エモい
「エモい」とは、「感情が揺さぶられるような、または感動がこみ上げてくるような、何とも表現しがたい気持ち」の意味で用いられる若者言葉である。
基本的には「感動的」「胸を打つ」「心にしみる」「趣深い」「アツい」「琴線に触れる」「ぐっとくる」というような、複雑で抽象的な感動を表現する。あるいは、単に「スゴい」「ヤバい」くらいの意味で用いられることもある。全面的にポジティブ(肯定的)な表現である。
「エモい」の意味を端的に分かりやすくいえば、「うまく言葉にできないが心が動かされるようだ」ということである。「エモい」とは「えもいわれぬ感覚」である、という説明も、言い得て妙ではある。
「エモい」はさまざまな感情をひっくるめた抽象的な表現である。その意味では「趣がある」「しみじみする」「えも言われぬ」「もののあはれ」のような表現に近い。古語の「あはれ」や「をかし」にも通じるものがある、「エモい」は現代の「あはれ」である、といった指摘もある。
「エモい」はポジティブな表現ではあるが、単に嬉しい、ハッピー、感動的で泣ける、といったシンプルな気持ちの表現として用いられることは多くない。むしろ、郷愁、哀愁、切なさ、甘美な物悲しさ、もの寂しさ、感傷、ノスタルジー、センチメンタル、アンニュイ、といった「どこか悲哀にも似た感情」を伴う感動こそが「エモい」と表現されやすい。
若者言葉としての「エモい」は、2000年代後半にはすでに使われ始めていたとされる(使用例がある)が、一般にも浸透してよく使われるようになったのは2010年代半ば頃からである。とりわけ2016年に三省堂が選ぶ「今年の新語」で「エモい」が第2位となったことは、広い層に知られるきっかけになった。
「エモーショナル」のような外来語が日本語の中で用いられる場合、言葉は省略されやすく、かつ、日本語の活用語尾がつく。形容詞なら「-い」をつけて形容詞化される。
こうした日本語化の流れに従えば、自ずと「エモい」という表現になる(これは「エロい」「グロい」「チルい」「テクい」などと同じ要領である)。
音楽ジャンルとしての「emo」は、おおむね1990年代~2000年代に人気を博した、ハードコア・パンクの系譜につらなる音楽である。心の叫びを率直につづった歌詞や哀調を帯びた旋律(いわゆる「泣きのメロディ」)を特徴とする。
ジャンルとしての「Emo」は「イーモ」または「エモ」と読まれるが、Emo の曲を評して「エモい」と表現することも多々あった。
ちなみに「Emo」というジャンル名そのものは英語圏で成立した呼び名である。「emotional hardcore」が略して「emocore」となり、さらに略されて「emo」となった。
この場合の「エモい」は「エロい」と「キモい」の合成語である。つまり「エモーショナルな感じだ」という今日の「エモい」の意味合いとは別種の語義である。同音異義語の類といってもよい。
この「エロキモい」という意味の「エモい」を、今日における「エモい」の語源として捉えるのは無理がある。
これはとんちの効いた上手い洒落ではある。しかしながら「えもいわれぬ」を「エモい」の語源とする言説には無理がある。
「エモいの語源は《得も言われぬ》である説」は、いわゆる民間語源(語源俗解)である。もっともらしく聞こえはするが十分な根拠がない。
コラムニストの荒川和久が、自身のブログでこのことを明言しており、このブログの発言が実質的に「落合陽一がエモいを広めたインフルエンサーである」説の証言となっている。
「無限列車編」における煉獄さんの最期は、おそらく誰が観てもエモいが、そもそも劇場版鬼滅の刃に興味がない人にはエモさを理解されまい。
「BTSはエモい」と評されやすい。曲がエモい(エモい曲が多い)、ライブアクトもエモい、アナログ写真風のスナップショットもエモい。
BTSと同様にヒゲダンもクリープハイプもAdoの歌声もエモい。ドルヲタにとっては自担のすべてがエモい。
具体的な言葉に置き換えるにせよ、抽象的な表現に言い換えるにせよ、現代の若者言葉としての独特のニュアンスは多かれ少なかれ損なわれる。たとえば「琴線に触れる」は文語的であり若者の普段遣いの言葉の中には放り込みにくい。
あるいは、あまり具体的な表現で述べてしまうとしっくり来ない感情を、できるだけ生々しい状態に保つために、あえて「エモい」という抽象的な(ある意味で漠然とした)表現が好んで用いられている、という解釈も可能かもしれない。
「エモい」という表現は幅広く使えて便利である。その分、より詳細で具体的な、状況に適した表現を用いる能力の停滞を助長する可能性はある。
より具体的に表現するならば「sentimental(感傷的な)」「nostalgic(郷愁を感じる)」「melancholic(愁いを帯びた)」などの表現も使える。
たとえば「泣ける本」や「感情を揺さぶる曲」といった表現には「emotional」が使える。
「emotional」には「感情的な」「情緒的な」および「情にもろい」「感情に流されやすい」といった意味もある。この点は必ずしも日本語の「エモい」には対応しない。
