第二次リビア内戦における主導的役割
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「ハリファ・ハフタル」の記事における「第二次リビア内戦における主導的役割」の解説
2015年3月2日、ハフタルは、国際的な承認を受けた代議院によるトブルクの政府から軍司令官に任命された。 2015年以降のハフタルの軍勢については、イスラエルが軍事的支援を与えているという一部の報道がなされており、ハフタルの要請を受けたイスラエル空軍機がスルトにあったISILのリビアにおける拠点(英語版)を空爆したともいわれている。 2017年7月はじめ、3年間にわたる軍事作戦の末、ハフタルはテレビで演説し、彼の軍勢がリビア第二の都市であるベンガジを完全に掌握したとする声明を出した。多くの人々は、ハフタルの軍事的勝利が、彼の軍事的、政治的野心の増大を表すものと受けとり、リビア東部の主要な地域に軍事的支配を確立しようとする彼の意図を読み取った。ハフタルを批判する人々は、何年もの間、様々な相手との戦闘が続ける中で、彼が恣意的に私兵を動かし、敵対者たちをイスラム過激派と決めつけ、軍事的リーダーシップを通して将来における政治的立場を固めていると主張した。 また、一部の人々がISiLとの戦いにおいて諸勢力を糾合し勝利を得たことにおけるハフタルの役割を賞賛する中、他方ではISiLとの戦いにおけるハフタルの役割は大々的に誇張されており、私利のための計算づくだったと主張する者たちもいた。例えば、2016年初めの段階で、ハフタルの軍勢は、デルナからISiLを駆逐する上で貢献のあったデルナのムジャヒディン・シューラ評議会(英語版)というイスラム主義者のグループに対して、空爆を加えたとされている。 さらに専門家たちは、リビア国民軍 (LNA) がリビア全土に支配地域を広げることができるか、あるいは、ハフタルが自分自身以外の軍事的指導者なり選挙で選ばれた政治指導者を立てて国民軍なり政府を指揮することができるか、そのような機会が将来の新たな総選挙を通して可能になるかは、疑問だと論じた。 ハフタルは、断固たる覚悟で、尊厳作戦の目的のひとつにムスリム同胞団のリビア支部をはじめ、ハフタルがリビア国内で活動するイスラム過激派のテロリスト組織と判断したあらゆる対象を完全に叩き潰すことを挙げた。しかし、近年では、ジャーナリストや評論家たちは、ハフタルが、正式に表明された反イスラム主義の使命を掲げつつ、リビア東部に拠点を置くサラフィー主義の諸組織との提携を続けていることに注目している。これら組織との結びつきは、ハフタルの軍勢が支配する地域において、また、イスラム主義を掲げる敵対勢力、特にムスリム同胞団やアンサール・アル=シャリーアに対抗する上でも、相互利益的な関係を産んでいる。ハフタルと結ぶサラフィー組織の一部は、バルカ(キレナイカ)を拠点にする民兵組織の一部を成し、ハフタルの指揮の下で戦い、その勢力をベンガジやジャバル・アル・アフダル県、アジュダービヤーへと広げていった。アトランティック・カウンシルが出した、アハマド・サラーハ・アリー (Ahmed Salah Ali) による2017年6月の報告書によると、ハフタルがサラフィー主義者たちの支援を必要とするのは、地上部隊や補給の不足のためであり、ハフタルと結ぶサラフィーたちは、リビア東部において宗教に関わる議論を支配し、軍事的実力も付けることで大いに利益を得ており、職のない若者たちを惹きつけることにもつながっているという。 2017年7月、ネット上に、ISIL戦闘員であるという容疑をかけられた20人が、ハフタルの軍勢によって処刑される映像が公開され、この一件は国際連合が LNA に、捕虜の処刑に関する調査報告を求めるという事態に至った。一般的に、ハフタルの支配下にある多くの地域では、民兵たちによる虐待がおこなわれ、市民の自由を抑圧する措置が取られていると非難する報道がなされた 2016年8月の時点でハフタルは、国際連合安全保障理事会が支持する新たな国民合意政府(英語版) (GNA) への支持を拒み、アメリカ合衆国とその同盟諸国は、ハフタルがリビアの安定を危うくしていると考えるようになっていった。