減価償却 減価償却の概要

減価償却

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2015/04/08 16:26 UTC 版)

概要

収益を獲得するために貢献した資産については費用収益対応の原則により、取得原価を収益の獲得のために利用した期間にわたって費用配分するのが企業会計上望ましいと考えられる。しかし、建物や機械設備などの多くの有形固定資産については機能的・物理的な減価を容易に把握することが出来ないために、以下に示す計算方法によって、可能な限り合理的となるように費用化している。

一方、特許権、商標権や漁業権ソフトウェアなど各種権利の無形固定資産についても、減価償却を行うことがある。

非減価償却資産

資産であっても減価償却しないものがある。減価償却しないものは非減価償却資産と呼ばれ、非減価償却資産は以下の様な時間によっても価値が減少するとは限らないものが該当する。

また、株式などの有価証券も、減価償却資産とされない。

日本における減価償却の計算方法

各期に計上される費用を減価償却費: Depreciation Expense)という。全体の支出額(取得原価)を各年度の費用として配分することにより、各年度における損益とキャッシュ・フローとの差異が生じることになる。

取得した資産の実際の使用可能な寿命をあらかじめ知ることは困難で、たとえば建物のように使用の限界時期が明確でない物もある。本来ならば、減価償却における耐用年数(: the Estimated useful life)は、なんらかの統計的科学的な手法により見積られるべきであるが、実務上は、法人税法において資産の種類ごとに定められた耐用年数を用いられており、これを法定耐用年数という。

減価償却の会計処理にあたっては、各期の減価償却費に相当する額だけ、固定資産を減額する必要がある。そのため、貸借対照表の「固定資産の部」において、各資産は取得原価から減価償却累計額(: Accumulated Depreciation)を控除する形で表示される。

減価償却は、あらかじめ定められた償却法と耐用年数により、各資産毎の年間の償却額を算出する。ただし、その会計期間の期中に取得(または使用を中断)した資産の場合は、年間償却額を月割計算した額となる。

なお、法人税法の規定によれば、耐用年数を超えて使用する場合でも償却可能限度額(日本の場合、有形固定資産では取得額の95%)を超えて償却することはできない。会計基準においては、この点について特別な規定はない。

平成19年度税制改正により、平成19年4月1日以降の新規取得に関しては備忘価額の1円まで償却が可能となった。また、平成19年3月31日以前取得の資産に関しても、平成19年4月1日以降に開始する事業年度から1円まで償却が可能となった。なお無形固定資産については、償却方法は定額法限定で、残存価額がゼロとなるまで償却する。

4つの減価償却方法

減価償却は、定額法、定率法、級数法、生産高比例法の4つの方法がある。

いずれの方法も対象資産の取得価額から残存価額を引いた要償却額に対して、それぞれの方式ごとに異なった割合での比率によって、償却期間に配分される。減価償却は対象資産の取得月に起算され、月割りでの計算が行なわれる。

取得原価(Cost)にはその資産の代金だけでなく、運賃、手数料、保険料、登録料などの付随する全ての費用が含まれる。

多くの資産は耐用年数の期間だけ使用した後でも、まだ便益に供することが可能な状態であるために、そういった資産を耐用年数分の使用後に売却処分した場合に得られると予想される金額を残存価額(Salvage value)として設定している。取得原価から残存価額を差し引いた要償却額に対してだけ償却期間を通じた費用配分が行なわれる。

理論上の減価償却

企業会計原則注解」[注20]では固定資産の減価償却の方法として、

  1. 定額法 固定資産の耐用期間中、毎期均等額の減価償却費を計上する方法
  2. 定率法 固定資産の耐用期間中、毎期期首未償却残高に一定率を乗じた減価償却費を計上する方法
  3. 級数法 固定資産の耐用期間中、毎期一定の額を算術級数的に逓減した減価償却費を計上する方法
  4. 生産高比例法 固定資産の耐用期間中、毎期当該資産による生産又は用役の提供の度合に比例した減価償却費を計上する方法

が例示されている。前者の3つは時間に基づいて減価償却するのに対して、生産高比例法は活動量に基づいて減価償却する方法である。また、定率法と級数法は加速度的償却法である。なお、日本では、無形固定資産の減価償却については定額法だけが認められている。

4 Depreciation methods.PNG

以下では、取得額をA0 、耐用年数をu 、残存価額をAu 、償却率r とする。

定額法

定額法(Straight-Line method, SL)は、毎年一定の額を償却してゆく償却法。毎年の減価償却費を平準化できるという特徴がある一方、使用により、維持修繕費が逓増する場合には、耐用年数後半において費用負担が増大するという欠点がある。年間の減価償却費は、取得原価と残存価額との差額を耐用年数で除して求める。

償却率r を求める場合、原理的には、Au = (1-u r )A0 より、

r=\frac{1}{u}\left(1-\frac{A_u}{A_0}\right)

で求められる。日本では残存価額Au = 0 として各耐用年数における法定償却率が定められている。

定率法

定率法は、毎年その期首の未償却残高に対して一定の率を償却してゆく償却法であり、加速度的減価償却法の一つである。投下資本の早期回収が可能であるが、取得原価の期間配分という点では非合理的である。年間の減価償却費は、取得原価と減価償却累計額との差額に償却率を乗じて求める。

償却率r を求める場合、原理的には、Au = (1 - r )u A0 から、

r=1-\left({\frac{A_u}{A_0}}\right)^{\frac{1}{u}}

で求められる。残存価額Au = 0 のとき、定率法は適用できない。

定率法には、二倍定率法(Double-Declining Balance method, DDB)がある。償却期間の早い時期に大きく償却することで利益を圧縮できるという特徴がある。これは上記算式によらずに、定額法の償却率として定額法の償却率の二倍を用いる方法である。日本では上記算式によりAu = A0×10%として各耐用年数における法定償却率が定められていたが、平成19年4月1日より250%定率法が採用された。

級数法

級数法(Sum of the Years' Digits method, SYD)は、耐用年数から経過年数を差し引いた残存耐用年数を分子とし、その期までの残存耐用年数の合計を分母とした数値に、取得原価(Cost)から残存価額(Salvage value)を引いた要償却額を乗じて、その期の減価償却費を算出する償却法であり、加速度的減価償却法の一つである。

償却期間の早い時期に大きく償却することで利益を圧縮できるという特徴がある。 年間の減価償却費は、取得原価と減価償却累計額との差額に償却率を乗じて求める。

経過年数をn とすれば、減価償却費は以下の数式で求められる。

減価償却費 = (A_0-A_u)\times\frac{u - n}{\frac{1}{2}u(u+1)}

生産高比例法

生産高比例法(Productive output method)は、資産を使用して生産活動などを行なう場合に、予想される総活動量に対するその期の活動量の割合に応じて減価償却費を算出する方法である。予想される総活動量を分母に、当期の活動量を分子とした数値に、取得原価(Cost)から残存価額(Salvage value)を引いた要償却額を乗じて、その期の減価償却費を算出する。収益と費用の対応が合理的であるが、適用資産が鉱業用設備、航空機、自動車等に限られている。

減価償却費は以下の数式で求められる。

減価償却費 = 当期の活動量 / 予想される総活動量 × (取得原価 - 残存価額)

  1. ^ 阿部徳幸・松嶋康尚共著 『減価償却の実務がスラスラわかる本』 中経出版 2008年4月初版発行 ISBN 9784806129325
  2. ^ 2009年時点において、実際には市場価値が減少しているが、税法上の減価償却資産とされていない。







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