防御方式に関する考え方(思想、方式)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/28 01:02 UTC 版)
「ビスマルク級戦艦」の記事における「防御方式に関する考え方(思想、方式)」の解説
艦の中央断面については『造船協会雑誌』によれば同時代にフランスの造船大佐が大まかには正しい推定を行っている(対独諜報活動の成果が包含されているかは不明)。大戦後ドイツ艦に関する情報は徐々に一般にも流通が始まる。酒井、大塚などから防御要領は第一次大戦時代のドイツ戦艦の防御様式から構造的な進化はしていないと言われている。特に主装甲帯下端を傾斜部を介して水平装甲に接続する配置要領は典型的な第一次大戦型構造であり、主装甲帯上端から水平装甲に接続する列強新戦艦と顕著な差異を生じる。 本級はこのように第一次大戦型の防御を基礎にし、それに所与の改良を加えたものであるという点では各論とも一致している。 垂直防御 水線面より上の狭い範囲のみ320mmの装甲板で覆われている。それより上部から最上甲板までは145mmの装甲で覆われた。 水線下の防御 垂直装甲による直接的防御も関係するためここで記述する。本級の垂直装甲は水線面より下部で170mmの部分があるが上下幅が短く、水中弾や深度魚雷への防御は良く考えられていなかったことが後にウィークポイントとなった。船体内部の対水雷防御配置はバイエルン級の時代では石炭庫が衝撃吸収充填材の役目を演じたが、重油を使用する近代戦艦ではその手は使えず、本級の場合は水密区画を間隔の開いた四つの空間に分け、その背後に45mmの装甲を二重底の艦底面まで伸ばしている。水中防御に関しては本級に高い評価を与えている場合でも他国より遅れていたことを認める場合もある 水平防御 水平防御については、舷側装甲と接続する傾斜部は最上甲板は50mm、主甲板は110mmであった。この水平防御についての評価は分かれる。肯定的な評価は、バイエルン級より厚くとり、時代の変化に対応したことに力点を置く。否定的な評価は、「大口径砲による大落下角砲弾もしく高度からの水平爆撃」には充分ではなかったと評する。 批判的な見解によれば水平防御は原案よりは若干強化はされているが、それでも第一甲板水平面は25mm、主甲板80mmと、合計しても105mmであり列強新戦艦と比べると装甲厚は薄く防御力が弱かった。ドイツが誇る装甲ヴォタン鋼は一般に欧州トップクラスの装甲材と評価されるが、対して、列強の新戦艦は本級よりも小型の船体であるにもかかわらず140〜170mmの装甲を貼っており、本級の水平防御能力は高いものではない。なお、ドイツ海軍は1940年の内部資料で、本級の装甲配置について下記のように言及している。 「第一次世界大戦の戦訓と兵器の発達に基づき、装甲防御は第一に以下の観点から改善されなくてはいけない。 1.遠距離と、それに応じた大きな落着角度を伴って直接、装甲甲板に当たる命中弾。 2. 航空爆弾対策。 これらの理由により、装甲重量から相当の大部分を水平装甲とバーベットに割り当てざるを得ない。なぜなら、重量配分の内、装甲全体が占める割合を著しく高めることはできないからである。バーベットは、閉ざされた砲郭その他に覆われていない限り、完全な強度を保ったまま主装甲甲板まで伸ばすものとする。なぜなら、これらの部分は大角度の命中弾を被った場合、かつてのようにその一部が側面装甲の背後で守られることがないからである。この新しい装甲配置では、砲弾を「無事」に貫通させるほど装甲帯を強化することはできない(「無事に」貫通させることについてはCを参照のこと)。そのため、可能な限り水平装甲も側面防御の全体的な仕組みに組み込むべく努力しなくてはいけない。これによって、少なくとも主交戦距離においては艦のバイタルパートを破壊効果から守ることができるようになる。