マイコプラズマ肺炎とは? わかりやすく解説

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マイコプラズマ肺炎

【英】:Mycoplasma pneumonia

以前には、定型的な細菌性肺炎違って重症感が少なく胸部レ線像も異な故に異型肺炎」に分類されてきた肺炎群があり、その後、マイコプラズマ肺炎は「異型肺炎」の多く占めるものであることが解った近年異型肺炎」の病名使われなくなる傾向にある。

疫 学
感染症発生動向調査では「異型肺炎」の発生動向調査が行われていたが、これにはマイコプラズマ肺炎以外にも、クラミジア肺炎ウイルス性肺炎などの疾患含まれていた。1999年4月施行感染症法により、マイコプラズマ肺炎として疾患特異的な発生動向調査を行う目的から、病原体診断含んだ発生動向調査が行われることになった
疾患通常通年性にみられ、普遍的な疾患であると考えられている。欧米において行われた罹患率調査データからは、報告によって差はあるものの、一般に年間感受性人口の5~10%罹患する報告されている。本邦での感染症発生動向調査からは、晩秋から早春にかけて報告数が多くなり、罹患年齢幼児期学童期青年期中心である。病原体分離例でみると7~8歳ピークがある。本邦では従来4 年周期オリンピックのある年に流行繰り返してきたが、近年この傾向崩れつつあり、1984 年1988年大きな流行があって以降大きな全国流行はない。

病原体
病原体肺炎マイコプラズマMycoplasma pneumoniae )であるが、これは自己増殖可能な最小微生物で、生物学的に細菌分類される。他の細菌異なり細胞壁持たないので、多形態性を示しペニシリンセフェムなどの細胞壁合成阻害抗菌薬には感受性がない。専用マイコプラズマ培地上にて増殖可能であるが、日数がかかり(2~4 週間)、操作もやや煩雑で、雑菌増殖による検査不能例も発生する肺炎マイコプラズマは熱に弱く界面活性剤によっても失活する。
感染様式感染患者からの飛沫感染接触感染によるが、濃厚接触が必要と考えられており、地域での感染拡大速度は遅い。感染の拡大通常閉鎖集団などではみられるが、学校などでの短時間での暴露による感染拡大可能性高くなく、友人間での濃厚接触よるものが重要とされている。病原体侵入後、粘膜表面細胞外で増殖開始し上気道、あるいは気管気管支細気管支肺胞などの下気道粘膜上皮破壊する。特に気管支細気管支繊毛上皮破壊顕著で、粘膜剥離潰瘍形成する気道粘液への病原体排出初発症状発現前2~8日みられるとされ、臨床症状発現時にピークとなり、高いレベルが約1 週間続いたあと、4~6週間以上排出が続く。
感染により特異抗体産生されるが、生涯続くものではなく徐々に減衰していくが、その期間は様々であり、再感染もよく見られる

臨床症状
潜伏期通常2~3週間で、初発症状発熱全身倦怠頭痛などである。咳は初発症状出現後3~5日から始まることが多く当初乾性の咳であるが、経過従い咳は徐々に強くなり、解熱後も長く続く(3~4週間)。特に年長児や青年では、後期には湿性の咳となることが多い。鼻炎症状は本疾患では典型的ではないが、幼児ではより頻繁に見られる嗄声耳痛咽頭痛消化器症状、そして胸痛は約25%見られまた、皮疹報告により差があるが6~17%である。喘息気管支炎呈することは比較多く急性期には40%で喘鳴認められまた、3年後に肺機能評価したところ、対照比して有意低下していたという報告もある。昔から「異型肺炎」として、肺炎にしては元気で一般状態も悪くないことが特徴であるとされてきたが、重症肺炎となることもあり、胸水貯留は珍しいものではない。
他に合併症としては、中耳炎無菌性髄膜炎脳炎肝炎膵炎溶血性貧血心筋炎関節炎ギラン・バレー症候群スティーブンス・ジョンソン症候群など多彩なものが含まれる
理学的所見では聴診乾性ラ音が多い。まれに、胸部線上異常陰影があっても聴診上異常を認めない症例があり、胸部レ線検査欠かせない胸部レ線所見ではびまん性のスリガラス間質陰影特徴とされてきたが、実際には多いものではなく、むしろウイルス性真菌性、クラミジア性のものに多いと報告されている。マイコプラズマ肺炎確定例では、大葉性肺炎像、肺胞陰影間質陰影、これらの混在など、多様なパターンをとることが知られている。血液検査所見では白血球数は正常もしくは増加し赤沈亢進CRP中等度以上の陽性示しASTALT の上昇を一過性にみとめることも多い。寒冷凝集反応は本疾患のほとんどで陽性に出るが、特異的なものではない。しかしながら、これが高ければマイコプラズマによる可能性が高いとされる

病原診断
確定診断には、患者咽頭拭い液、喀痰よりマイコプラズマ分離することであるが、適切な培地経験があれば難しいことではない。しかしながら早くて1 週間程度かかるため、通常の診断としては有用ではない。近年迅速診断としてPCR 法開発されており、臨床的に有用性が高いが、実施可能な施設限られている。
臨床現場で血清診断なされることが多い。補体結合反応CF)、間接赤血球凝集反応IHA)にて、ペア血清で4倍以上の上昇確認する単一血清診断するには、それぞれ64倍以上、320倍以上の抗体価が必要である。近年粒子凝集法PA )、蛍光抗体法(IF)あるいは酵素抗体法ELISA)によるIgMIgG抗体検出も可能となっている。

治療・予防
抗菌薬による化学療法基本であるが、ペニシリン系やセフェム系などのβ‐ ラクタム剤は効果がなく、マクロライド系テトラサイクリン系ニューキノロン系薬剤用いられる一般的にはマクロライド系エリスロマイシンクラリスロマイシンなどを第一選択とするが、学童期以降ではテトラサイクリン系ミノサイクリン使用される特異的な予防方法はなく、流行期には手洗い、うがいなどの一般的な予防方法励行と、患者との濃厚な接触避けることである。

感染症法における取り扱い2003年11月施行感染症法改正に伴い更新
マイコプラズマ肺炎は5類感染症定点把握疾患定められており、全国500カ所の基幹定点から毎週報告なされている。報告のための基準以下の通りとなっている。
診断した医師の判断により、症状所見から当該疾患疑われ、かつ、以下のいずれか方法によって病原体診断血清学診断なされたもの
 ・病原体検出
  例、気道から病原体検出されたものなど
 ・病原体対す抗体検出
  例、血清抗体有意な上昇
血清抗体の異常高値(間接血球凝集反応IHA抗体価320640倍以上、または補体結合反応CF抗体価64 倍以上)など

学校保健法における取り扱い
疾患は、学校において予防すべき伝染病中には明確に規定されてなく、学校流行おこった場合にその流行を防ぐため、必要があれば、学校長学校医意見聞き第3種学校伝染病としての措置講じることができる疾患のうち、条件によって出席停止措置が必要と考えられる伝染病ひとつとして例示されている。登校登園については、急性期過ぎて症状改善し全身状態良いものは登校可能となっており、流行阻止目的というよりも、患者本人の状態によって判断すべきである考えられる


文 献
1)Cherry JD. Mycoplasma and Ureaplasma infection. In Textbook of pediatric infectious diseases, 4th ed. WB Saunders,1998. pp2259‐2286
2)Anonymous. マイコプラズマ肺炎. 病原微生物検出情報月報19巻2号、1998.

国立感染症研究所感染症情報センター 谷口清州





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