被害者
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/03/11 14:26 UTC 版)
被害者の支援・救済
欧米
スウェーデンには100人以上、ノルウェーには60以上の職員を擁する被害者支援の国家機関があり、国民総背番号制を利用して加害者の財産を補償に充てるなどワンストップで対応している。ドイツは1976年に犯罪被害者補償法を制定し、非営利団体「白い環」が全国に約400の支部と約3000人の職員を配して被害者を支援している。アメリカ合衆国では1975年に設立された民間の非営利組織「全米被害者支援機構」(NOVA)が活動している[2]。
日本
日本の刑事司法において、犯罪被害者やその家族は長らく軽視されてきたが、2004年に犯罪被害者等基本法が制定された。各地に犯罪被害者支援センターが設けているが、全国組織の全国被害者支援ネットワークによると予算・人員とも不十分であり、基本法が促す被害者支援条例が制定済み(2021年4月1日時点)なのは32都道府県で、市町村を含めても空白の県も5つある[2]。
被害証明支援
交通事故被害については、自動車損害賠償保障法等に基づく任意保険会社への異議申立制度や自賠責保険会社への被害者請求制度、また自賠責保険・共済紛争処理機構の調停制度などの行政手続が設けられている。申立書類作成には知識も求められるが、行政書士への依頼が可能である[注釈 1]。
人身被害・傷害については、医療機関が診断書や意見書を作成する。
災害の家屋被害については、各市区町村が被災者の申請により家屋などの被害の状況を調査して、「全壊」「大規模半壊」「半壊」などの被害の程度の認定を行い、罹災罹災証明書を発行する。火災や風害、水害、地震などで被災した家屋などの被害の程度が証明できる。
被害者の経済的救済
被害者の経済的救済として、犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律に基づく、犯罪被害者等給付金が支給される。条件は以下のとおりであるが、ケースバイケースである。現在、遺族給付金で最高1,573万円、障害給付金で最高1,849.2万円が支給される。もっとも、労災などの公的給付や損害賠償を受け取った場合は、受け取った価額の限度で減額される場合があり、実際の支給額はこれより更に下回るのが通常で遺族給付金の平均受給額は約400万円程度である。
また、海外で犯罪被害に遭った場合には補償を受け取れないなどの問題があったが[3]、2016年(平成28年)11月30日からは、国外犯罪被害弔慰金等の支給に関する法律に基づき、海外での犯罪行為により死亡した日本国民の遺族や重障害が残った日本国民に国外犯罪被害弔慰金や国外犯罪被害障害見舞金が支給されることとなった。ただ、障害見舞金の支給の条件が「両眼の失明」や「両下肢を膝関節以上で失う」などと厳しく、また支給される額も100万円と少額であるなどの課題も残された[4]。
ほかにも、被害者等給付金を受け取っていた被害者が、後遺症が残っているとして生活保護を受けているケースで、被害に関する講演の謝礼を収入と見做され、福祉事務所から返還を求められたケースもあり[5]、有識者からは、給付制度の脆弱性を生活保護で補うことの問題点と、持続的な保証制度の創設を求める声がある[6]。
被害者のメンタルケア
犯罪被害者のメンタルケアなどに関しては、十分とはいえないものの、徐々に制度が整えられつつある。
- ^ 特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律 - e-Gov法令検索
- ^ a b 『日本経済新聞』朝刊2021年7月18日(社会面)「犯罪被害ケアなお途上/支援条例制定、5県空白/京アニ放火2年」「北欧に専門機関、一括対応/米独、運営支える寄付文化」(2021年8月25日閲覧)
- ^ “犯罪被害給付:海外での事件、救済漏れ 制度改善求める声”. 毎日新聞. (2012年10月21日). オリジナルの2013年8月28日時点におけるアーカイブ。
- ^ “国外犯罪被害者救済で法成立 弔慰金の条件厳しく”. 日本経済新聞. (2016年6月25日) 2016年12月24日閲覧。
- ^ “犯罪被害者:後遺症抱え生活保護 持続補償、制度化を”. 毎日新聞. (2014年2月26日). オリジナルの2014年3月2日時点におけるアーカイブ。
- ^ 犯罪被害者:尽きぬ苦悩 後遺症抱え生活保護、講演料は「収入」 持続補償、制度化を 識者の話[リンク切れ]『毎日新聞』2014年2月26日
- ^ なお、このケースでは「被害者についても実名報道を避け、人権侵害につながる恐れを抑制すべきである」という主張は少なく、被疑者(加害者を含む)についての実名報道を維持したいという意図の下に被害者の人権が利用されているケースが多く見られることに注意すべきである。
- ^ 「死刑宣告、過去最多45人 世論が厳罰化後押し[リンク切れ]」『産経新聞』2006年12月30日
- ^ “少年審判への遺族傍聴 法改正に賛否両論”. J-CAST (2008年5月3日). 2008年5月6日閲覧。
- ^ 「分断しない捜査、報道を 冤罪と犯罪、被害者巡り熊本大でシンポ」『熊本日日新聞』2021年06月20日(2021年8月25日閲覧)
- ^ 森達也『死刑 人は人を殺せる。でも人は、人を救いたいとも思う』(朝日出版社、2008年1月10日、ISBN 9784255004129)103頁
- ^ “テキサス銃乱射事件、警察はテレビ中継で容疑者の名前を公表せず「彼の行為に、悪名を与えない」”. huffingtonpost (2019年9月2日). 2019年9月3日閲覧。
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