テレソン
テレソン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/16 11:41 UTC 版)
テレソン(英語: telethon)とは、数時間から数日という長時間にわたって、慈善活動、政治活動などの目的のための募金を目的として放送されるテレビ番組である。「テレビジョン」(television)と「マラソン」(marathon)のカバン語である。
ほとんどのテレソンは、司会者やホスト(多くの場合、地元の著名人やメディアパーソナリティ)に対し「後日必ず寄付を行う」という寄付の確約を強く求めるシーンが特徴的であり、歌手、バンド、楽器奏者などが出演するバラエティ番組風のエンターテイメントも組み合わされることも多い。また、慈善事業を目的とするテレソンの場合は、支援対象者へのインタビュー、慈善事業プロジェクトの特集など、支援対象に関連するコンテンツが含まれることがある。ラジオ放送における同様の番組はラジオソン(radiothon)と呼ばれるが、ほとんどのラジオソンでは生演奏などのエンターテインメントは含まれない。
アメリカ合衆国では、1960年に政治的な目的によるテレソンが初めて行われた[1]。
一人当たりの寄付額が世界で最も高いテレソンは、オーストラリア・西オーストラリア州パースで行われる『チャンネルセブン・パース・テレソン』である。1968年の放送開始以降、6億5千万オーストラリア・ドル(AUD)以上を調達し、2024年の放送では8320万AUDを調達した。
世界で最も視聴され、評価の高いテレソンは、チリの『テレソン・チリ』である。チリ国内だけでなく国外の視聴者からも寄付を集め、1978年の放送開始以降で3千億チリ・ペソ(CLP)を調達し、2024年には米ドル換算で5040万ドルを調達した。
日本においては、チャリティを伴わない長時間番組についても「テレソン」の呼称が用いられることがある。
歴史
アメリカ合衆国
1949年4月9日、ミルトン・バール司会による世界初のテレソンが行われた。16時間にわたり放送され、デイモン・ラニアン癌研究財団のための110万ドルの募金が集まった[2][3]。放送の前日の新聞で、「テレソン」という言葉が初めて出版物に載った[4]。
毎年開催されるテレソンの最初のものは、慈善団体ユナイテッド・セレブラル・パルシー(UCP)によるUCPテレソンである。テレビ局幹部のレオナルド・ゴールデンソンの娘は脳性麻痺(セレブラル・パルシー)を患っていた。ゴールデンソンはその他の患者家族とともに1950年にUCPテレソンを開始し、初期の司会者にデニス・ジェームズを迎えた。ジェームズは1980年代までこのテレソンの司会を続けた。このテレソンは現在では実施されておらず、UCPはWebサイトなど別の手段で資金を調達している。1955年までにはテレソンはアメリカ文化に定着し、1955年のフィルム・ノワール『消された証人』(Tight Spot)では、コミックリリーフとしてテレソンがパロディ化された。
アメリカ国内で同じチャンネルで毎年継続している最古のテレソンは、ウィスコンシン州グリーンベイの放送局WBAY-TV(チャンネル2)が放送している地元の脳性麻痺協会を支援するためのテレソンで[5][6]、1954年3月から毎年放送されている。
オーストラリア
メルボルンの王立小児病院は1931年からグッド・フライデー・アピールというチャリティイベントを行っていたが、セブン・ネットワークがスポンサーとなった1957年からテレソンを開始した[7]。
アデレードのテレソンは、1960年12月にアデレード北部のティンテ通りにあるNWS9のスタジオで初めて行われた。当時クイズ王としてオーストラリアで有名だったバリー・ジョーンズが出演し、チャリティ活動の一環として、募金をするとジョーンズに好きな問題を出して回答してもらえるという企画があった[8]。
パースのテレビ局TVWは、1961年の西オーストラリアの森林火災を受けて単発のテレソンを開催した。1966年と1967年には、ベトナム戦争に従軍する西オーストラリアの兵士にクリスマスプレゼントを送るためのテレソンを開催した。1968年以降は毎年テレソンを実施している[9]。
各国の実例
アメリカ
アメリカ合衆国
アメリカ合衆国では、様々な慈善団体を支援するための各種のテレソンが開催されている。ただし、2014年現在で、全米規模でのテレソンは存在しない[10]。
アメリカ合衆国で最も長く続いた全米規模のテレソンは『レイバー・デイ・テレソン』である。1966年から2013年まで毎年レイバー・デーに、筋ジストロフィー協会(MDA)の活動を支援するために開催されていた[11]。放送時間は長らく21時間以上あったが、2011年に6時間に短縮されて「テレソン」とは呼べない規模となり、翌年には3時間、その翌年には2時間にまで短縮された末に、2014年以降は開催されなくなった[12]。過去に全米またはそれに準ずる規模でテレソンを開催した慈善団体として、他にセントジュード小児研究病院、イースター・シールズ、関節炎財団、チルドレンズ・ミラクル・ネットワーク病院などがある。
テレソンに準じる形で、寄付キャンペーンを毎年開催しているラジオ局もある。ただし、これは連続の番組ではなく、通常の放送スケジュールの合間に寄付を募るメッセージを流す形式である。
宗教テレビネットワークのトリニティ・ブロードキャスティング・ネットワーク(TBN)は、半年に1回、1週間連続のテレソン"Praise-a-Thons"を開催している。 クリスチャン・ブロードキャスティング・ネットワーク(CBN)は、テレソンの形式を改変した約1週間にわたる番組を年3回放送しているが、1日の放送時間は1時間程度である。CBNのテレソンは、当初は24時間連続で行う形式だったが、24時間放送のできる傘下のテレビ局「ファミリーチャンネル」(現在のフリーフォーム)をCBN設立者のパット・ロバートソンが売却したことにより、24時間のテレソンは終了した。それ以降は、毎年12時間のテレソンを開催して、スーパーボウルの前の日曜日にフリーフォームにて放送し、さらに様々なテレビ局に配信している。その他の宗教放送局や宗教テレビネットワークもテレソンを開催しており、例えば西海岸のハシディズムの運動であるチャバドの放送局は、1980年からテレソンを毎年開催している[13]。
民主党は、1972年から一時的に、毎年テレソンを実施していた。そのうちの2つのタイトルは"America Goes Public"と"Answer, America!"だった[14]。このテレソンは、民主党の数百万ドルの債務を返済するためのもので、このアイデアはジョン・Y・ブラウン・ジュニア(ケンタッキー・フライド・チキンを成長させた実業家で、後のケンタッキー州知事)によるものだった。このテレソンは1979年のコメディ映画『アメリケーション』の発想の源となった。同作の中では、アメリカ合衆国の財政破綻を回避するためのテレソンが開催される。