リビアの専門家で、英国王立防衛安全保障研究所 (RUSI) の上級研究フェローであるアリソン・パーゲター (Alison Pargeter) は、ハフタルが「リビアに平和をもたらす上での最大の障害 (biggest single obstacle to peace in Libya)」といえる存在であり、彼は、もし GNA 協調すれば、リビア東部における自分の影響力は終わってしまうかもしれないと恐れているのだと指摘した。 ハフタルを「イスラム過激派に対する防波堤」とみなすアラブ首長国連邦とエジプトは、ハフタルへの支援を続けた。ミドル・イースト・アイは、リークされた航空管制記録の分析をもとに、イギリス、フランス、アメリカ合衆国、アラブ首長国連邦の空軍が、ハフタルの軍勢を支援していると報じた。 2016年11月、ハフタルは2度目のロシアへの訪問をおこない、ロシアの外相セルゲイ・ラブロフや国防相セルゲイ・ショイグと会見した。報道によると、ハフタルが武器の供給や軍事支援を求めたのに対し、ロシア側は新たに成立したドナルド・トランプ政権の動きを待って先送りにしたという。12月26日、ロシアはハフタルに全面的に協力することを決め、ハフタルがリビアの指導者の役割を果たすべきだと述べたと報じられた。 これ以降、ロシアは負傷したリビア国民軍の兵士の治療にあたり、トブルクに拠点を置く政府のためにリビア・ディナール紙幣を印刷し、リビア東部にロシアがさらに2カ所の軍事基地を設けることを認める協定書に署名した。国際的な危機管理の専門家であるジョルジョ・カフエロ (Giorgio Cafiero) とダニエル・ワグナー (Daniel Wagner) は、最近「モスクワは、国連や西側が支援する脆弱な政府ではなく、ハフタルこそが、カダフィ後のリビアにおいて極端な原理主義に対抗し得る唯一現実的な堡塁だと見ているようだ」と述べた。 2017年、デルナ市評議会の副議長ラムジ・アル=シャエリ (Ramzi al-Shaeri) は、弁護士のライアン・グッドマンとアレックス・ホワイティング (Alex Whiting) とともに、デルナ包囲戦においてハフタルが戦争犯罪を犯したと告発した。彼らは、ハフタルがLNA の戦闘員たちに、捕虜は取るなと命じ、「捕虜をここに連れてくるなどということは考えるな。ここには収容施設もない。戦場は戦場、それで話は終わりだ。」と演説したとして、法規外の殺戮を暗黙にそそのかしたと主張した。 2017年11月5日、尊厳作戦に参加した元士官で、かつてはスポークスパーソンでもあったムハンマド・ヒジャージー (Mohammed Hijazi) が、ハリファ・ハフタルのことを「この国を不自由な姿にしている危機の主因」と評した。2016年1月に、指揮部の腐敗を批判して尊厳作戦から離脱したヒジャージーは、以降ハフタルへの批判を重ね、ハフタルを「暴君」と呼び、「彼による殺戮、誘拐、破壊、強制失踪(英語版)」について述べている。かつて尊厳作戦に加わった士官、スポークスパーソンとして、ムハンマド・ヒジャージーは、ハフタルが意図的に戦争を遅延させた、特にベンガジにおいてそうだったことを知っていると主張している。ヒジャージーは、最近のインタビューの最後に、自分の命が危険に晒されているとし、「特に、暴露されれば尊厳作戦やその指揮部に打撃を与える恐れがある公文書を所持しているからだ」と述べた。 2019年4月4日、ハフタルは指揮下の軍勢に、国際社会から承認されているリビア政府が首都を置くトリポリへの進軍を命じた(英語版)。これは国際連合事務総長アントニオ・グテーレスや国際連合安全保障理事会からの非難を呼んだ。4月15日、ハフタルはアメリカ合衆国大統領ドナルド・トランプと電話会談し、「民主的政治体制への移行に向けた共通のビジョンについて」協議したと報じられたが、これは合衆国がハフタルの行動を容認したものと受け止められた。4月18日、国際連合安全保障理事会にイギリスが提出したリビア停戦決議案は、合衆国とロシアの反対で否決された。
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