運営のための経費支払につき経理上の援助与えること」ではなく不当労働行為とはならない昭和24年10月10日労収第7929号)。 予備船員である期間中であっても組合事務専従するに対して会社給料支払うことは、不当労働行為該当するその場会社業務支障来さないということは理由ならない昭和24年12月22日労収第9964号)。 就業時間中の組合活動参加せる者(例え委員会出席する委員等)の氏名活動参加時間賃金支給或は差引)基準となるものを会社側は控置して組合活動時間当の賃金計算して置き、賃金支払に際して活動参加者にも一応賃金全額支給したる後、会社側は先に計算し置きたる差引くべき活動時間相当賃金額を組合に対して請求し労働組合は之に応じて会社返還するという方法経費援助)は、会社労働組合との間に明確な特約存し、それに従って組合会社対す返済厳格にされる限り不当労働行為には該当しない解されるが、実際このような行為脱法行為として行われるおそれがあるから好ましくない昭和25年1月13日労収第1029号)。 支配介入行為については、特に、使用者言論の自由との関係については問題が多い。使用者正当な言論の自由行使が、結果的に労働組合結成運営について影響があったとしても、これをもって不当労働行為とはいえない。特に不当な威圧利益誘導を伴う内部干渉にわたらない限り使用者労働組合事情調査し、あるいは労働組合もしくは組合員対し自己の所信述べ労働組合主張反駁したり、その非を指摘した批判することは、何らこれを禁止すべき理由がない。法は、決し労働組合神聖不可侵規定しているのではなく団体交渉相手方としての正当な自主性保障しているのである昭和32年1月14日発労第1号)。 「時間又は賃金を失うことなく」の「時間」とは時間給場合をいうのであるが、この時間給とは単にいわゆる時間給のみでなく、広く給与算定基礎労働時間におくという意味であり日給制月給制又は年俸制も勿論この中含まれる。従って、日給制月給であっても使用者協議又は交渉中の時間賃金支払うことを使用者が許すことを妨げるものではない。出来高払場合は、給与体系に応じて適宜計算すべきである昭和24年7月23日福岡県労働部長あて労働省労政労働法規課長通知)。 但書より、争議行為参加して労務の提供をなさなかった場合に、労務の提供のなかった部分について賃金差し引かず支給することは不当労働行為となる。 労働者労働委員会対し使用者がこの条の規定違反した旨の申立てをしたこと若しくは中央労働委員会対し第27条12第1項規定による命令対す再審査申立てをしたこと又は労働委員会がこれらの申立て係る調査若しくは審問をし、若しくは当事者和解勧め若しくは労働関係調整法による労働争議調整をする場合労働者証拠提示し若しくは発言をしたことを理由として、その労働者解雇し、その他これに対して不利益な取扱いをすること。いわゆる報復的不当労働行為禁止規定である。労働関係調整法定めあっせんをなすにあたってあっせん員は、関係当事者に対して本号に規定する事項について、趣旨徹底を図らなければならない労働委員会規則661項)。同法定め調停・仲裁についても同趣旨の規定置かれている(労働委員会規則72条4項、第81条)。 ここでいう使用者」とは、労働契約上の使用者原則として一致するが、労働契約上の使用者ない場合であっても親会社子会社業務運営支配し子会社従業員労働条件実際親会社決定している場合には、子会社従業員組合要求があれば親会社はこれと直接団体交渉をする義務があるとされ、またこのような立場にある親会社は、子会社組合対す支配介入禁止される請負又は労働者派遣により社外労働者受け入れて就労させている企業(受入先企業)が、社外労働者就労について指揮命令行い就労諸条件決定している場合には、社外労働者直接雇用主事業主体としての実態をほとんど持っておらず、それら労働者実際上は受け入れ先企業従業員に近い状態にある場合には受入先企業唯一かつ全面的な使用者とされる(最判昭和51年5月6日、最判平成7年2月28日)。 出向場合は、使用者としての権限出向元・出向先で分担することになる。両会社とも不利益取扱および支配介入禁止される不当労働行為禁止規定は、憲法28条に由来し労働者団結権団体交渉権保障するための規定であるから、これに違反する法律行為当然に無効となる(最判昭和43年4月9日)。違反する事実行為についても、特段事由のないかぎり、公序違反として不法行為法違法になると解される東京地判平成2年5月16日)。

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