死神 死神の概要

死神

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/31 20:51 UTC 版)

西洋の死神
ろうそく消しを溶接する死神を示す古代のイラスト。[要検証]

西洋の死神

西洋において死の概念が擬人化されて、生きた骸骨として描かれるようになったのは中世以降である[1]。伝承における登場人物として、大鎌を手にした姿をしていることが多く、間もなく死を迎える人間の魂を集めていると言われる。イギリスとドイツでは、死神は男性として表現されるのが一般的だが、フランス、スペイン、イタリアにおいては女性の姿をしていることも珍しくない[2]

1800年代の後半から、英文学において死神というキャラクターはグリム・リーパー(Grim Reaper)の名で知られるようになった。グリム・リーパーという言葉が最初に文献に登場するのは1847年の『The Circle of Human Life』である[3][4][5]

それ以降、一般的に大鎌、もしくは小ぶりな草刈鎌を持ち、を基調にした傷んだローブを身にまとった人間の白骨の姿で描かれ、時にミイラ化しているか、完全に白骨化したに乗っている事もある。また、が存在せず、常に宙に浮遊している状態のものも多く、黒いを生やしている姿も描かれる。その大鎌を一度振り上げると、振り下ろされた鎌は必ず何者かの魂を獲ると言われ、死神の鎌から逃れるためには、他の者の魂を捧げなければならないとされる。

心霊写真においては、鎌を持った死神が写ると命に関わる危険の前兆で、たとえ鎌を持っていなくとも何らかの危機が起きる、という迷信も存在する。

基本的に、死神は悪い存在として扱われる事が多いが、死神には『最高神に仕える農夫』という異名もあり、この場合、死神は、「死を迎える予定の人物が魂のみの姿で現世に彷徨い続け悪霊化するのを防ぐ為、冥府へと導いていくという役目を持っている」といわれている。

こうした一般的に想像される禍々しい死神の姿は 一種のアレゴリーであり、死を擬人化したものである。神話宗教・作品によってその姿は大きく変わる。時には白骨とは違った趣向の不気味なデザインとなる事もある。

日本の死神

日本では、神話におけるイザナミや冥界の王とされる閻魔が、死神とみなされることもあれば[6][7]、西洋における死神とは異なる(あるいは日本にはその概念が存在しなかった)と考えられることもある[8][9]。「死神」という言葉そのものは、江戸時代以降、例えば近松門左衛門による心中をテーマにした人形浄瑠璃や古典の書籍にみられる[10][11][12]。戦後に西洋の死神の観念が日本に入ってきたことで、死神は人格を持つ存在として語られるようになり[8]、テレビドラマや漫画、ゲームなど様々なフィクション作品に登場するようになった[13][14]


  1. ^ Noyes, Deborah (2008). Encyclopedia of the End: Mysterious Death in Fact, Fancy, Folklore, and More. Boston: Houghton Mifflin. p. 35. ISBN 978-0618823628 
  2. ^ Guthke, Karl S. (1999). The Gender of Death: A Cultural History in Art and Literature. Cambridge: Cambridge University Press. p. 7. ISBN 0521644607 
  3. ^ The Circle of Human Life is a translation by Robert Menzies of part of an earlier German book by August Tholuck, Stunden Christlicher Andacht, published in 1841.
  4. ^ grim reaper”. Merriam-Webster. 2020年9月1日閲覧。
  5. ^ Menzies, Robert (1847). The Circle of Human Life. Edinburgh: Myles Macphail. p. 11 
  6. ^ 七会静 『よくわかる「世界の死神」事典』〈廣済堂文庫〉廣済堂あかつき、2009年11月30日、168-174頁。ISBN 978-4-331-65459-0 
  7. ^ 河野信子 編 『女と男の時空』 1巻、藤原書店、1995年9月、115頁。ISBN 978-4-89434-022-0 
  8. ^ a b 多田克己 編 『絵本百物語 桃山人夜話国書刊行会、1997年6月24日、127-128頁。ISBN 978-4-336-03948-4 
  9. ^ 木村文輝 『生死の仏教学』法藏館、2007年4月1日、141頁。ISBN 978-4-8318-2418-9 
  10. ^ 近松門左衛門 『近松門左衛門集』〈新編日本古典文学全集〉 2巻、鳥越文蔵他校中・訳、小学館、1998年4月1日、76頁。ISBN 978-4-09-658075-2 
  11. ^ 鳥越他 1998, p. 266.
  12. ^ 桃山人 『桃山人夜話 絵本百物語』〈角川ソフィア文庫角川書店、2006年7月31日、131頁。ISBN 978-4-04-383001-5 
  13. ^ 七会 2009, p. 3.
  14. ^ 村上健司他編著 『百鬼夜行解体新書』コーエー、2000年11月、69頁。ISBN 978-4-87719-827-5 
  15. ^ 斉藤 幸奈 (2019年12月22日). “「ウィキペディア」にも男女格差 ネット事典、男性記事が8割占める”. 西日本新聞. 2021年5月23日閲覧。


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