エラノス会議とは? わかりやすく解説

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エラノス会議

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/10 00:03 UTC 版)

1938年のエラノス会議で演説するマッソン・ウルセル

エラノス会議(エラノスかいぎ、Eranos)は、宗教学神話学深層心理学神秘主義などをめぐり、東西の研究者が参集して開いた学際的会議の名称である。人間精神性を中心の問題とし、開催地と主題との関係もあって、カール・グスタフ・ユングの思想と学説(分析心理学)が主導した。

概説

「エラノス」という名前は古典ギリシア語の晩餐会に由来し、これは幾人かの客たちが自前で食べ物を持ってきて、互いに頒ち合い、食卓を囲んで談笑しあう会食を意味する。1933年にオランダ系イギリス人女性の神秘家・オルガ・フレーベ・カプタイン (Olga Froebe-Kapteyn) によってこのグループが設立された。それ以来スイスアスコナ近くのマッジョーレ湖岸にある彼女が私有する屋敷で毎年会議が開催された。60年以上の間、このイベントは異なる知の領域からなるざまな思想家たちが人間精神に関するさまざまな事柄を討議するための接点として貢献した。

各々の大会は8日にわたって行われるが、その間、すべての参加者は食事、睡眠、生活をともにすることによって、議論の雰囲気は促進され、相互理解が深まる。毎年、新しいテーマに取り組み、各々の思想家が主題についての2時間の講義を行い、このアイデアの晩餐会への彼(女)の貢献によって、参加している多種多様な思想家は生産的で知的な談話に移っていく。

エラノス会議の起源

Froebe-Kapteynは、著名なドイツの宗教史研究家ルドルフ・オットーの提案によりこのグループを設立した。Froebe-Kapteynは、円卓会議のオランダの愛好家であり、初期には、スピリチュアリストがこの会議の発足に関係していた。エラノスは精神の起源の問題に関心があった。最初のテーマ『東と西のヨガと瞑想』は、1930年代初期において実際に先駆的なテーマであった。エラノスはその設立初期において本質的にカール・ユングの思想と関連するようになった。ユングはエラノスの正規参加者だったので、彼の神話元型の概念はエラノスの基礎理論となった。

参考文献

  • 『時の現象学 I エラノス叢書 1』 アンリ・シャルル・ピュエシュ、アンリ・コルバン
    神谷幹夫訳、平凡社、1990.10。ISBN 4-582-73321-2
  • 『時の現象学 II エラノス叢書 2』 エルンスト・ベンツ、フォン・フランツ ほか 全5編
    山内貞男・松田高志 ほか訳、平凡社、1991.6。ISBN 4-582-73322-0
  • 『人間のイメージ I エラノス叢書 3』 エルンスト・ベンツ、エーリク・ホルヌング、レオ・ベック
    薗田坦・屋形禎亮・木田献一 訳、平凡社、1992.1。ISBN 4-582-73323-9
  • 『人間のイメージ II エラノス叢書 4』 ジルベール・デュラン、エーリヒ・ノイマン
    久米博、松代洋一 訳、平凡社、1991.10。ISBN 4-582-73324-7
  • 『光・形態・色彩 エラノス叢書 5』 アドルフ・ポルトマンミルチャ・エリアーデ、ジャン・ブラン(Jean Brun)、ドミニク・ザーアン
    谷口茂・久米博・長谷正当・嶋田義仁 訳、平凡社、1991.2。ISBN 4-582-73325-5
  • 『一なるものと多なるもの I エラノス叢書 6』 アドルフ・ポルトマン、 アンリ・コルバン、ゲルショム・ショーレム
    桂芳樹・神谷幹夫・市川裕 訳、平凡社、1991.8。ISBN 4-582-73326-3
  • 『言葉と語り エラノス叢書 8』 ヴィクトル・ツカーカンドル、アドルフ・ポルトマン、エルンスト・ベンツ
    芦津丈夫・桂芳樹・深沢英隆 訳、平凡社、1991.4。ISBN 4-582-73328-X
  • 『言葉と創造 エラノス叢書 9』 シュムエル・ザンブルスキー、エーリヒ・ノイマン、ゲルショム・ショーレム、アドルフ・ポルトマン
    村上陽一郎・松代洋一・市川裕・桂芳樹 訳、平凡社、1995.6。ISBN 4-582-73329-8
  • 『創造の形態学 I エラノス叢書 10』 K・ラインハルト、ミルチャ・エリアーデ、L・ヴァン・デル・ポスト、ゲルショム・ショーレム
    辻村誠三・久米博・由良君美・進藤英樹訳、平凡社、1990.12。ISBN 4-582-73330-1
    • ※各・欠番で未刊 『一なるものと多なるもの II エラノス叢書 7』、『創造の形態学 II エラノス叢書 11』
  • 『エラノスへの招待 回想と資料 エラノス叢書 別巻』、桂芳樹 ほか訳、平凡社、1995.11。ISBN 4-582-73332-8
    マーティン・グリーン、アドルフ・ポルトマン、R. リッツェマ、井筒俊彦、上田閑照、河合隼雄、高山宏、種村季弘 ほか
  • マーティン・グリーン『真理の山 アスコーナ対抗文化年代記』(進藤英樹訳、平凡社、1998.5)
  • ウィリアム・マガイアー 『ボーリンゲン 過去を集める冒険』 ISBN 456008310X
    高山宏訳(白水社、2017.11)。人的交流の文化史の伝記
  • 『相貌と風貌―鈴木大拙写真集』 ISBN 488182208X
    上田閑照、岡村美穂子解説 (禅文化研究所、2005.11) 
  • 井筒俊彦 『東洋哲学の構造 エラノス会議講演集』。「英文著作翻訳コレクション」 ISBN 476642459X
    澤井義次監訳/金子奈央・古勝隆一西村玲訳(慶應義塾大学出版会、2019.4)
  • 河合隼雄『深層意識への道』- 第4章「深層意識の探求(13.エラノス会議)」
    グーテンベルクの森(岩波書店、2004.11)ISBN 4000269879。読書案内をかねた自伝
  • 河合隼雄『夢・神話・物語と日本人 エラノス会議講演録』(河合俊雄訳、岩波現代文庫、2022.3)

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