最も強固な水平装甲は、従来通りできるだけ深部に施すものとし、できるだけ浅い角度の斜面を装甲帯の下端まで伸ばすものとする。しかし従来とは異なり、著しい余力を保って装甲帯を破り、斜面に命中する砲弾が貫通できず、破砕されるか弾き返される程これを強化しなくてはならない。 装甲甲板そのものは、このような強化にも拘わらず、極めて遠距離から直撃する砲弾を弾き返すほど増強することはできない。最重量級の徹甲弾による大角度の命中を防ぐような、装甲甲板のかくも広範な強化は、重量上の制約から艦の大部分で実現不可能だからである。ただ水平装甲までも貫通されるまでの距離を、上方修正するのが精一杯である。 このような遠距離において、最重量級の砲弾に対する完全な耐性を得ることがほとんど不可能であるのと同じくらい、空中からの脅威に対しても無条件の防御を達成できる見込みは少ない。なぜなら製造・使用され得る最重量級の徹甲爆弾は目下、最強の装甲甲板を貫通し得るからである。その前提は非常に高い投下高度、もしくはロケットエンジンである。これらの条件、高高度から投下した場合の低い命中率および低い炸薬充填率(6%以下)を理由として、このような爆弾の使用は著しく制限されている。そのため最も目的に合致するのは、弾殻の薄い通常の炸裂爆弾(炸薬充填率50%)を破砕するべく最上部の甲板に装甲(50mm以下)を施し、それよりも著しく炸薬量の少ない(充填率25%以下)、弾殻の厚い炸裂爆弾のみがこの装甲を貫通できるようにすることである。原理的には、我が軍の弾底信管付き炸裂弾に相当するこれらの半徹甲弾は艦内で炸裂する可能性があるが、それも(主)装甲甲板より上の部分に留まる。わずかな事例、例えば煙突孔の脇に命中弾を被った場合のみ、このような爆弾は大型艦のバイタルパートを破壊し得る。このような(主)装甲甲板の上で爆発する爆弾や砲弾の炸裂・破片効果を制限するため、最新の大型艦には、中央部分に厚さ30mmで硬ヴォータン鋼材(Wh-Material)製の隔壁を艦の全長および全幅に沿って組み込むものとする。さらに装甲甲板より上の煙突孔は、厚さ30mmの硬ヴォータン鋼製の破片防御を得るものとする。 (主)装甲甲板を貫通できるのは上記のように、炸薬装填率6%以下の、純粋な徹甲爆弾に限られるようになる。つまり、その効果は同じ重さの弾底信管付き炸裂弾と同程度になる。 最上部の適切な装甲甲板を強化することは、建艦時の強度上の理由に照らしても全長方向の良好な強度獲得に有効で、さらにはその下の各空間を遅延信管のない炸裂弾から保護する。」 装甲を貫通した砲弾に対する水平防御に関しては、 「比較的浅い角度下における貫通力の期待値が、一つの手がかりに過ぎないことを指摘する必要がある。微細な素材の違いは幾倍もの効果となって表れる。例えば被帽の形状や硬度だけでも、ある場合では装甲板を貫通する砲弾が、異なる場合では同じ条件、すなわち衝突速度に違いがない時、被帽の形状が異なるだけで弾かれるように作用し得る。また砲弾貫通の成否に係わる、角度や衝突速度といった数値は、正確には分けがたいほど近似している。さらに、ただでさえ比較的わずかである命中角度下では、把握の難しい跳弾が、命中角度が大きかった時よりも自然に多発する。特にこの効果は、多くの装甲板を貫通した際に特に強く表れる。この際、砲弾が斜めに弾かれ、通常よりもずっと広い断面積の貫通を強いられる事態も発生する可能性がある。」 と記述しているように、むしろ艦の上甲板よりも中央部で水平防御力を確保と、側面防御力の補強を実現しようとした。
※この「防御方式に関する考え方(思想、方式)」の解説は、「ビスマルク級戦艦」の解説の一部です。
「防御方式に関する考え方(思想、方式)」を含む「ビスマルク級戦艦」の記事については、「ビスマルク級戦艦」の概要を参照ください。
- 防御方式に関する考え方のページへのリンク