かつてはアメリカ合衆国のほとんどの大都市で、都市単位のローカルテレソンが開催されていた。現代ではほとんど行われていないが、ケンタッキー州ルイビルの"WHAS Crusade for Children"やニューヨーク州バッファローの"Variety Club Telethon"(1962年に始められ、子供のための慈善団体「バラエティ」を支援)などが今なお行われている。
2012年12月14日、アメリカ合衆国初のスペイン語によるテレソン『テレソンUSA』(Teletón USA)がユニビジョンにより放送された。長寿番組『サバド・ヒガンテ』の司会のドン・フランシスコが司会を務め、第1回放送では、目標額を約100万ドル上回る約815万ドルの寄付金を集めた[15]。
アジア
日本

日本初のテレソンは、1975年3月21日から3月22日にかけて近畿放送(現・京都放送、KBS京都)で放送された延べ25時間のテレビチャリティーキャンペーン番組『宮城まり子のチャリティーテレソン』である。この番組は、身体障碍者のリハビリテーションセンターを京都府に建設することを主にした、身障者の社会参加を目的に放送された[16]。
日本テレビは1978年から『24時間テレビ 「愛は地球を救う」』を毎年8月に開催し、日本初の全国規模のテレソンとなった。この番組は、世界中の病気や障害を抱える人々、戦争や自然災害の被害者、環境保護プログラムを支援する慈善団体のための資金を募ることを目的としている。
1987年にフジテレビが、『24時間テレビ』のパロディとして、24時間特番『FNSスーパースペシャル一億人のテレビ夢列島』を放送し、以降毎年恒例となっているが、これはチャリティを目的としたものではなく、厳密な意味ではテレソンではない。
脚注
- ^ “Remarks of Vice President Richard M. Nixon, National Telethon, ABC Network, Southfield, MI” (1960年11月7日). 2015年9月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年9月30日閲覧。 “for the first time in the history of American politics”
- ^ Breslin, Jimmy (1991). Damon Runyon—a life. New York, USA: Ticknor & Fields
- ^ “Telethon”. Museum of Broadcast Communications. 2009年10月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年6月2日閲覧。
- ^ “Telethon”. Springfield News-Sun. (1949年4月8日) . "The stunt Milton Berle is to pull on NBC television tomorrow is being called a "telethon.""
- ^ 2017: “CP Telethon continues tradition, expanding” (2017年5月3日). 2025年8月16日閲覧。
- ^ 2020: “CP Telethon returns to the airwaves this weekend”. WBAY-TV (2020年3月5日). 2025年8月16日閲覧。 “The nation's longest-running local telethon continues its tradition”
- ^ “1957: Channel 7 joins Good Friday Appeal”. The Royal Children's Hospital Melbourne (2019年9月19日). 2022年10月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年10月30日閲覧。
- ^ Cora Dove (1986). The First 25 Years of Television in South Australia. p. 15
- ^ “Telethon: How a chat on a golf course led to the creation of Australia's most successful charity event”. PerthNow (2022年10月23日). 2022年10月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年10月24日閲覧。
- ^ Einolf, Christopher J.; Philbrick, Deborah M.; Slay, Kelly (December 14, 2012). “National Giving Campaigns in the United States”. Nonprofit and Voluntary Sector Quarterly 42 (2): 241–261. doi:10.1177/0899764012467230. オリジナルのOctober 19, 2021時点におけるアーカイブ。 2020年9月30日閲覧。.
- ^ “History of MDA” (2015年12月29日). 2020年9月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年9月30日閲覧。
- ^ “MDA ends Jerry Lewis Labor Day telethon”. USAtoday. オリジナルの2017年8月31日時点におけるアーカイブ。 2018年5月7日閲覧。
- ^ “Chabad Telethon”. tolife.com. 2017年10月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年5月7日閲覧。
- ^ “Ocala Star-Banner - Google News Archive Search”. news.google.com. 2018年5月7日閲覧。
- ^ “El gran total del Teletón USA 2012.” (スペイン語). Univisión (2012年12月16日). 2014年5月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年3月6日閲覧。
- ^ ねむの木学園の歩み
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