すばる‐ぼうえんきょう〔‐バウヱンキヤウ〕【すばる望遠鏡】
すばる望遠鏡
世界最大の一枚鏡
すばる望遠鏡は、わが国の国立天文台(東京都三鷹市)が宇宙観測のためにハワイのマウナケア山山頂(標高4,200m)に建設した光学・赤外線望遠鏡です。マウナケア山山頂は、空気の乱れが少ない・湿度が低いなど天体観測に適した条件を備えており、世界的に見ても望遠鏡設置に最適の場所です。
すばる望遠鏡の最大の特徴は、直径8.3m(厚さ20cm)という世界一の巨大な主鏡です。鏡は大きくすればするほどゆがみが出てしまうのですが、コンピュータ制御によって鏡面が常に最適の状態に保たれます。鏡の命である表面のなめらかさは、関東平野の面積の中にわずか0.2mmの高低差しかないという精度です。
注目のフゼストライト
すばる望遠鏡が本格的に観測活動を始めるのは2000年になってからですが、設置の完了した1999年1月、フゼストライトがおこなわれました。フゼストライトとは「初めての光」という意味で、新しい望遠鏡を使用する際のテスト観測と各種調整作業のことです。望遠鏡本体の性能に加え、天体の動きを追う駆動装置や観測画像の分析や記録を行う機器など、ひとつの観測システムとして動かすために、何ヵ月もの調整をおこないます。
このフゼストライトでは星雲や銀河群、銀河団などの姿がとらえられていますが、それらのテスト観測画像を見る限りでも、すばる望遠鏡の優秀さをじゅうぶんにうかがい知ることができます。
宇宙のなぞにせまる
いままでの望遠鏡で観測されていた天体が、すばる望遠鏡の登場によって、より鮮明に、よりくわしく、そしてより遠くまで見ることができるようになると、例えば宇宙の誕生と成長といった宇宙理論の仮説が証明されるなどして、それらの研究に大きく役立つことになります。もちろん天文学自体に貢献することは言うまでもありません。
フゼストライトでテスト観測された銀河団やクエーサーは、それぞれ地球から50億光年、140億光年の距離にありますが、これらの天体の光の波長などを調べて、遠ざかる速度を計算することで宇宙が膨張し続けるのか、あるいは収縮に転ずるのか、という研究が進みます。すばる望遠鏡の観測活動には、世界の研究者の期待が集まっています。
超高感度ハイビジョンカメラで銀河を撮影
世界一巨大な直径8.2mの主鏡をもつハワイ島マウナケア山頂にあるすばる望遠鏡は、1999年1月に開始されたフゼストライトのテスト観測で、大小の銀河が衝突したとみられる子持ち銀河や、同程度の大きさの銀河が2つ並んだ接近銀河のようすをとらえました。子持ち銀河はりょうけん座にあり、直径は大きい方が約12万7,000光年、小さい方が約7万6,000光年です。接近銀河は兄弟銀河とも呼ばれ、おとめ座の一角にあり、同じガス雲から生まれたとみられています。すばる望遠鏡に、光の強度を増幅する特別な装置付きの超高感度ハイビジョンカメラを取りつけて撮影しました。
深紅の細雲、「スーパーウインド」
2000年2月には、地球から約1,200万光年の距離にある不規則銀河「M82」をとらえて、銀河が深紅の高温ガスを噴きだす「スーパーウインド」のようすを撮影しました。この銀河は直径が約2万〜3万光年で、私たちの銀河にくらべるとはるかに小さいのですが、中心部では1年間に太陽が約10個生まれるほど活発な星の生成(スターバースト)が起きています。すばる望遠鏡は、スターバーストによって起きるスーパーウインドのようすを、深紅の細い雲がガス雲のように噴きだす姿として鮮明に写し出しました。この雲の広がりは、青白い銀河の中心からそれぞれの方向に1万光年以上離れたところまで広がっています。
国立天文台ハワイ観測所すばる望遠鏡
(すばる望遠鏡 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/12 07:20 UTC 版)
すばる望遠鏡(すばるぼうえんきょう、英: Subaru Telescope)は、アメリカ・ハワイ島のマウナ・ケア山山頂(標高4,205m)にある日本の国立天文台の大型光学赤外線望遠鏡である。
- ^ Activities of the Observatory
- ^ 観測機器を取り付ける焦点は4箇所ある。なお、主焦点ならびにカセグレン焦点は可視光・近赤外の焦点系であり、ナスミス焦点は片方が可視光焦点であり、もう片方は近赤外焦点である。
