リチャード・ファインマンの役割とは? わかりやすく解説

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リチャード・ファインマンの役割

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/30 01:28 UTC 版)

ロジャース委員会報告」の記事における「リチャード・ファインマンの役割」の解説

委員会メンバーのうち、最も有名な者の1人理論物理学者リチャード・ファインマンである。委員会スケジュール従わない彼の調査スタイルは、ロジャースを困らせ、ある時は「ファインマン悩みの種だ」とコメントされたこともあった。テレビ通じたヒアリングで、ファインマンはよく知られているように、材料サンプル氷水入ったグラス浸し氷点下温度如何にOリング弾力性なくなり気密性損なうかを実証したファインマンの独自の調査で、NASA技術者幹部の間の情報断絶想像されていたよりもずっと著しかったことが明らかとなったNASA高官対す彼のインタビューは、基礎的な概念驚くべき誤解があることを明らかにした。そのような概念1つは、安全率決定であった例えば、初期試験で、いくつかのブースターロケットのOリング3分の1のところで燃えた。これらのOリング固体燃料ブースター構成する垂直円筒状の区画必要なガス漏らさないためのものであるNASA責任者はこの結果Oリング安全率が3であることを示すものとして記録したファインマンは、信じられない思いでこの誤り重大性説明した。「安全率」とは、ある物体考えられる限り上の力を受けた時に耐えることができる設計である。ファインマン説明要約すると、実際に1000ポンド上の負荷がかかることが考えられない場合に、3000ポンドまで無傷で耐えられる設計する安全率は3となる。しかし、1000ポンドトラック渡ってひびが生じたとしたら、それが3分の1にしか達していなかったとしても、安全率はもはや0であり、実際に崩落しなかったとしても欠陥品のであるNASA責任者がこの概念誤解していただけではなく実際は全く逆の意味使っていたことに対しファインマン明らかに動揺していた。ファインマンは、NASA幹部技術者の間の情報伝達不足をさらに調査し幹部が、スペースシャトル大事故起きリスク10万回に1回と話すのを聞いて衝撃受けたファインマンはすぐに、この主張ばかばかしさ気付いた。このリスク評価では必然的結果としてNASA274年毎日スペースシャトル飛ばして平均して1回しか事故起こらないということになる。ファインマンは、この10万回に1回という数値有人飛行前提とした目標値であり、そこから部品故障率算定するためのものであることに気付いたファインマンはこの状況2つの面に困惑していた。1つめとして、NASA幹部それぞれ個々ボルトにまで故障確率割り当て、その確率1億分の1だということもあった。ファインマンは、そのような科学的にまず起こりそうにないことを計算することは無意味であると指摘した2つめとして、ファインマンこのようなずさんな科学困惑していただけではなくNASA大事故が起こるリスクは「必然的に10万分の1になると主張していた。数字自体信じがたいものであったが、ファインマンは、この文脈で「必然的に」が何を意味しているのか、この数字が他の計算からも論理的に導かれるのか、それともそのような数字であってほしいというNASA幹部願い反映しているのか、といったことに疑問感じたファインマンは、10万分の1という数字空想上のもので、スペースシャトル惨事が起こる確率は荒い推定100分の1程度ではないか疑っていた。その後彼は、技術者自身調査を行うことを決め、彼らに匿名スペースシャトル爆発確率推定値を書かせた。ファインマンは、技術者大半がその確率50分の1から200分の1と評価していることを発見した(スペースシャトル退役時点135回の飛行で2件の大事故発生しており、確率は67.5分の1であった)。この事実は、NASA幹部技術者の間で意思の疎通明らかに図られていなかったことを確固としただけでなく、ファインマン感情に火を点けた。彼は、これらの意識違い述べにあたりNASA問題に関する厳しいが冷静な分析から次第離れ科学的な不備から倫理的な不備に至った認識する至ったNASA学校教師クリスタ・マコーリフ乗組員としてミッション参加させるため、この空想上数字公衆納得させる事実として示していたことに腹を立てたファインマンは、100分の1というリスク否定してはいなかったが、一般人飛行士起用するにあたって真のリスク正直に述べる必要があったと強く感じたファインマン調査最終的にチャレンジャー号事故の原因大部分NASA幹部安全率対す誤解にあることを示唆したOリングは、スペースシャトル固体ロケットブースター密閉しロケットの熱いガス逃げて機体損傷することを防ぐために設計されゴムリングである。ファインマンNASA主張をよそに、Oリング低温適していないもので、寒い時には弾力性失い、そのためロケット圧力固体燃料ブースター変形させた際に気密性保てなくなった疑ったファインマン疑いは、同委員会のクティーナからの、打上げ当日気温は、これまでの最も低かった12よりかなり低い氷点下2.2から1.6であったとのヒントから考えられたものであった。 またファインマン調査は、固体燃料ブースター製造したATKランチ・システムズ・グループ技術者からも、Oリングに関する多く懸念の声上がっていたが、情報共有の不足からNASA幹部伝わっていなかったことも明らかとした。彼は、NASAの他の多く部署でも同様の情報共有不足による失敗を見つけていたが、そのソフトウェア開発確固とした高い効率品質管理手順名指し褒めその後NASA幹部意向で、金を節約するために試験減らした省略されていたことを指摘したNASA幹部技術者対した彼の経験から、ファインマンNASA幹部科学理解欠如と、2陣営情報共有不足、そしてスペースシャトルリスクについての意図的な過小評価とその偽りの公表事故の原因であった結論付けNASA内部矛盾解決しスペースシャトル安全性に関する正直な絵を描けるまでスペースシャトル打上げ中断することを求めたファインマン委員会他のメンバー知性敬意持っていたものの、NASA積極的な批判ができる人物少ないことが問題だと初めから気づいていた。実際ロジャースは、報告書最後に今後国民政府NASA強く支持するべきだとの趣旨の「第10勧告」を盛り込みたいと提言行ない、他の委員たちはNASA内部事故の原因求めるべきであることを知りながら、NASA業務停止した資金減らしたりする必要はないと考えていることが明確となった。彼以外の委員会メンバーは、ファインマン反対意見を受け、多く請願受けた後でファインマン意見から、付録という形に格下げはされたが、その科学的かつ批判的な反対意見書報告書含めることにした。実際にファインマンは、NASAの「安全文化」の欠陥に非常に批判的であったため、ロジャースNASA寄り提案である第10勧告最終委員会後に盛り込もうとした時に付録Fとして付けられスペースシャトル信頼性に関する彼の個人的な見解報告書含められることと、第10勧告削除するまでは、自身署名報告書から除くように求めて抵抗した。この署名拒否事案マスコミの知るところになったが、実際は、クティナ氏の説得もあり妥協案を飲んで、第10勧告はやや語尾表現柔らくすることで採用され付録F(23号文案)もそのまま採用されることとなった。。 その付録を、ファインマン次のように結んでいる。 成功した技術にとって、現実性社会との関連よりも優先されなければならない。自然を欺くことはできないのだから。「原文:For a successful technology, reality must take precedence over public relations, for nature cannot be fooled.」 ファインマンは、1988年公表され著書 What Do You Care What Other People Think? でこの時の調査について書いている。本の後半は、調査内容と、科学政治の間の関係についてで占められている。

※この「リチャード・ファインマンの役割」の解説は、「ロジャース委員会報告」の解説の一部です。
「リチャード・ファインマンの役割」を含む「ロジャース委員会報告」の記事については、「ロジャース委員会報告」の概要を参照ください。

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