基本的には「感動的」「胸を打つ」「心にしみる」「趣深い」「アツい」「琴線に触れる」「ぐっとくる」というような、複雑で抽象的な感動を表現する。あるいは、単に「スゴい」「ヤバい」くらいの意味で用いられることもある。全面的にポジティブ(肯定的)な表現である。
「エモい」の意味を端的に分かりやすくいえば、「うまく言葉にできないが心が動かされるようだ」ということである。「エモい」とは「えもいわれぬ感覚」である、という説明も、言い得て妙ではある。
「エモい」はさまざまな感情をひっくるめた抽象的な表現である。その意味では「趣がある」「しみじみする」「えも言われぬ」「もののあはれ」のような表現に近い。古語の「あはれ」や「をかし」にも通じるものがある、「エモい」は現代の「あはれ」である、といった指摘もある。
「エモい」はポジティブな表現ではあるが、単に嬉しい、ハッピー、感動的で泣ける、といったシンプルな気持ちの表現として用いられることは多くない。むしろ、郷愁、哀愁、切なさ、甘美な物悲しさ、もの寂しさ、感傷、ノスタルジー、センチメンタル、アンニュイ、といった「どこか悲哀にも似た感情」を伴う感動こそが「エモい」と表現されやすい。
若者言葉としての「エモい」は、2000年代後半にはすでに使われ始めていたとされる(使用例がある)が、一般にも浸透してよく使われるようになったのは2010年代半ば頃からである。とりわけ2016年に三省堂が選ぶ「今年の新語」で「エモい」が第2位となったことは、広い層に知られるきっかけになった。
「エモい」の語源
「エモい」の語源は、「英語のエモーショナルが語源である」「音楽用語の Emo に由来する」という2通りの説明が可能である。基本的には「エモーショナル」を日本語化した表現である
「エモい」は、英語の形容詞 emotional(エモーショナル)を語源とする表現といえる。「エモーショナル」のような外来語が日本語の中で用いられる場合、言葉は省略されやすく、かつ、日本語の活用語尾がつく。形容詞なら「-い」をつけて形容詞化される。
こうした日本語化の流れに従えば、自ずと「エモい」という表現になる(これは「エロい」「グロい」「チルい」「テクい」などと同じ要領である)。
音楽ジャンルの「emo」が最初の主な使用例である
「エモい」という表現は、ポピュラー音楽のジャンルである「emo」に関する話題を通じて広く使われるようになったとされる。その意味では「emo」を「エモい」の語源とすることもできる。音楽ジャンルとしての「emo」は、おおむね1990年代~2000年代に人気を博した、ハードコア・パンクの系譜につらなる音楽である。心の叫びを率直につづった歌詞や哀調を帯びた旋律(いわゆる「泣きのメロディ」)を特徴とする。
ジャンルとしての「Emo」は「イーモ」または「エモ」と読まれるが、Emo の曲を評して「エモい」と表現することも多々あった。
ちなみに「Emo」というジャンル名そのものは英語圏で成立した呼び名である。「emotional hardcore」が略して「emocore」となり、さらに略されて「emo」となった。
「エロくてキモい → エモい」は別系統の表現である
すでに廃れた表現であるが、かつて(2000年代前半あたり)「ギャル語」として「エモい」という言い方が用いられたことがある。この場合の「エモい」は「エロい」と「キモい」の合成語である。つまり「エモーショナルな感じだ」という今日の「エモい」の意味合いとは別種の語義である。同音異義語の類といってもよい。
この「エロキモい」という意味の「エモい」を、今日における「エモい」の語源として捉えるのは無理がある。
「えもいわれぬ → エモい」ではない
「エモい」は「えもいわれぬ(得も言われぬ)」ような感覚のことである、と説明されることがある。これはとんちの効いた上手い洒落ではある。しかしながら「えもいわれぬ」を「エモい」の語源とする言説には無理がある。
「エモいの語源は《得も言われぬ》である説」は、いわゆる民間語源(語源俗解)である。もっともらしく聞こえはするが十分な根拠がない。
「エモいを流行らせた人は落合陽一」が定説
「エモい」という表現を考案した人はもはや特定が困難であるが、世間一般に「エモい」という表現を浸透させた立役者としては、落合陽一氏の名が挙げられることが多い。コラムニストの荒川和久が、自身のブログでこのことを明言しており、このブログの発言が実質的に「落合陽一がエモいを広めたインフルエンサーである」説の証言となっている。
「エモい」の使い方
「エモい」は若者言葉らしくさまざまな語形に活用される。文法的な使い方
「エモい」は形容詞として扱われ、形容詞として活用される。- 冬の夜の空はさぞエモかろう(未然形)
- 90年代のドラゴンボールはエモかった(連用形)
- セーラームーンのアニメは今みてもエモい(終止形)
- おしゃれでエモいイラストの壁紙をください(連体形)
- エモければアイコンでも何でもいいです(仮定)
- スターバタフライのエモさを布教したい
- CUBE JUICE の MV とか超エモくない?