- ^ 2013年7月、より広い視野と高い解像度を得ることを目的とした、Hyper Suprime-Camに置き換えられた。これは、近赤外線領域から可視光をカバーするモザイク型CCDカメラ(計8億7000万画素)と光学補正レンズからなる。
- ^ “キヤノン,浜松ホトニクス,三菱電機ら,すばる望遠鏡の超広視野カメラを開発”. OPTRONICS ONLINE オプトロニクスオンライン. 2021年4月2日閲覧。
- ^ “新型の超広視野カメラが開眼、ファーストライト画像を初公開 | トピックス・お知らせ”. すばる望遠鏡. 2021年4月2日閲覧。
- ^ 正確には、大型観測装置がナスミス焦点に取り付けられ、小型の広視野主焦点カメラ (Suprime-Cam) が、主焦点観測室に取り付けられる。特に大型の観測装置によっては、重量数tに達するものもある。またカセグイン焦点には日本放送協会 (NHK) のスーパーハープ管型カメラが取り付けられ、すばる望遠鏡から生中継が行われたこともある。科学観測的には、コロナグラフ撮像装置や微光天体分光撮像装置などが取り付けられ、連星系の伴星の観測なども行われている。
- ^ 新規に開発された新しい観測機器に関しては、岡山天体物理観測所や各大学の保有する天文台での実験観測を経て、観測計画に基づき設置利用が可能である。この場合には、その観測機器は開発した大学や研究室によって保有されることになる。なお、国立天文台における大型機器の開発研究に関しては、自然科学研究機構ならびに文部科学省、さらには財務省の許可が要るため、時間がかかる例もある。例外として、MOIRCSの開発が挙げられるが、この場合には、科研費単年度での開発が必要だったため、非常に短期間で開発が実施されることになったのである。
- ^ “新型の超広視野カメラが開眼、ファーストライト画像を初公開”. すばる望遠鏡. (2013年7月30日) 2013年8月11日閲覧。
- ^ “HiCIAO | 国立天文台 太陽系外惑星探査プロジェクト室”. exoplanet.mtk.nao.ac.jp. 2021年4月2日閲覧。
- ^ “すばる望遠鏡の限界に挑んだ最遠方銀河探査 〜 宇宙初期に突然現れた銀河を発見 〜”. 国立天文台ハワイ観測所 (すばる望遠鏡). (2014年11月18日) 2014年11月23日閲覧。
- ^ 「すばる望遠鏡 銀河形成の歴史に迫る」 -すばる/XMM-ニュートン・ディープサーベイ(SXDS) 画像データ公開-
- ^ “すばる望遠鏡が冷却液漏れで観測中止”. AstroArts. (2012年7月19日) 2011年7月6日閲覧。
- ^ “すばる望遠鏡、主焦点カメラでの観測を再開”. AstroArts. (2012年7月19日) 2012年7月30日閲覧。
- 1 国立天文台ハワイ観測所すばる望遠鏡とは
- 2 国立天文台ハワイ観測所すばる望遠鏡の概要
- 3 観測装置
- 4 観測技術
- 5 参考文献
「すばる望遠鏡」の例文・使い方・用例・文例
- ハワイにあるすばる望遠鏡―1
- 宇宙の果てを見てみたいという夢を実現するために,天文学者たちはより大きなすばる望遠鏡の計画を立て始めたのです。
- すばる望遠鏡は,米国ハワイ島の標高4200メートルあるマウナケア山頂に建設されることが決まりました。
- すばる望遠鏡は反射望遠鏡です。
- すばる望遠鏡の囲いの建設は1992年に始まりました。
- すばる望遠鏡は高さが22.2メートル,重さが555トンあります。
- すばる望遠鏡には接眼レンズがありません。
- ハワイにあるすばる望遠鏡―2
- すばる望遠鏡は米国ハワイ島のマウナケア山頂にあります。
- 山(さん)麓(ろく)施設から山頂のすばる望遠鏡までは車で2時間かかります。
- すばる望遠鏡の山麓施設はヒロにあるハワイ大学のユニバーシティーパーク内にあります。
- 国立天文台はすばる望遠鏡によって撮影されたかに星雲の新たな画像を公開した。
- 天文学者のチームがハワイのすばる望遠鏡で撮影した太陽系の近くにある若い恒星の画像を公開した。
- 今回の画像は「すばる望遠鏡による戦略的惑星・円盤探査」プロジェクトの一(いっ)環(かん)として撮影された。
- また,すばる望遠鏡は最近,GJ 504という名の若い恒星の周りを回っている木星に似た太陽系外惑星の画像撮影にも成功した。
すばる望遠鏡と同じ種類の言葉
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