- ジブリとか80年代アニメはエモに満ちてる
- 特に「耳をすませば」とかはエモすぎる
- うわっ!エモっ! エッッモ!
- これ超エミぃくね?
「エモい」の使いどころ
「エモい」の主な使いどころは、「うまく言葉にできない感動」を表現したい場面である。 「エモい」は、郷愁、哀愁、悲壮感、懐かしさ、愛しさ、切なさ、心強さ、高揚感、胸がときめく感覚、などを表現する言い方として特に用いられやすい。「エモいもの」の例
- 自然の風景や花鳥風月(空、風、雲、桜、紅葉、海辺、等々)
- 夜や薄暮の雰囲気(夜空、茜色の空、夜道の灯り、工場夜景、等々)
- 青春ぽいもの(集合写真、高校3年の大会・学園祭、制服で踊ってみた動画、学園モノの物語)
- レトロなもの、遠い昔を偲ばせるもの(昭和レトロ家具、平成レトロファッション、チェキ、写ルンです、廃墟、廃線、コケやツタに覆われた人工物、腐海の森)
- 切ない物語、甘酸っぱい恋物語、友情がアツい物語
「無限列車編」における煉獄さんの最期は、おそらく誰が観てもエモいが、そもそも劇場版鬼滅の刃に興味がない人にはエモさを理解されまい。
「BTSはエモい」と評されやすい。曲がエモい(エモい曲が多い)、ライブアクトもエモい、アナログ写真風のスナップショットもエモい。
BTSと同様にヒゲダンもクリープハイプもAdoの歌声もエモい。ドルヲタにとっては自担のすべてがエモい。
「エモい」の言い換え表現
「エモい」は具体的に表現できる
「エモい」は「名状しがたい(うまく言い表せない)感動」を形容する抽象的な表現である。たいていの場合、より具体的な表現で言い表せる。「エモい」を抽象的なまま言い換えることもできる
「エモい」と同じく抽象的であり「エモい」の言い換えに使える表現も多々ある。具体的な言葉に置き換えるにせよ、抽象的な表現に言い換えるにせよ、現代の若者言葉としての独特のニュアンスは多かれ少なかれ損なわれる。たとえば「琴線に触れる」は文語的であり若者の普段遣いの言葉の中には放り込みにくい。
「エモい」は「エモい」としか表現できない場合がある
「エモい」の代用となり得る言い換え表現は多々あるが、あえてそれらの表現を使わず「エモい」と表現するのは、「陳腐化した表現を避ける」ような意図や効果があるとも解釈できる。あるいは、あまり具体的な表現で述べてしまうとしっくり来ない感情を、できるだけ生々しい状態に保つために、あえて「エモい」という抽象的な(ある意味で漠然とした)表現が好んで用いられている、という解釈も可能かもしれない。
「エモい」を「エモい」としか表現しない傾向には危うさもある
「エモい」ものは「エモい」としか表現できないとしても、何でもかんでも「エモい」と形容してしまう傾向が行き過ぎると、語彙力の貧困を招くのではないか、と危惧する声もある。「エモい」という表現は幅広く使えて便利である。その分、より詳細で具体的な、状況に適した表現を用いる能力の停滞を助長する可能性はある。
「エモい」を英語でいうと
「エモい」を英語で表現するなら、「moving(心が動かされる)」「stirring(感動的な)」のような表現がおそらく最も幅広い文脈でうまく対応する。より具体的に表現するならば「sentimental(感傷的な)」「nostalgic(郷愁を感じる)」「melancholic(愁いを帯びた)」などの表現も使える。
- moving(心が動かされる
- subtle(言葉に表せない)
- stirring(感動的な)
- touching(琴線に触れる)
- nostalgic(郷愁を感じさせる)
- melancholic(愁いを帯びた)
- sentimental(感傷的な)
「emotional(エモーショナルな)」は対応する場合もしない場合もある
「エモい」の語源である英語の形容詞「emotional」には、「感動的な」「感情に訴えかけるものがある」といった意味がある。たとえば「泣ける本」や「感情を揺さぶる曲」といった表現には「emotional」が使える。
「emotional」には「感情的な」「情緒的な」および「情にもろい」「感情に流されやすい」といった意味もある。この点は必ずしも日本語の「エモい」には対応しない。
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